アニメ同好会の♡イケナイ♡課外活動へようこそ!! そのさん【俺のアレ】プラスシチュエーション。

 ……どれくらい俺は意識を失っていたんだろう!?


 目を覚ますと身体に柔らかな感触を感じていた。


 辺りを見回すと妹の未祐の部屋だった、どうやら俺はベッドに寝かされているようだ。

 身体には薄い肌掛けの布団が掛けられていた。

 未祐が普段愛用しているボディミストの香りが不意に俺の鼻腔びくうをくすぐった。

 

 これは確かフィアンセという銘柄だったな、未祐の通う君更津南女子校きみさらずみなみじょしこうの女の子の間で人気だと嬉しそうに話してくれたことを思い出した。


「んっ……!?」


 妙な違和感を感じてベッドから飛び起きた。


「この香りは!!」


 慌てて自分の腕の香りを嗅いだ。


 違う!? 香りがしているのはこの布団からじゃない……!!


 自分の身体から女子高生の女の子のような香りがしているだと!?

 俺は気絶したショックで頭が変になったんだろうか……。

 

「……どうかしているのか、俺の頭は!?」


 続いて首回りに違和感を覚えた。

 おそるおそる首に手をやるとサラサラな髪の毛の先に指先が触れる。

 この首回りに感じる違和感の正体は、俺の髪の毛がいきなり伸びていたんだ!!


「なんじゃ、こりゃ!?」


 長髪になった頭を抱えながら、思わず驚きで声が出てしまう……。

 慌ててベッドの脇に置いてある未祐がお気に入りのドレッサーを覗き込んだ。


「うおっ……!?」


 ……俺は自分の目を疑った。


 そこには見知らぬ女の子が鏡に写っていた……。


 肩まで伸びたミディアムヘヤ、そして両サイドを後ろでまとめたハーフアップにしてある髪型。抜けるような透明感のある白い肌、清楚系のメイクがとてもキュートだ、うれいをたたえた蒼く美しい瞳 綺麗にカールした長い睫が印象的な女の子が鏡の中に佇んでいた。


「か、可愛い……!!」


 驚くことに鏡の中で頬のチークと同系色のリップが塗られたキュートな唇が、

 俺のしゃべった言葉と完全にシンクロしたんだ。


「えっ!! えええっ!?」


 あんぐりと口を開けてもその佇まいは可愛い女の子のままだ。


 信じられないが鏡の中の女の子は俺自身なんだ……。

 しばらく身動きが出来なかった、俺の身に何が起こってしまったんだ、


 ある朝、目が覚めると陰キャな俺がS級美少女に異世界転生したとか!?


 良くありがちなラノベのタイトルかよ……!!


「お、俺の身体はいったいどうしちまったんだぁ!?」


 ガチャリ!!


「拓也お兄ちゃん、目が覚めた?」


 突然ドアが開き、未祐が部屋に入ってきた。


「あっ、未祐、 お前っ! 一体俺に何をしたんだ」


 可憐な美少女のまま、未祐に詰め寄った。


「完璧!! 想像以上の仕上がりだな……。兄上殿、あまり動かさずに私に顔を良く見せてくれないか」


 いつの間にか部屋に入ってきたアニメ同好会の広瀬部長が、俺のあごを軽く押さえながら整った顔を急接近させてきた……。


「んっ……!?」


 君更津南女子校の美少女四天王と名高い広瀬沙織さんに、あごクイをされる美少女な俺。


 何だ、この変な構図は……!? 頭がクラクラする。


「千穂ちゃんも部屋に入ってきて!!」


 未祐が声を掛けると、おずおずと制服の女の子が部屋に入ってきた。


「……お、お邪魔します」


 森田千穂ちゃんだ!!

 俺の顔を見るなりとても驚いた表情を浮かべ、もともと大きな目をさらに丸くした。


「本当に未祐ちゃんのお兄ちゃんなんですか!? 嘘、可愛すぎるぅ……!!」


「広瀬部長がメイクを施していたときは、まだ意識を失っていたから分からなかったけど、目を開けると本当に女の子みたいですぅ!!」


「広瀬部長!! 千穂ちゃん!! 三人でメイクの練習したかいがあったね。こんなに可愛い男のが完璧に仕上がるんだから!!」


「うむ、何ごとも日々の鍛錬が大事だ、基本さえ守れば武道もメイクも難しいことなぞ何もないからな、練習が明日の理想の自分を作る。これはテストに出るぞ!!」


 女の子たちの言葉を聞いて俺は理解した。これが男の娘になれっていう指令の一環なんだ。


「おい!! 未祐、それにしても荒っぽ過ぎないか!? いきなり気絶させて俺を拉致らちるなんて」


「本当にゴメンね、でもこれくらいしないとお兄ちゃんは照れて男の娘のメイクを断固拒否するでしょ……」


「私からも心よりお詫びする、兄上殿に嗅がせた薬は本来護身用で、普段はに携帯させている物だ。今回は有事とはいえ、手荒な真似をして返す返す無礼なことをした我々を許して欲しい……」

 

 とても申し訳なさそうに謝る沙織さんに俺は驚いた。何か深い理由でもあるのだろうか、わんこの着ぐるみ事件といい、いつもアニメ同好会の面々には驚かされるが、

 沙織さんを始めとして、千穂ちゃんも悪い人ではないのは未祐を見てもよく分かっているつもりだ。アニメ同好会に入部してからの未祐は本当に明るくなったんだ。

 俺の大事な未祐の嬉しそうな笑顔は何にも替えがたい、だから今回も怒りの感情は湧いてこなかった。まあ、いいや、毒を喰らわば皿までというじゃないか。

 今回もとことんまで巻き込まれてやるか!! 巻き込まれ型の主人公は嫌いじゃない……。


 それにしてもあの薬は妹さんが護身用に携帯している物なのか!? 

 でも武道に精通した彼女なら必要ないんじゃないのか、とかの突っ込みはやめておこう

 


「でも、拓也お兄ちゃん、かなり嫉妬しちゃうな……。私よりカワイイかも……」


 複雑な表情をみせる妹の未祐。


「そんなことないよ、未祐のほうが絶対にかわいいから!!」


 すかさず未祐の手を握り力説する俺、あ、気が動転してつい心の声が漏れてしまった!?



「えっ、本当に!? かわいいなんて照れちゃうよ……」


「こらこら、女装のままで二人の世界に入らないでくれます」


 手を取り合って見つめ合う俺たち兄妹に千穂ちゃんの的確な突っ込みが入った。


「でも未祐、この女装はいったい何のためなんだ!?」


 我に返って未祐に問いかける。


「こんな強行手段を取るにはそれなりの理由わけがあるんだろ……」


 そうだ!! 俺を男の娘に仕立てるには何か特別な意味があるはずだ。

 未祐が急に真剣な表情を浮かべた、そして傍らの女の子二人に目配せし始めたのを俺は見落とさなかった。


「拓也お兄ちゃん、その理由は……」


 次回に続く!!

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