第5話 蓮と未狂
この世界はイカれてる……
なぜそう思うか?
俺の身近で強姦未遂が発生しまくるからだ!!
死んだと思って生き返ったら前世で俺にトラウマ植え付けた竿役が闊歩してるこの世界はマジでイカれてる。ぶっ壊した方がいいんじゃねぇか!?
「ったく、汚い野郎だったぜ」
先程引き渡した上崎を思い出す。
可愛い女の子を無理矢理犯すみたいなコンセプトのエロアニメにはああいう竿役が多い。
太っていて小汚い中年、もしくはそれに近しい見た目の高校生。
はっきり言って視界に入れることすら億劫なので本当に大人しくしておいて欲しい。
なんで毎日のように俺の身近で事件を起こすのか理解できん。
神様、もしいるなら…この世界にいる強姦魔どもが全員死にますようにって願い、叶えてくんねぇか?
「だ~れだ!」
「……綾乃先生か」
後ろから抱きつかれた。
褐色の肌、グラマラスな体型、俺に迫る長身。
ハーフ故の日本人離れした美貌を持つこの女性は新堂綾乃。
保健室の女医でなにかと世話になっている人だ。
「もう、ツレないなぁ~」
「イチイチ抱きつくな。誤解されるだろうが」
俺が綾乃先生の腕を外すと文句を言ってきたので反論した。
この教師は誰に対しても距離が近いんだよ。
特に女子にはベタベタくっつく。
ラテンアメリカの血なのか、明るく陽気な性格だ。
「なんだよ、恥ずかしがってんのか?」
「なってねぇよ。それより未狂は?」
正直恥ずかしいがそんなこと口が裂けても言わない。
「未狂ちゃんなら大丈夫!私の服貸してやったから!」
「そうか、ありがとうな」
「感謝しろよ~おかげで今スース―すんだからよ」
「……は?」
図々しい態度の一言文句を言ってやろうと思ったがその後の発言に問題がありすぎたので固まってしまった。
「お前、まさか…自分が着てる服を……」
「ん?そうだぞ。上着の替えは持ってきてたけど流石にパンツの替えは持ってきてなかったからな!」
アハハ!と快活に笑うコイツを……俺はきっとすごく冷めた目で見てたと思う。
「テメェふざけんな!なんでテメェの中古を未狂に貸したんだよ!」
「中古とはなんだ!?今日はいたばかりの綺麗なやつだぞ!」
信じらんねぇ…!まさかテメェで履いてた下着貸すとか…なに考えてんだ、この女?
しかもコイツパンツ履いてないくせにミニスカに黒いストッキングって頭おかしいんじゃねぇか?
「ハァ…まぁいい。いや、よくはねぇけどな。まさかお前そのまま帰るつもりか?」
「いや、これから体育祭についての打ち合わせがあるから帰るのはまだ先だ」
ノーパンで会議とか馬鹿なのか、こいつは?
コンビニ行ってパンツ買ってこいよ。
それかミニスカじゃなくてズボンに履き替えろ。
「あ、そうだ。未狂ちゃんのことなら心配するな。あの子なら今保健室で寝てるから」
未狂のことなら心配していない。
コイツのことは信用しているし、信頼している。尊敬はしていないが。
「お前が未狂を一人にしたってことはそういうことなんだろ。わかってるよ」
未狂が一人でも大丈夫だと判断したから会議に行くのだろう。
もしもダメだと思ったら会議などすっぽかして彼女と一緒にいるはずだ。
「蓮もようやく私のことわかってきたか~」
「肩組むな、人妻のくせに」
この女実は人妻だ。
しかも旦那にベタ惚れの新婚さんというおまけ付き。
「なんだよ、ダーリンへの嫉妬か?悪いなぁ、私ダーリンの女だからお前とは__」
「してねーよ!勝手に勘違いしてんじゃねぇ!」
コイツは自分が結婚しているという自覚はあるのか?
ベタベタくっ付きやがって。
「未狂に報告しようと思ったが…日を改めるか」
「いや、寝てるって言っても横になってるだけだから多分行っても大丈夫なはずだぞ」
そう言うと綾乃先生はなにかを俺に投げて寄越した。
「これは、鍵か?」
「そ、今日はもう保健室戻らんから戸締りよろしく~」
それだけ言って綾乃先生は行ってしまった。
全く、教室のカギを生徒に貸し出すって大丈夫なのか?
あの先生は本当に規則とかルールとかにルーズだからな。
現在俺は保健室に戻ってきていた。
理由は色々あるが一番大きな理由は報告のためだ。
俺にとって今回の件は慣れた事件、見慣れた醜悪だ。
だが未狂にとっては違う。
恐らく生まれて初めて人の醜い部分をこれでもかと見せつけられてしまった。
荒事に慣れていない未狂にはショックな出来事だっただろう。
無論、俺のことも含めてトラウマになっている可能性もあるがそうでないなら上崎がどうなったか、知るべきだ。
「未狂、蓮だ。入っていいか?」
ドアを二回ノックしつつ聞いた。
ないとは思うが一応着替えている可能性も考慮してだ。
もしいきなり入って着替え途中だった場合、変態扱いされるかもしれない。
そんなのはごめんだ。
俺は上崎や今まで捕まえてきたヤツらとは違うのだ。
『どうぞ』
本人許可を無事に出来た俺は扉に手をかけ、開けた。
開けた瞬間、保健室の空気が漏れだした。
薬品特有の匂いと芳香剤の香りが鼻腔を擽った。
見慣れた場所だが慣れない匂い。
いつもここに来ているがどうしてもこの匂いだけは好きになれなかった。
「あ、蓮先輩」
少々サイズが大きい白衣を着た未狂が静かに言った。
「あぁ……ちょっといいか」
正直服装についてはかなりツッコミたかったのだが流石に普通の服が都合良くあるわけないかと気にしないことにした。
最初に見た時は気が付かなかったがどうやら俺のYシャツを白衣の下に着ているらしい。
(どうせ着せるものがなかったから着とけって綾乃が言ったんだろうな……)
脳裏に年齢不相応な天真爛漫な笑顔が浮かぶ。
正直女じゃなかったら拳骨一発は喰らわせていたと思う。
俺は紳士ではなく基本的に不良なのだ。
「大丈夫なのか?」
「あ、怪我とかは特にないので大丈夫です」
「違う。俺といて大丈夫かってことだよ」
意味が分からないといった顔で未狂のことを見て自分の気遣いは全く不要だったのだと悟った。
彼女の心は思ったよりも強かったらしい。
「いやなんでもねぇ。それより言わなくちゃならねぇことがある」
「?」
「上崎のことだが」
「!!」
上崎、その名前を口にした瞬間彼女の顔色が目に見えて変わった。
やはりまだ恐怖は拭えていないらしい。
ただそれも仕方がない。
「無理そうなら後日でもいいぞ」
「……」
俺がそういうと未狂は黙った。
しばらくすると聞きますと返事が返ってきたので上崎がどうなったか簡潔に話した。
「__じゃあ上崎先生は」
「あぁ、もう当分は刑務所から出てこれないだろうな」
「……」
黙ったままの未狂。
その表情は安堵があったがどこか歪んでいた。
きっと罪悪感だ。
自分が上崎を刑務所に送ったという認識が彼女の良心を苦しめている。
「言っておくがお前のせいじゃねぇからな」
「え?」
「アイツは今回の件が初めてだったわけじゃない。遅かれ早かれ事件を起こしてた」
「……」
「だからお前のせいじゃない。お前はただの被害者だ」
だが未狂は俯いたまま黙り込んでしまった。
何も悪くないのに加害者のことを心配してしまうとは__
(__お前優し過ぎるぞ)
その優しさは美徳だが同時にこの世界においては欠点でもある。
友人を出しにされれば必ずその身を捧げるだろう。
たとえヤラれても警察に言えず泣き寝入りしてしまうだろう。
俺はそんな未狂が少し不憫に見えた。
やはりイイヤツが割を喰うのは見ていて不快だ。
「別に死ぬわけじゃねぇんだ。そこまで気負うなよ。お前は何も悪くないんだから」
そんなことを言ったら俺はどうなってしまうのだろうか。
今回の上崎だけじゃない。
俺は何人も刑務所に送り、それができない奴には二度とそんな気が起きないような目に合せてきた。
業者を装って部屋に押し入り、新婚の新妻を輪姦しようとした男たちを三カ月は固形食が食べられないくらいボコボコにしたことがある。
彼氏の目の前で女を強姦しようとしたチンピラを顔の原型がわからなくなるほど殴り、蹴ったことがある。
催眠アプリを使って街中の女を自分の性奴隷にしようとした痛いヤツを滅多打ちにして二度と外に出られない程の恐怖を植え付けたこともある。
俺がやってきたことに比べれば未狂がやったことなど大したことはない。
「は、い」
未狂はこちらを見ながらぽろぽろと涙を零しはじめた。
「……泣くなよ」
「すみません……でも、なんか安心して……」
静かに涙を流す未狂を見やりながら保健室の掛け時計を見た。
時刻は5時50分。
もうすぐ最終下校時刻だ。
ただ、今この少女を歩かせるのは憚られた。
「まぁいいか」
少しくらい出るのが遅くなったって今日は許される。
この優しき少女のちょっとした我が儘ならきっと神様も見逃してくれる。
陵辱系エロアニメ世界で竿役をボコる ユウト @yutaroMS
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