第3話 エステ

『500円は安すぎない?』

 白雪ちゃんからすぐに返事がきた。

『何かのキャンペーンなの?』

 モニターサイトで応募した、駅前のホテルの中のエステは1万7,8千~で、私なんかがエステを受けるだなんて、モニターでも当たらないと無理無理と思っていたけれど。

 500円なら私もエステ行けるじゃん! と思い気になって返事をした。



『それが私の入っているダンスサークルでちょっとエステが流行りだしてさ。駅前から徒歩5分くらいのビルの1Fにある『ラフィーナボルテ』ってとこ。見た感じきれいそうで。実際に何人かサークルの子でコースの契約をしてるから、大丈夫だとは思うんだけど……ちょっと心配でさ」

『私もバイト先の子に、もう成人式も終わってるし大人の仲間入りみたいなことしてみないって声かけられたことある。実際にバイト先でも誘われて行った子いるよ、本当に500円だったて。同じバイト先の子だから間違いないと思う』

 朋ちゃんはどうやら別ルートで誘われたようだ。

 朋ちゃん、なんていうか女の子とすごく仲良くなるのうまいもんな。



『え~本当に最初の1回500円なんだ。でも勧誘とかされそう(;'∀')』

 白雪ちゃんと私は同意見だ。

 だって、500円だよ500円。そんな美味しい話あるの? ってどうしても思ってしまう。

『わかる、500円だけど。コース入るまでしつこくとか言われると私そういうのきっぱり断るの苦手……』

 500円は魅力的だけれど、安く施術を受けた代わりに契約してってゴリゴリやられると本当に神経がすり減ってしまう。

 やっと厄介な友達と縁が切れたのに、そういう嫌な思いをするくらいなら、500円でもエステをうけたくない。



『私は行った本人じゃないけど。一応説明は規則だからってされたらしいけど、無理強いはないし、奥から怖い人もでてこなくてすんなり帰れたって!』

 朋ちゃんのその一言に麗奈は安堵したようだ。

『サークルの人以外からもそう聞くとちょっと安心かも。紹介してきてくれた子も私とそれなりに繋がりがある子だし、よく考えたらそういう変なのは大学もお互いわかっている同士だから紹介しないよね(;´・ω・)』


『それな』のスタンプが続いた。



『もし行ってみて、勧誘とかもなかったらたった500円だし、皆も紹介するね』

 麗奈がそういって、それに皆も嘘偽りない感想待ってるね! でそこは終わった。




 エステか~。

 そりゃ私も最近綺麗になるようにがんばっているから、興味がないわけじゃない。

 だけど、やっぱりそういうところはお金がかかるイメージがあるし。

 社会人と違って、アルバイトの私じゃ稼ぎはもとないし。

 エステに通い続けられる財力なんかないもん。


 でも契約はその後しなくてよくて、500円で1回受けるだけなら、ちょっと雰囲気も味わえていいカモなんてことを思っていた。

 まぁ、麗奈のレビューは信頼できるし、麗奈がなって言ってくるかによるかな~



 そう思って数日後、連絡がきたのは麗奈ではなくて古屋さんだった。


『当たった!』

 たった一言だけど、それは十分破壊力があった。

『……映画の試写会?』

 映画の試写会だったら、当たった! とだけこずに。〇月〇日〇時から〇〇の試写会当選したけど、予定どう? とくるはずなのだ。



 もしかして、まさか旅行のモニターとか?

 それとも、個人的にすごいのが当選して自慢とかかな。



『駅前のホテルのエステ、友達と一緒に受けるコース!!!』

『嘘!!!! 一人1万7千円の?』

『それ!!』


 思わず二人でスタンプ連打してしまう。

『日付が指定なんだけど。いける?』

『バイト変わってでも予定空けるに決まってるよ! 1万7千円だよ!! 絶対行く!』


 500円のエステどころか、ホテルエステが当たってしまったことで歓喜が止まらなかった。



『お盆を除く平日の日中ってことだから、とりあえず予約とれる日にすぐとっちゃうね。決まったらすぐ連絡するね!』

『待ってる!!!』



 私の頭の中は、タダでちょっといいホテルのエステで一杯になると同時に。

 ホテルのエステって何を着て行けばいいの? っていう贅沢な悩みが出てくる。


 古屋さんからは、2日後、8月4日の10時からになりましたと連絡がきて。私は初めてのエステにどうしよう~って古屋さんととっても盛り上がってしまった。



 それからしばらくして、白雪ちゃんのアパートでいつメンが集まって行われたピザパーティー中に、麗奈から500円のエステがどうだったかの話しが出た。

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