第13話【本編】ややこしい愛情表現!?

「・・・・・・このまどいの紫の草原では運命の相手にしか会えないんだよ! だからそいつらはオイラの運命の相手じゃなかったってだけだ! この惑いの草原にいるかぎり何人なんびとも運命からのがれることはできないんだよ! たとえ大勇者様であったとしても!」


 この紫の草原にそんな設定あったっけ(そもそも『サーザントビアス』にはエルフ族は登場しないし、俺がこの紫の草原について知っている情報はということだけだった)と俺が密かに疑問に思っていると、なんとそのビビ・ケナーという名前の少女(?)は肩車されたまま俺の頭に抱きついてきた。


 すると、なぜか秋野あきの 阿香里あかりが真っ先にこう大声を上げた。


「何してんのーっ! ガキのくせに色仕掛いろじかけでトッキーのこと誘惑する気ー?」


「そんなこと大勇者様にするわけないだろ! おばさん! ・・・・・・これは単なるオイラの愛情表現だ!」


「だからっ! おばさんって言うなっ! ちーび!」


「ちびって言うなっ! おばさんっ!」


 そんなやり取りの間もビビがずっと頭にしがみついていたので、さすがに俺も大きな声でこう言ったのだった。


「いい加減抱きつくのはやめてくれるかな? 前が見えないし、苦しいよ」


 すると、ビビはすぐに俺の頭から体を離してこう言ったのだ。


「ごめんなさいっ! 大勇者様! 大勇者様に肩車してもらってうれしくってつい! ごめんなさい! もうしないからビビのこと嫌わないでくださいっ!」


「・・・・・・嫌わないよ」


 俺がそう言うと、ビビは、


「ありがとうございます! ありがとうございます! 大勇者様っ!」


 と言って、またしても俺の頭に抱きついてきた。


「だから、前が見えないって!」


「ごめんなさいっ!」


 そう言ってまたすぐに体を離したビビに俺はさらにこう言った。


「・・・・・・それから俺は大勇者様なんかじゃないから、その呼び方もやめてくれるかな?」


 しかし、それに対するビビの答えは俺には少し意外なものだった。


「・・・・・・いやです。大勇者様は大勇者様ですから。どんなに否定されようとあなた様はどう見ても大勇者様ですよ」


 そう言われると、俺も困ってしまう。

 それで何も言い返せないでいると、乗崎じょうさき 麗夏れいかが、どうやらそのことをずっと考えていたらしく、今までの流れを完全に無視してビビにこんな質問をした。


「・・・・・・ねぇ、あなたはこの草原の抜け方を教えるって言ってたけど、そんなにこの草原を抜けるのは難しいことなの?」


「当たり前だろ? の紫の草原だぜ! オイラが案内がなければ何日も抜け出ることはできないだろうね!」


 すると、古堂こどう 美冬みふゆがこう口を挟んできた。


「大袈裟に言ってんじゃね?」


「大袈裟なもんか! ・・・・・・かわいそうだけどオイラに出会えなかったそのあんたらの知り合いはみんなこの惑いの紫の草原から何日も出られずにさまようことになるだろうな。・・・・・でも、オイラが案内すれば1時間と掛からずに出られますからね、大勇者様!」


 そんなことを話していると、辺りが暗くなり始め、紫の草原の背丈がだんだんと伸びていっているようなそんな気がしてきたので、俺はビビにこう尋ねてみた。


「・・・・・・もしかしてこの草原自体が魔物か何かなの?」



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