第1話【本編】ぼっち男子(時岡 尚春)の正体!

 俺、時岡ときおか 尚春なおはるは完全体のぼっち男子(さらに陰キャで重度のコミュ障!)である。

 とある理由で何度も学校を休んでいた俺の不在に気づいた2年G組のクラスメイトは一人もいなかったんだから、完全体を名乗っても何ら問題はないだろう。


 

 そして、あれは俺が再び高校に通うようになってから8日目の世界史の授業中、ギリシャかローマかその辺りの話を社会科教師がしていた時だった。


 その50代前半くらいの白髪しらが じりの男性教諭が板書ばんしょするために黒板の方を向いた瞬間、教室の四つの壁がまるで昔見たコントのセットみたいにバタンと外側に倒れて(それと同時にその男性教諭はどこかへ消えてしまった!)、突然広大な紫色の草原が四方に現れたのである。


 そりゃ、もうみんなめちゃくちゃ驚いていた。


「なんだよっ、これっ?」


「なんで紫? なんか超気持ち悪いんだけどっ!」


「てか、先生どこいったっ?」


「もしかしてドッキリっ?」


 

 でも、そんな中、俺だけはこう思っていたのである。


 ――ああ、この世界ね。知ってる、知ってる。


 というのも、さっき話した高校を休んでいた期間、俺はこの世界に何度も召喚しょうかんされこの世界を何度も救っていたのだ。さらに言えば小学5年で初召喚されてから高2の今まで実に99回もこの世界を俺はたった一人で(俺はこの世界でもずっとぼっちだったのだ!)救ってきたのである。99回も滅亡の危機におちいる世界ってなんだって気もするが、俺は滅亡の危機から救えば救うほどこの世界に愛着を感じるようになっていたのだった。ちなみにたぶん合計すると10年以上俺はこの世界に滞在していたと思うのだが、この世界にいる間はなぜか全く年を取らないし、元の世界に戻ってもいつも数時間か長くても半日くらいしか時間が経っていないのだ。


 そんなわけでこの世界の超常連である俺はさらにこうも思っていたのだった。


 ――いいの? 俺・・・・・・この世界じゃマジですごいけど!


 そう思いながら誰にもバレないように、「ステータス・オープン」とつぶやくように言うと、俺にとってはお馴染なじみのこんな文字と数値が目の前に現れた。


【トキオカ・ナオハル】

職業 最上級勇者[最上級職]

HP 9852

MP 8956

攻撃 9998

防御 9999

力  9541 

俊敏 7846

習得魔術 炎魔術 SS

氷魔術 SS

雷魔術 S

回復魔術 SS

剣術   SS

特殊能力 全方位攻撃

     全方位防御

     全方位魅了

     全方位ステータス・オープン

     自己ステータス・ダウン

     心の声

     大魔導書

     [出現][解読]

     [加筆修正] 

     転生の儀式

     [コネコ][コドラゴン]

     [?????]

     高級ホテル建設

     武器、防具の創造

     執事猫じい召喚

 


 自分でも恐ろしくなるほどの完全無双仕様の数値!


 悲しいかな1世界を99回も救うとどうしたってこんな数値になってしまうのだった。


 そういう意味ではこの数値は俺の孤独の産物でもあるのだ。


 そしてさらに悲しいことに、クラスメイト達にはこの文字と数値は見えないらしかった。


 と言うか、そんなようなことを俺がしている間、俺以外のクラスメイト達は俺のことなんて完全に無視してほとんど錯乱さくらん状態で口々にいろんなことを叫んだりしていたのだ。

 だが、天からこんなおっさんの声が聞こえてくるとみんな生活指導の教諭が現れた時みたいに急に静かになった。


「君たちは大量召喚された勇者候補生だ。たったひとりで世界と相対あいたいする孤高の勇者ほど美しい存在はないが、パーティーを組んで行動する方が無難だろう。ただし最大4人までだ! だが旅の中で出会ったこの世界の者なら何人でも仲間にしてもかまわん! では、勇者候補生達よ、健闘を祈る!」


 なんて勝手なアナウンスだろうか!


 でもこれが超マイナーでマニア中のマニアしか知らない幻の傑作ロールプレイングゲーム『サーザントビアス』のオープニングなのだ。


 そうなのである!


 この異世界はおそらくはゲームマニアの俺以外のクラスメイトの誰も知らない超マイナーロールプレイングゲームのゲーム世界なのである(ちなみに俺はそのゲームの大ファンでクリアしたのは十数回だが軽く千時間以上プレイしている)!


 しかし、俺はなぜか過去99回全てでパーティーを組むことを許されなかった。


 それで序盤どれだけ苦労したことか!

 パーティーさえ組めれば合わせて10年以上も旅を続ける必要もなかっただろうに(まあ、半分好きでやっていたのだが)!

 でも、そうしていたら俺はこれほど最強の存在になることはできなかったに違いない。


 そんな天からの実にあっさりとしたアナウンスが終わると、クラスメイト達は再び騒がしくなった。



         ⚫

 


「パーティーなんか別に組みたくねえよ。それよりスマホ使えるようにしてくれよ! こんな世界を配信したら軽く同接どうせつ1万越えるだろ!」



         ⚫



「パーティー4人までだってよ!」


「じゃあ、やっぱ、男子だけで組んだ方がよくねぇ?」


「だよな? 女子は絶対足手まといになるもんな!」


「だな! 強くなればきっとこっちの女にモテモテになるんだから女子なんか必要ねぇよ!」


 1軍の男子達(ちなみに俺は言うまでもなく3軍にもはいれてないぼっち!)が偉そうにそんなことを言い出す。


 すると、クラスのマドンナ的存在の乗崎じょうさき麗夏れいかがその男子達に静かに歩み寄って行ったのだった。



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第1話を最後までお読みくださりありがとうございます!


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https://kakuyomu.jp/works/16817330651860796161


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