第57話 倍返しは、覚悟しろ!
海斗は、静岡に着くと河負の周辺を探り始めた。魂界が動いて解放した者がどうなっているか確かめたかった。実際に見て海斗はがっかりしていた。日々、笑顔で過ごす河負を目の当たりにし、長年に渡り国益とその事業に関わる多くの人の夢を削いだにしては余りにも緩い仕打ちだった。辞任という形で失職しても生活に何ら変わっていない。寧ろせいせいした表情が海斗には許せなかった。
ゲル「海斗、感情で動くのか、良くないなぁ」
海斗「感情か、懐かしい響きだな」
ゲル「じゃ、どうするんだ」
海斗「奴らが安心できる根源を脅かす。苦しみを与えた者には苦しみを」
ゲル「目には目を歯には歯、をだろ」
海斗「ふん」
ゲル「で、どうする」
海斗「奴らの動きは分からない。大人しくしているのか否か」
海斗は死神手帳に触れながら魂界の者との交信を行った。ズイキ工業は自動車部の新たな分野としてEV車に取り組み事業化していたが他社との差別化が出来ず鳴かず飛ばずの窮地に陥っていた。ズイキ工業の会長は含み負債の積み重ねに焦りを隠せないでいた。会長は社内の反対を押し切り、リニア事業を妨害したことで繋がりを得た中酷強酸党を通じ中酷生産のバッテリーを格安で手に入れられた。その関係で販売価格を20%以上抑えられた。その甲斐もあってか売り上げは上向きを標した。世間に認知され始めた頃、事故が起きた。充電中の車から発火し全焼した。怪我人はいなかったが家屋に燃え移る危険性があり、マスコミは地雷原を買っているようなものだとズイキ工業への批判が相次いでいた。その報道を受け、予約は全部キャンセルされ、リコール騒ぎの対応にズイキ工業は揺れに揺れ動いた。その頃、国会ではセキュリティクリアランスの成立を受け、さらには米国からの要請に応えるように補助金を受けた中酷産製品の規制が厳格化していた。
ズイキ工業は大損害を受け、倒産の危機に瀕していた。その責任を取るように会長は辞任し、援助に入った銀行の指示により、信頼を取り戻すために会長一派は弊職に追いやられた。これによって河負への支援金と組織票は断ち切られた。河負が拘束島から解放されて三年が経っていた。
ゲル「海斗の仕業だな」
海斗「河負を支援し動かしていたのを真似ただけだ」
ゲル「あの一件でズイキ工業は火の車だ。従業員も多く解雇された。関係ないのにな
ぁ、可哀そうに」
海斗「私はそうは思わない。彼らには選択の余地があった。それでもズイキ工業にし
がみ付いた。連帯責任を取るべき対象だ」
ゲル「知っていてもどうすることもできないだろ。末端の従業員には」
海斗「露西亜が戦えているのもその末端がいるからだ。一般人とは聞こえが悪くない
が無関心は罪だ。自分に関係ないと見て見ぬ振りをするのもな。隙を与えて活
動家が動けるのは自覚のない者の罪だ」
ゲル「確かに」
ズイキ工業が低迷し、ズイキ工業に頼っていた街もシャッター商店街が増加し、転居者も後を絶たず瀕死の状態に陥っていた。会長一派の一部はその怒りや恨みを河負に向ける者もいた。自宅への落書き、抗議電話が鳴りやまない日々が悪夢のように繰り返されていた。マスコミは恨みの矛先が自分たちに向くのを恐れ、一切報道しなかった。悪いことをしている者は、どう悪夢が続くかを容易に想像できたからだ。
海斗が死神手帳を使い魂界の者に委ねたのはズイキ工業の会長による強権発動で誤った決断を導き、国益を阻害し協力した者を天国から地獄に落とすことだった。今回の結果は、海斗たちが動きだした未来の話だ。死神手帳は、未来の時間も操ることが可能だと証明された。今回は、邪魔者はいなかったがもし未来に影響を与える者が現れたら、予定された未来路そのものが脱線し消滅するかもしれない。それだけに未来に通じる時間は確かで短いことに越したことがないと海斗の脳裏に打診されていた。
厄病神のフキ
貧乏神のビンドゥ
死神のメフィ
龍晟と龍櫂
田別細道と細野不四夫
善田海斗
式神を使うには死者の精神が冥界(ドゥアト)へ入るための呪文「エロエムエッサイム」と執事の判断で式神を選び、動かすものだった。
「荒ぶる神」や「妖怪変化」類の荒御魂・ゲル
人の善悪を監視する和御魂・ギル
藤原文代の愛人、渥美猛
藤原文代の夫、安田忠雄その父・正雄
藤原文代の息子・圭祐・雄太
政治家・森原清二
坂東祐司警部補
週刊潮旬
霜本警視庁長官
山元与多郎
大池百合子
警死庁死霊課粛清係(死神手帳) 龍玄 @amuro117ryugen
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