Ⅴ 親友との会話


 ヨーシッ❗ ここいらでちょっと休憩だ。皆十分水分を補給して休んでろ時間は三十分だ」監督の声が響いた。例の脱水症対策だよな。

「あ~。つかれたびー、くたくただ」と俺はアクエリアスをゴボゴボと口に当ててのみ、体育館の端に置いてあった、体育の授業の時に使うマットレスの上に仰向けに倒れた。そこに俺の親友の橋本荘司はしもとしょうじが近付いてきて、

「おい、智。一体どうしたんだよ? 一時間以上遅れてさ」

「それがな、来る途中で不思議な体験をしたんだ」

「不思議な体験って?」

「まるで、異次元の世界に落ちたような体験をしたんだ。あの江戸川の河川敷の土手の上の細い道を自転車で走っていたらさ…………。」

「そしたら、どうしたんだよ?」

「そうしたらさ…………。やっぱり良いよ、どうせ信じてもらえないんだから」

「もったいぶるなよ。話してみろよ」

俺はアクエリアスをグビッと再び飲むと、

「あぁ、そうだな~、お前絶対笑うなよ。それに人にも言うなよ。馬鹿にされるに決まってるんだから」そして、親友の橋本だけには話そうと思った。あの土手の道を走っていたところから詳細に話した。

「…………。うぷうぷうぷ」と今にも吹き出しそうにしたあと、

「うわっはははは」とついにに大声で笑い出した。皆がこちらを見返していた。

「お前。そりゃ夢でも見たんだよ!」

「ヤッパリナ、話すんじゃなかったよ」とばかり橋本の坊主頭をポカリとばかり殴った。

 イテッ❗ 

「何すんだよ。俺は正直に思ったことを言っただけじゃないか。もう」

「だから、嫌だったんだよ、お前に話すのは」

「第一、俺は学校に行くため自転車を漕いでいたんだぞ。自転車を漕ぎながら夢を見るなんて事が出来るかい❗ お前はアホか」そんな風に俺と橋本が言い合っていると、

「興味深い話をしているな」と側にいた同じ二年二組の高遠岳士たかとうたかしが呟いた。

「意外とそれは夢ではないかもしれないぜ」うちのクラスでトップの高遠が続けて言った。

「俺は、今その異次元の世界に嵌まっていてね、本を買っては良く読んでいるんだ、人によっては異次元を数式で証明しようとした人もいるとか……。とにかくこの世は人智を越える現象、異次元に迷いこむと、違う人生を歩んでいる自分も見られることがあるそうだぜ。そんな世界が自分の直ぐ身近にあると多くの人に言われているんだよ」すると橋本が聞いた。

「聞いてたのかよ、高遠。まぁお前が言うのなら、ひょっとしたら、夢ではなかったかもしれないな」そこで俺は、

「おい、高遠。人には話すなよ内緒話だ、誰にも話さないでくれよ」

「勿論。誰に話しても、橋本と同じ反応をするに違いないからな。ハハハ」

「頼むぜ❗」とアクエリアスを再びグビリと飲んでいると、

「こりゃ❗ 二年生組お前ら何をごちゃごちゃ話してるんだ!」とハゲ監督に怒鳴られた。

「ヨシッ、もう休憩は終わりだ❗ 練習を再開するぞ」と言うことで、皆はバスケの練習を再開した。そして夕方になってやっと練習は終った。

「ヨシッ、今日はこれで終了だ。明日の土曜日も練習をやるからな。午前九時に集合だ❗ 解ったか」皆は“はいっ“と大声を出した。

「おいっ、智! 明日も遅れたらドーナルカ解ってるだろうな」

「はいっ、了解でーす」

「何が了解だ。ヨシッこれで皆解散❗ 気を付けて返れ」と言うことで、皆家路に着いた。

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