ウチのメンバー達の魔法通信が俄に騒がしくなった。この通信を他に傍受出来る様な存在はいないだろうと予想されてはいるが些か大胆な通信量である。

 もし、魔法通信の技術が一般的であったのなら、こちら側の情報は筒抜けになってしまっていただろう。

 …さて、と言う訳で、作戦は予定通り動き出す事が解ったので、私も動き出す事にしようと思う。

 まずは魔力を練る事を封じる拘束具を引きちぎり、牢屋の鉄格子の内幾本かを切る。上端と下端に近い部分を魔力の刃でサクっと切断し、人一人が通れるだけのスペースを確保して脱出完了。

 後は場所を把握していたフェアドレーツェ殿下の処に向かうだけだ。

 ツカツカと歩いていると、両側の牢屋の中には複数人の悪魔憑きが確保されている様子が見て取れる。

 救助をしてイェーガー・デァ・ドンクレン・ナハトの新たなメンバーに迎え入れたいところであるが、今回はあくまでもフェアドレーツェ殿下とのイベントを愉しむ事にする。


「殿下、今助けます」

「ヘェッツ卿」

 フェアドレーツェ殿下はどこか消沈した雰囲気を醸し出してはいるものの、健康状態は良好の様だ。怪我も特に見当たらず拘束を解けばそのまま逃げる事が出来るだろう。

 私は先程と同様の手順でフェアドレーツェ殿下が居る牢の鉄格子を切断し、魔力封じの拘束具も壊した。

「ずいぶんと簡単に壊すのですね」

「これでも鍛えていますから。しかし、睡眠を誘発させられると何も出来ないですけどね」

 と、皮肉を交えて返答をする。

「私は…情けないものです。拘束されて何も出来ないまま助けを待つ事しかできませんでした」

「どうかなさいましたか?お力を落とされているようですが」

「…いえ、気になさらず。まずはここから脱出する事を第一に考えて行動をしましょう」

「そうですね、まずは自分達の安全を確保しなければ、ですね」

「はい、私達を攫った組織がどの様なものなのかを探りたいところですが、まずは逃げる事を優先とします。私を守りなさいヘェッツ卿」

「御意」

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