第16話 一方その頃[Side 安斎遼也①]

 自分で言うのもなんだがオレはクラスの王様だった。


 それがなんたるざまだ。


 クラスのましな女どもは、あのぼっち野郎に成り下がった尚春なおはるに全員取られちまうし、4人までって話だったのに結局3人だけのパーティーになっちまうし。

 あの時、こいつらが女子を入れたいってもっと強く言ってくれたら、オレも渋々の演技かましてOKしてたかもしれないのに。


「りょーやん! りょーやん!」


 オレのパーティーメンバーのひとりで陸上部の長距離のエースの田川たがわ 篤史あつしが大声でオレを呼んでいる。

 こいつは運動神経はいいし、体力もあるし、キャンパーだから野宿の時とか頼りになるはずなんだけど、なんとなく間か抜けている。


「なんだよ! うるせえなあ! そんなでっかい声出さなくても聞こえるよ! オレはじじいじゃねーんだぞ!」


「わかってるよ、りょーやんがじじいじゃないことくらい、おれだって! ・・・・・・でもさぁ」


「でも、なんだよ?」


 オレはちょっとだけ優しい声を作って言った。


「りょーやん、さっきからおれずっと呼んでるのに返事してくれなかったからさぁ。考え事でもしてるんじゃないかって思ってさ」


 ああ、オレはまた考え事をしてしまっていたのか!

 なんかここに来てからそんなことが増えてる気がする。

 気を付けないとな。


「・・・・・・考え事なんて別にしてねぇよ! ・・・・・・それで、なんだよ?」


「ああ・・・・・・あそこ! あそこ見てよ、りょーやん! あそこに猫みたいな大きな耳が頭に付いてるんだよ! ・・・・・・あれ、やっぱり? りょーやん、お腹痛のお薬持ってる?」


 間が抜けてるって言ったけど、やっぱりこいつは癒し系だな。なんかちょっとだけ悔しいけど癒されちまった。


 そんなことを思いながら、篤史が指差す方を見てみると、本当に猫耳が頭に付いた女が腹を押さえてうずくまっていた。

 

 顔は下を向いていたから見えなかったが、なんとなく美人っぽい。

 歳もオレたちとちょうど同じくらいかもしれない。


「りょーやん、このパーティーは男しか駄目なんだもんね。おれはあの子をパーティーに入れるのもいいかなぁって思ってるんだけど、やっぱり駄目だよね。・・・・・・じゃあ、声掛けない方がいいよね」


 ああ! そんなこと言われたらこのパーティーに今後も女を入れずらくなるだろ!


 オレがそう考えてどう答えようか悩んでいると、


「遼也! それはクラスメイト限定の話だよな! この世界で出会った女子は別だよな? そうだろ?」

 

 と、野球部4番でバリバリの体育会系の宮瀬みやせ 義和よしかずが口を挟んできた。


 ナイス!


 こいつはバリバリの体育会系だが、空気はかなり読める方で時々こういうナイスな発言をしてくれたりする。

 逆に言えばちょっと油断ならない奴なのだ。


 オレは即座にこう答えた。


「そうだな! この世界で出会った女はまた別だ! いっちょ、オレが声を掛けてくるかな!」


オレは仲間達にそう言って、その女の方に近づいていった。

 そして、こう声を掛けたのだ。


「・・・・・・何か困ってるのか?」


 我ながらベストな声掛けだったと思う。

 第一に全然イヤらしくない。

 第二になんかイケてる大人っぽい。

 第三に簡潔だ。


 それなのにその女はオレの方に驚くほど美しい顔を向けるとこう言ったのだ。


「かかったな! エロガキが! 貴様はもうこれで終わりだ!」


 最初、オレは自分が何を言われたのか理解できなかった。

 しかし、しばらくしてようやくその言葉がオレの脳内で処理されたのだった。


 かかった?


 エロガキ?


 終わり? 


 まさかハニートラップだったのか?


 それからのオレ達の悲惨でみじめな旅を今すぐに語るのはいくらなんでもオレのプライドか許さねえ!


 特ににだけは絶対知られたくない!


 だが、いつかは話さなければならない時が来るだろう。


 オレ達の旅をめちゃくちゃにしてくれたこの最低最悪のオレ達の師匠ハートン・テウについて!



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第16話も最後までお読みくださりありがとうございます!


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