第19話【本編】目撃者は語る!

「・・・・・・その声はカナタなのか?」


 背後から聞こえてきたその声にすぐにビビが反応した。


「カルーバ! 連れていかれたんじゃなかったのか? ダタンは? ダタンはどうした?」


 ビビのその問いに、カルーバという名前のビビよりかなり年長に見える筋肉質の少年はこう言った。


「その名前はもう口にするな! ビビ、あいつはあの魔王と通じていたんだよ! あいつのせいで村の人たちはみんなあの魔王の部下に連れていかれてしまったんだ。あいつは、自分のおかげでみんな死なずに済んだんだって言っていたけど、この村に伝わる魔除まよけの宝玉ほうぎょくをあいつが持ち出したからあの魔王の部下はこの村に易々やすやすと入ることができたんだ! あいつはこの村の人たち全員を裏切ったんだよ! 俺のことも! お前のことも!」


 そのカルーバという名前の少年の言うことが本当ならかなりひどい話だ。

 でも、彼の話には納得できない点がいくつかあった。

 第一に、このカルーバという名前の少年はなぜ一人だけ連れ去られなかったんだろう。


 俺がそんなことを思っていると、ビビが俺の代わりにこう質問してくれた。


「カルーバ! あんたは、村のみんなが連れ去られた時、一体何をしてたんだ?」


 すると、カルーバという名前の少年はわるびれもせずにあっさりとこう答えた。


「ずっと隠れていたよ」


 ビビは当然抗議の意味を込めて大きな声を出した。


「なんだってっ?」


 だが、カルーバという少年はなお平然とした様子でこう続けた。


「ダタンの裏切りに気づいていたのは俺だけだからな。全員連れ去られちまったらどうしようもないだろう? もし俺まで連れ去られてたらダタンの裏切りをこうやってお前に知らせることもできなかったんだぜ! ・・・・・・なあ、それよりなんでそのドラゴンはカナタとそっくりの声をしてるんだ? ・・・・・・てか、ドラゴンって喋るんだっけ?」


「このドラゴンはカナタだよ! ここにいる大勇者様が転生させてくださったんだ!」


 ビビが苛立いらだちを少しも隠さずにそう答えると、すぐに女子達が驚きの声を上げた。


 それで俺はうっかりしてビビにそのことを口止めするのを忘れていたのことにやっと気づいたのだが、もう事態はそれどころではなかった。


 俺はこのタイミングで、もちろん話をらすという目的も込みで、そのカルーバという少年にこう話し掛けたのだった。


「全部聞いていたけど、君の話はいまいち納得できないな。・・・・・・本当にダタン君は裏切り者だったのかな? もし本当にそうなら、なぜダタン君はこの村の人達を裏切ったんだろうね? ・・・・・・君はどう思う?」



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