第三章 Ⅰ 解決への誘い

 練習を終えて家に帰ると、もう七時前になっていた。身体はクタクタだ。

「風呂にはいるよ」と母親に言うと、バスルームに飛び込んだ。シャワーを浴びると、心が和んだ。シャワーを浴び終ると、身体や坊主頭をバスタオルで、グリグリと拭きながら、

「あ~、今日は疲れたな~ そうだ、お袋明日も朝から練習があるから、弁当を作っててよ」

「えっ、明日も練習するの? 今度の監督さんは厳しいわね……」

「あぁ、鬼だよ鬼! 疲れたから晩御飯が出来たら読んでよ。それまで部屋で寝てるから」

「ハイよ」俺は自分の部屋にはいると、パジャマに着替えてベッドに横たわった。

 ――あれは夢か…………。夢なら良いけどな~

 俺は何となく、胸が騒いだ。そのうち寝入ってしまった。余程疲れていたのだろう。


 ………… …………?

 

 俺はお袋の、

「ご飯の用意ができたわよー」と言う呼び声で目を覚まし、食堂に向かった。食堂に行くと、親父がテレビのニュースを見ていた。

「おう、智。バスケも良いど、勉強もちゃんとやってるんだろうな? バスケで疲れて勉強できないのなら、バスケなんて止めちまえ!」

 いつもの親父の口癖が出た。俺は口をへの時に曲げ、

「解ってるよ!」と答えた。

 晩飯を食べながら、俺も一緒にテレビのニュースを見ていると、この街で幼い女の子が行方不明になっているというニュースが流れていた。何でもその子は発達障害と多動症があるという場面になると、親父はいきなりテレビを消してしまった。

 俺はお袋と目を合わせ、溜め息をついた。俺の妹早苗さなえを思い出したからだろう。早苗も同じ病気で小学校の頃から皆にいじめられ何時も泣いて暮らしていた。一日中嘆き悲しんでいた。俺が抱き締めて慰めても心が凍っているようだった。余りにも辛かったのだろう。そのうち早苗は学校にも行かなくなり、一日中死んだような顔をしていた。そして、遂に十二歳の秋に入水自殺をしてしまった。親父もお袋も学校に激しく抗議をしたが、ノラリクラリとかわされてしまった。全く教育委員会と言う所は全く責任感が無い。その思いが振り返したのだろう。親父の顔には無念さが滲み出ていた。食堂のとなりにある和室に早苗の仏壇がある。皆何時も手を合わせていた。どうして障害者をいじめるのだろう。子供とは可愛い反面、実に残酷ざんこくなことをする。直感で物事を考えるからだ。残酷なことを平気でする。そこを矯正きょうせいしてあげるのが教師の役目ではないのか。今から三年前の事だった。今度の行方不明は小学校の一年生だそうだ。何となく、三人は暗い気持ちになった。何となく飯を食い、再度風呂に入り直して、部屋に戻り、課題をしてベッドに潜り込んだ。

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