第12話

 紗良が深夜2時過ぎにキッチンに隠した殺害道具を出そうと扉を開けるとそれが無くなっていて、えっと思った時、大西の部屋で物音がしたの。そっとドアを開けると、真帆が血のついた包丁を持って大西の横に立っていたからびっくり。

「真帆っ!何やってんの!」叫んだんです。真帆は「お母さんに人殺しなんてさせられないから私がやった」と言って私に駆け寄りしがみついて泣くのよ。「どうして分かったの?」と訊くと、「お母さんの部屋にお風呂空いたと伝えに入ったら机の上に殺害の計画書が載ってて、写真に撮って部屋で印刷して読んだの」真帆は泣きながらそう言って「だからお母さんの考えた通りの方法でここまでやってきた」と続けたんです。私は慌てました、ごみを捨てる時間は15分程度しかないと考えていたからです。計画より全部30分前倒しになっていました。

 私は急いで真帆を裸にして「お風呂に入って血がついてたら困るからしっかり洗って、上がったら二階へ行ってパジャマに着替えるんだよ」と言って、自分の靴と脱がせた靴を二重に履いて、凶器と変装道具と真帆の着ていた服を全部有料のゴミ袋に押し込んで、急いで玄関を出て、歩道のところで大きい靴を脱いでゴミ袋に入れ車を走らせたんです。

 目的地近くまで走った時、脇道から車が出てきて道を塞いだので止まって不審に思っていると、相手の車から男が出てきて、車の窓ガラスに文字の書かれた紙をピタリと付けたので読むと「ゴミを寄越せ!・・・紗良と真帆は俺が守る。角を曲がったところのコンビニでカップ麺を三つ買って帰れ」と書いてありました。私は涼真だとすぐに気が付いてドアを開けようとすると、低い声で「早く戻れ時間が無い」と言うのです。違えようのない涼真の声でした。それで言う通りにしたんです。帰宅して直ぐ真帆に10時過ぎまで寝ているように言って二階に行かせ、自分は急いで後片付けしてから、テーブルの角に頭を勢いよくぶつけ気を失ったのでした。

 

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