第13話

 一心が水野芽衣という、静の言によれば、丸顔でボリューミィな、いかにもお節介母さんといった雰囲気の女性に会って話を訊くと、事件の日、朝10時に水野が約束通りに遊びに大西宅を訪れると、頭部から血を流して倒れている妻を発見し通報した後、騒ぎに気が付いて娘が二階から下りてきて、母親の姿を見て、抱きついて泣き叫んだと言う。

 それで、水野が真帆に「お爺ちゃんとかお婆ちゃんとかいないの」と訊くと「北海道にいる」と答え、「電話は知ってる?」と訊くと頷いたので、掛けさせて、お爺ちゃんが出た後、水野が電話を代わって事情を説明し、「大都城に来るまで自分が預かる」そう言って住所と電話番号を教えたのだそうだ。

そして翌日の午後には、祖父母が揃って真帆を迎えに来たので家に帰した、とのことだった。

 

 警察は強盗殺人事件として捜査を進め、近所の人の証言にあったこの家の周りをうろついていた男の捜索と、被害者の友人で事件の前に大西の家で大喧嘩したという杉本大地と同じく友人の古川律人とが、飲み屋で大西に対する恨み事を言ってたという証言を得て、任意で事情を訊いていた。

 しかし、一心は家の中の足跡の濃さと歩幅の違いがどうしても気になる。また、足跡と妻の倒れていた場所に合理性が無いような気がして、妻をどうやって突き倒したのか疑問だった。初見時と同じく妻の自作自演のような気もした。妻の買い物も気になる、凶器を捨てに行ったのではと思った。それで高野刑事にその旨を話すと、「以前、一心さんに指摘され、この周囲1キロ以内のゴミ箱はすべて洗いましたが出て来ませんでした」と告げられた。

「協力者は?」と訊くと見当がつかないと言われた。

 一心は娘にも会ったが、凄く怯えていてまともな話は出来なかった。学校は休んでいて、祖父母が面倒を見ていた。そして毎日病院へ母親の顔を見に通っていた。祖父母に訊くと真帆は母親を心配して食事もろくに摂れていないと言う。警察によれば、事件の夜はぐっすり寝ていて何も知らないと言って泣いたそうだ。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る