第6話【本編】古堂 美冬①

 俺はなんだか感動していた。

 何で? ってそれはもちろん乗崎じょうさき 麗夏れいか秋野あきの 阿香里あかりよりもこの俺を選んでくれたからだ。


 そして、秋野 阿香里の方はもちろんそれが不満だったようで・・・・・・というか、どうも彼女は乗崎 麗夏にとてつもなく執着しゅうちゃくしているみたいで(その訳はこの時の俺には全く想像もつかなかった)、こんなことを言い出したのである。


「ちょ、ちょっと待ってーっ! 別にそのぼっち君のことが嫌いとか気に入らないとかそういうことじゃなくてー、なんで乗崎さんがそんなに気に入ってるのかよくわかんないっていうだけで・・・・・・わかったよー! 入る! 入るー! パーティー入らせてくださーい! 阿香里も乗崎さんがそこまで言うならそのぼっち君にけてみるからー、そのかわり乗崎さんのこと・・・・・・麗夏ちゃんって呼んでもいいかなー?」


 それで、俺も他の連中も乗崎 麗夏がどんなふうに答えるのか注目していると、彼女はこう言ったのだ。


「もちろんいいわよ、好きに呼んでくれて。とにかく私達のことを受け入れてくれてうれしいわ。・・・・・・それで秋野さんに相談なんだけど、あと一人のメンバーは誰がいいかしら?」


  秋野 阿香里がめちゃくちゃ喜んだのは言うまでもない。


「えっ? えーっ! 麗夏ちゃんっ! 阿香里の意見聞いてくれるのー? うれしーっ! ええっと、ねー、ええっと、ねー、阿香里はーやっぱり女の子がいいと思うんだよねー。それもービジュが相当イケてる感じの・・・・・・・」


 秋野 阿香里が喜びを爆発させてそこまで言ったところで俺の耳にこんな声が聞こえてきたのである。


「・・・・・・じゃあ、それってでいいんじゃね?」


 その独特の一人称でその場にいる誰もがその声の主が誰なのか気づいたはずだ。


 そして俺はその声を聞いた瞬間、正直胸のドキドキが止まらなくなっていたのだった。


 乗崎 麗夏と秋野 阿香里とその声の主。

 それにこの俺? 

 最高じゃないか! 

 まさかクラスの(というか我が高校の)3大超絶ハイスペック美少女を俺が独り占めできる日がやってくるなんて! 

 信じられない!


 俺だけじゃなく乗崎 麗夏もこの展開には少々驚いたようで、でも相変わらずの冷静な声でこう言ったのだった。


古堂こどう美冬みふゆさん。あなたが入ってくれるなんてさすがに予想してなかったわ」


 乗崎 麗夏がそういうのも当然で、古堂 美冬は高校入学当初から誰とも徒党ととうを組もうとしない孤高のクールギャル、氷の女王として有名だったのだ。有名なギャル雑誌に高一の頃から出ていて(ギャルっぽいメークを少ししていて髪はパールベージュのワンレンストレート、顔はかわいいというよりは超キレイ系、八頭身で制服のスカートは超ミニでめちゃくちゃ長い生足を冬も惜しげもなく見せている、胸はそこそこある!)、今では単独で表紙に登場するほどの全国区の正真正銘の有名人! テレビ出演もすでに経験していて、ファンには「みふみふ」とか「コドーちゃん」とか呼ばれているのだが、俺たちの高校ではそんなふうに呼ぶ者は一人もいない。簡単に言ってしまえば有名人すぎてめちゃくちゃ学校で浮いている存在なのだ。もちろん嫌われているというわけではなくてみんなできることなら仲良くなりたいのだが、みんなビビって喋りかけられないまま今日の日を迎えてしまっていたのだった。


「だって、あんたらのパーティーめちゃ良さげじゃね?」


 だからテレビ以外でもこういう喋り方をするんだってことも、もちろん誰も知らなかったのであった。



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