第2話 テストよりも夏休み

 後期試験の時には考えられないほど、私はテスト勉強にちゃんと時間を作ることができていた。

 ごく当たり前であるシフト通りってこともあって、友達とテスト前の勉強もする時間もある程度確保できていたのは、テストへの心の余裕に繋がっていた。



 暗記しないといけないのが多い科目はもう少ししっかりやらないとダメだけれど。

 持ち込み可のテストはもう大丈夫そうってひと段落つくと……

 友達同士でついつい、余裕ができれば話が脱線するのは仕方ないと思う。




 麗奈は夏休みに向けたこのタイミングで、彼氏ができたと報告してきた。

 麗奈といえば、サークルの人とバイトの子の二人に遊ばない? って声を掛けられてそれぞれ遊びに行くという、モテる子だ。

 私はまだ彼氏はいたことはないけれど。

 彼氏がいたほうが夏が楽しくなることはわかる。

 サークルの人かバイトの子とどっちと付き合ったの!? と思ったら、なんとまさかのどっちでもない、別の先輩と付き合うことになったんだから、モテる子の恋愛はちがうわ~としか言えない。



 旅行の手配役白雪ちゃんは、更に夏休みをどうすれば楽しくなるかをまだあきらめてない。

 人数が6人のときは旅行の手配が大変だったらしいけれど。

 4人だと手配が楽だったそうで。

「もし日程と予算が合うなら、近場で1泊の旅行とかさらにどう?」

 とさらに今ならまだ旅行の予定が取れるよと言ってきたのでこれまた、部屋埋まる前のほうがいいよねって旅行の話で脱線したり。



 朋ちゃんはというと、彼氏の大学の友達と一緒にBBQするのがちょっと憂鬱らしい。

 普段はあまり愚痴を言わないのに、流石にアウェイつらいってこぼしていたけど。

 朋ちゃんだったら、嫌だなぁと思いつつもさらっとうまいことこなすんだろうなって私は思った。



 テストが近いというのに、前回とは本当に話す内容も雰囲気も大違いだ。

 前回のテスト期間中、私と希、裕美のブラックバイトで働く3人の顔は本当にヤバかったと思う。

 準備しないとヤバいやばいって常に行ってたし。

 テストが一つ終わるたびに、思ったよりもできなくてヤバいってお互い顔を見合わせてたもん。


 でも、今回は少なくとも私だけではなくて、裕美も大丈夫そう。



 裕美とは今はいつものグループがかわっちゃったけれど。

 裕美も私と同じように、シフトの入れ方がえぐいブラックバイトが辞めれたようで、私のところにわからないところの質問とか、ちょっとした雑談がSNSにきていたから、前回とは違いしっかり準備してテストに挑めたんだと思う。



 とにもかくにも今回のテスト期間中は、前のような死んだ魚の目ではなく。

 かなり余裕がある状態でいることにホッとする。

 もうあんなテストまえは本当にこりごりだ。



 ただ、裕美とは違い希は未だにバイトはやめてないんだと思う。

 前回同様、テストの日が近づくにつれてかなりピリついている空気を纏った希を大学内で見たからだ。

 前回の私がそうだったからよくわかる、準備をろくにする時間がおそらく取れないあせりといら立ちだろうなぁ。



 そんなになるくらいなら、希も辞めたほうが楽になるのにと思いつつも。

 もう余計なことを人にいうのはやめようってピリピリしている希に話しかけることなく、私は遠目で見つめるだけにとどめた。



 後は、毎回毎回テストが近づいてこっちも忙しいのに、黒板の写真や授業のノートのコピー取らせてっていってた伊藤優菜をブロックして、悪縁を断ち切ったことも大きい。

 ブロックを解く理由は何もないし、おかげでテスト前に仲良くない相手からコピーさせてと連絡がこういう時に来ないのって素晴らしいって思った。


 伊藤優菜はというと悪口を仲間内で言っていたけれど、私がスルーしていると。

 流石に私の悪口を、私と接点がない仲間内で毎回毎回言うわけにもいかなかったのか、私から歩み寄る気が一切ないことがわかったのか、新しいカモを探すのに忙しいようっだ。



 でもそれは難航しているようだ。

 相手がどんな人かよくわかっていない1年の時とは違い。

 必須の授業なんかは、顔を合わせる子が決まっているので、出席をある程度していれば顔がわかるし。


 2年の今更気が合ったわけでもない子とこのタイミングで、あえて連絡先を交換する理由もなく難航していたようだけれど、そういうターゲットを見つけるのはうまいみたいで、次の餌食になった子が以前の私のようにやんわりと断るのを目撃した。

 誰もかれもがめんどうごとにかかわるのが嫌で見てみないふりをしていることも知っているし。



 私も自分で相手に立ち向かって、言い返すのはすごく勇気がいった。

 気にしないようにはしたけれど、教室でしばらくの間悪口をあえて聞こえるように言われるのもすごく嫌でしんどかった。

 自分自身のことだから、頑張れたのであって。

 誰かに助けてもらい待ちの子の面倒まで背負えるキャパがない私は、二人の横をごめんと思いつつほかの子と同じようにすり抜けた。



 運よく助けてくれる人が私の時と違って現れるといいね。

 ただ結局自分が変わって嫌な思いも経験しないと、今は回避できても結局また別の都合よく利用したい子に狙われるだけって心の中でつぶやいた。



 そして、後ろめたい気持ちがある自分にこう言い聞かせる。

 助けたときに、私だったら同じ子が次も助けてくれることを絶対期待する。

 前は助けてくれたのに、次助けなかったら自分が何もしないことを棚に上げて助けてくれなかった子を恨むと思うし、ちょっとモヤモヤするかもしれないけれど……

 私はそういうことが器用にできるタイプじゃないから、人のことまで背負えない、これでいいの。




 そんなこんなで、テストは実にあっさりと終わった。

 テスト明け軽くお疲れ様会はテストが終わって一週間後に行った。

 テスト期間の間バイトをガッツリ休んだので、バイトのシフトが皆ガッツリはいっていたからだ。

 私たちの学校はテスト終わったけれど、別の大学や専門学校、短大などこれからテストが始まる子のフォローに入らないといけないからだ。

 だから、本当はテストが終わってからすぐにでもお疲れ~とやりたかったところが間が空いてしまった。


 まぁ、他の子は彼氏がいるから。彼氏さんにも会わないとってのもあったんだろうけど。

 麗奈と私はすでに20歳でお酒は飲めるんだけど、白雪ちゃんは7月20日、朋ちゃんは8月4日で20歳になるから、今日はソフトドリンクで、次は誕生日過ぎてから一度皆でお酒を飲もうって次の飲み会の日程をなんとなく決めてテストのお疲れ様会は終わった。



 テストさえ終わってしまえば、大学生活はつかの間の休息にはいり、長い長い夏休みの始まりに私は心躍らせた。

 そんなとき、いつものメンバーのSNSに麗奈から連絡が入った。

『サークルの友達からエステに誘われたんだけど。500円って本当かな?』って……



 麗奈という私の気心の知れた相手からきた連絡が事件の始まりだ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る