敵が攻めてきたぞぉ(´;ω;`)ウッ…
「はぁ……ひぃ……ふぅ……へぇ……」
王様はふたたび長いため息を洩らすようになりました。
多年の放浪と力仕事のため、ぽっこりと
当初は白髪混じりだった髭は、日焼けのためか焦茶色に染まり、いや、見ようによっては赤くもあり黄色くもあり……いつしか人々は、虹のような髭……
それが話が終わる合図でもあり、御礼の
人々はこの「虹髭の
「お……う……さま」
人が居なくなると、少女は貢物からその夜に食べるものを区分けし、簡単に調理して皿に盛って汁物と一緒に差し出すのでした。
なにも少女は「王様」と言ったのではないようです。こちらの国のことばをおぼえた少女は、おそらく、
「おとうさま」
と、呼んだにちがいありません。
そのことにあえて気づかないふりをこれまで王様がしてきたのは、いとおしくなるほど別れがつらくなることを恐れていたからでしょう。このとき王様はすでに岩族のもとへ少女を連れていく決心をしていたのです。
それには理由がありました。
……ついに、
王様がそのことを察知したのは、相談に来る人々の悩み事の
「よしっ」
王様は少女を連れて
小高い丘の上には、形だけの木柵がありました。王国の
「どこへ行く? よせ、矢で射抜かれるぞ」
振り向くと、懐かしい顔がありました。
あの
「ま、まさか……」
王様の精悍な顔付きと肢体に、
「おお、おまえ様は……あのときの……」
王様は言いました。すると、
「やあ、見違えました……」
と、陵戸長は頬をほころばせました。国境警備の志願兵の隊長として王都から着任したことを告げたあとで、
「王よ……」
と、隊長は片膝をつきました。
どうやら、あの初対面のときから王様の正体を見抜いていたようでした。
「いや、そのような
王様は高らかに笑いました。
「幾分、予定より遅くはなったが、これから、この少女を連れて、岩族の王とやらに会ってくる。いや、わかっておるぞ、ただ相手の悩みごとをうんうんふんふんと聴いてやるだけだ。かつて、おまえ様に教わったとおり、聴いた上で、お気の毒です、無念でございます……と何度も申してやるわい」
王様の決断に、隊長はますます
「……こうして、最後に、おまえ様に再会できるとは、まさに
珍しく
「お……う……さま……おとうさま」
少女の声に、王様は
「わが娘よ……
ふたりのやりとりが風にのって隊長の耳に届きました。兵たちは隊長に
○
21世紀になって……ある小さな古代墓が発掘されました。
王の名は
ただ、石棺には、大人の男性とやや背丈の低い女らしき
残念無念なる思いを知り得たる者こそ、
おめでとうの真意に到達せる者なり……
( 了 )
「おめでとう」禁言令 嵯峨嶋 掌 @yume2aliens
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