第2話 掃除と下準備

「さて・・・と」

咥え煙草のまま、小次郎は扉の鍵を開けて駅舎の中へ進む。


自動改札機や券売機を置いていた痕跡もない、昔ながらの駅。


ホームに通じる扉を開けると、入り口を開け放っていた事もあって

駅舎内には新鮮な空気が一気に入り込む。


建物の内部にこもった熱、外気の熱、果たしてどちらが高いんだろう・・・?

そんな事を考えつつ改札脇の詰め所へ荷物を置き、

こちらも同様に窓を開け放って空気を入れ替える。


これは幼少期から、先代である父とともに毎月行ってきた恒例行事。


夏場はソロツーリングがてら来られるので毎週末になるが、

こと寒い時期になるとどうしても頻度が少なくなってしまう。


代替わりした今となっては小次郎が一人でやっているのであるが、

”当主のお役目”と言われてしまうと、仕方ないと割り切るしかないのが現状である。


「・・・まぁ、年に数日のお役目だしなぁ、手を抜く訳にもイカンし。」

業務用扇風機を稼働させながら、ホームの掃き掃除をすべく準備をするのであった。


ひと通りの掃き掃除を終えた後、隣の倉庫から大きな鉄の枠組みを数台運び出す。

それは、田舎の駅前には到底似つかわしくないモノ。

鉄の籠に足が付いている『篝籠かがりかご』であった。

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