ガス灯の揺らめく光に照らされる王都グフォースアーティグシュターツ。

 石炭の香りと蒸気に塗れた薄暗い街。

 この国の王女であるフェアドレーツェ第二王女が誘拐されたというのに、いつも通りの日常を表面上は営んでいる偽りに彩られた都。

 そんな王都の一角に存在するとある商館、ヨドヤ商会の総合商館本館を始め各所に配されたイェーガー・デァ・ドンクレン・ナハトの構成員が、今か今かとその時を待っていた。

 偉大なる主の力をこの世界に知らしめる為の第一歩となるこの作戦が実行されるタイミングを見計らっていた。

 そして、その時は遂に来る。ジーブン・トーンライターの一人、イェーガー・デァ・ドンクレン・ナハトの軍事部門を取り仕切るアーラから命令が下った。

 欺瞞された魔法通信によってイェーガー・デァ・ドンクレン・ナハトの各構成員達に命令が下された。「王都浄化作戦開始」と。

 静かな声音で、しかし意志の強さも籠もった音声が各構成員へと届けられた。

 動き出す。ヘェッツによりその破滅の運命より救い出された様々な人種境遇の女性達が解き放たれた。


 王都は騒然とした、夜の帳が落ちた夜中の時間帯、いきなり鳴り響くは大きな音。その音は建物を切り裂いた音であった。

 轟音を鳴らした本人は自らが引き起こした結果の確認をイェーガー・デァ・ドンクレン・ナハトの他の構成員に任せると、次の目標へと向かって駆けだした。

 王都の人々は突然起ったこの騒動に対応出来ずにオロオロとするばかりであった。それは、この王都を警護する人々も似た様なもので、この急な異変に対応すべく右往左往しながら情報を収集するだけで精一杯と言う有様であった。

 だがそんな事に構わずに事態は進行していく。王都を浄化する暴力は都市内を駆け巡り、その力を見せびらかす様にして破壊活動を行っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る