第33話 近づくゴブリンの巣窟

「おらっ!」


 ナックルがゴブリンに近づき殴り飛ばした。更にブレブも剣で切り倒しユニーの弓が旨を貫いた。


 逆側ではフェレスがスリングショットでゴブリン数体を纏めて倒し、アニンに命じられたウルがゴブリンの喉笛に噛みついていた。


「ファイアボルト――」

「……ぬんッ!」


 向こうではマジュの魔法でゴブリンが焼かれ、キリンの槍で貫かれていく。


「チッ――」


 アグレイも腕のクロスボウでゴブリンを片付けていた。僕たちに突っかかってばかりの男ではあるけど腕は確かなようだ。


「流石だね皆。あれだけゴブリンがいたのに」

 

 フェレスの指定した山に近づくにつれゴブリンの数が増えていた。このあたりは特に多かったのだけどそれも皆の力であっという間に片付いていく。


「いや一番すごいのはネロだと思うけどね」

「そうにゃ。ネロの支援があったからこそにゃ」

「あぁ。ゴブリンの動きが急に遅くなったからな」


 ユニーとフェレス、そしてマジュに感心されてしまった。ゴブリンの数が多いのを確認した後、僕は徐行の標識を召喚して皆をサポートした。


 この標識は範囲内の相手の動きを遅くさせる。これでゴブリンの動きを緩めて皆が攻撃する隙を作った。もっとも範囲内に入った相手全員が遅くなるから皆が近づくまで限定での効果発動だったわけだけど。


「しかし急にゴブリンの数が増えてきた。まるでこの先を守ってるようだな」

「……こっちにゴブリンの巣窟があるのは間違いなさそうだな」


 ブレブとキリンが目を凝らして遠方を見た。ここから少し行った先で緑が薄れ岩肌が顕になる。


 ゴブリンが潜んでいるとしたらそこなのだろう。ブレブを先頭に慎重に足を進めた。


 途中からウルが先頭を歩く。地面に鼻を近づけ匂いを確認しながらウルが案内してくれた。


「嗅覚はウルの方が上にゃ~流石にゃ」

「ガウ」

 

 フェレスがウルを褒めて毛を撫でた。完全に打ち解けているのかウルも心地よさそうに受け入れている。


「ウルは探しものを見つけるのが得意なんだよ」

「ガウガウ」


 アニンも一緒になってウルを撫でながらウルについて語った。優れた嗅覚の為せる技だと思う。


「ただの家畜でなく多少は使えるってことか」

「ウルは家畜なんかじゃないです。大事な家族だもん……」


 またアグレイが場の雰囲気を悪くする発言をした。アニンが眉を落とし悲しい顔を見せていた。


「あんな奴に構う必要ないにゃん。だいたいあいつはウルより仕事してないにゃん。それなのに何様だにゃん」

「あん? 何だてめぇ喧嘩売ってるのか?」

「――よせ。そもそも今のはお前が悪い。これまでのことといい無駄に喧嘩を売りすぎた」


 眼光を鋭くさせキリンがアグレイの言動を注意した。

 

「――チッ。へいへい、どうせ俺は嫌われ者だよ」

「剥れるな。この先ではお前の感知力も必要なんだからな」


 後頭部をさすり自棄気味に口にするアグレイをブレブが宥めた。


「あんな奴かばう必要ないにゃ」

「でもほら一緒のパーティーなわけだし、ね」


 不満そうにしていたフェレスを宥めた。ゴブリンが洞窟を巣窟にしているなら性格はともかく狩人としてのアグレイの力が必要になるかもしれない。


「ガルゥ」

「あそこか……」

「おお、確かに洞窟だ」

「しかもいかにも何かが潜んでそうな、ね」


 ウルが足を止めて顔で示した方向にぽっかりと開いた闇穴があった。入り口はそれなりに大きく深くまで繋がってそうにも見える。


「洞窟ではアグレイ、それにウルとフェレスの力が必要になる。頼りにしてるぞ」

「任せるにゃ」

「ウルお願いね」

「ガウ」

「フンッ。仕方ねぇ多少は仕事するか」


 そして斥候系の二人と一匹を中心にゴブリンの巣窟と思われる洞窟に侵入していく――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る