第4話【本編】秋野 阿香里①

 乗崎じょうさき麗夏れいかにそこまで言われて、先に口を開いたのは安斎あんざい 遼也りょうやではなく野球部4番の宮瀬みやせ義和よしかずだった。


「遼也! もうこんなクソ生意気な女は無視して、早くあと一人のメンバーを決めようや! やっぱりメジャー運動部のバリバリレギュラーのやつかいいと思うんだよな!」


 そしてそれにいち早く反応したのはまたしても遼也ではなく、陸上部の長距離エースの田川たがわ篤史あつしだった。


「何言ってんだよ、よしちゃん! りょーやんも俺たち3人ですでに最強だって言ってたでしょ? だったら最後の一人はかわいい女子に決まってんでしょうよ! 乗崎の次にかわいいのはやっぱり、秋野あきの阿香里あかりでしょ? おれは絶対、秋野 阿香里がいいと思うんだけど! どう? りょーやん? よしちゃん?」


 俺はその発言を聞いて、ついに本音をぶちまけやがったなと思っていた。こんな男子なら誰もがワクワクするような異世界に召喚されて

いくら身の安全のためとはいえ男だけで旅するなんて味気なさすぎる。俺なんて計10年以上もぼっちでこの世界を救い続けてきたのだ。その時にかわいい女子が近くにいればなあと何度思ったことか!


 しかし、このおよんでまだ安斎あんざい遼也りょうやは素直になれないみたいだった。もしかしたら共々めちゃくちゃプライドの高いやつだから乗崎じょうさき麗夏れいかに断られたから他の女子を代わりにメンバーに入れるということに屈辱感を感じているのかもしれない。なぜそんなことを言うかといえば、実は俺とこの安斎遼也は家が近所の幼なじみなのだ。それが今では一方はクラスの1軍のリーダーで、もう一方は3軍にも入れない陰キャのぼっちモブ男子。今では俺自身も本当にこいつと昔仲良く遊んでいたのかと疑ってしまうくらいの格差ができているのだった。

 

 だが、その圧倒的な格差も今ではどうでもいいことのように思えてくる。なぜならあの乗崎麗夏は遼也ではなくこの俺を選んだのだから。そしてその事に遼也は大きなショックを受けているのだから。

 

 その証拠に遼也はチラチラと俺のことをさっきから盗み見ている。それは幼い頃の遼也の癖だった。


 幼い頃は遼也はとても怖がりで決断に迷っている時はいつも俺の顔をこうやってチラチラと見てきていたのだ。


 それでも遼也はフーッと息を吐いてから最後は自分自身で決断を下したらしく、やっとこう口を開いた。


「・・・・・・最初に言っただろ? 強くなればこの世界の女にすぐにモテモテになるって! そうなった時、女子なんかいたら邪魔だろ? ・・・・・・だから4人目は男だ! これは決定事項だ! わかったか? 敦?」


 そう言い終わった遼也にはもう幼い時の面影おもかげは全くなくなっていた。


 そしてその直後、どこからともなく秋野 阿香里が姿を現し、いきなりこう言ったのである。


「なによーっ! せっかくお姫様待遇でパーティーには入れると思ってたのにーっ! 期待だけさせて、ほんと最低ーっ! ねぇー! 男子たちーっ! 今なら、阿香里ー、最初に手ぇ挙げてくれたパーティーにーすぐ入っちゃうよー! はーい、じゃあ、阿香里のことほしい人手ぇ挙げてみてー!」




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