第21話 魔法少女と彼女は言う
我、夕空にしろしめす、世はなべてこともあり。
正直色々あり過ぎて手に負えない。天は俺に何を望む。絶対聞いてやらないが。
ビニール袋を片手に、人の一生と環境政策に思いを馳せる。
有料化されたそれはプラスチックゴミの削減、持続可能な社会を実現する為実行された。一部政治家による政治的パフォーマンス、或いは欧米基準への配慮。結果小銭が飛んでいく。エコバッグは売れるだろうが、さては鞄屋の回し者。
ではカナタ、君はいかなるお題目を掲げる。
持続可能な異世界送りを実現するか。
もはや迷惑系の配信者と変わらない。あれは法に触れることもあるが、カナタは裁きようがない。
法が想定しないのだ。
無敵の人。
占い師で無敵の人とは社会の許容範囲を侮り過ぎだ。
実に悪質、猛省を促すになんの躊躇いやあらん。
コンビニから戻ると、二人はまだ向かい合っていた。まだ飛んでいないらしい。だがいつ飛んでもおかしくはない。
徐に内間が立ち上がった。
軽く頭を下げた彼は、手を振り立ち去って行った。
四分の一の呪われた占い。どうやら三を引いたらしい。長の戦いになる思ったが、とんだ拍子抜けである。
ほっとため息一つ、昨日と同じくスマホを取り出すカナタへと近づいていく。
「一を引かねば良いというその姿勢、如何ともし難し。世が世なら島流しは避けられまい。お仕事お疲れである」
労いと呆れを含ませ声をかけると、
「こんにちは。なんのことですか?」
カナタはすっとぼけた。
「こんにちはではない。生活の為とはいえ、うちの生徒を実験台にするな」
「うん? ああさっきのお客さん、そうか同じ学校なんだね。制服同じだ」
「左様。このまま続けるというなら、やはり親御さんと話し合わねばならない」
「何話すつもりなの……まだ二日目だよ?」
「二日で二名の犠牲者が出るところだった。一日一善に挑戦状を叩きつけるその姿勢、いかにも占い師」
まるで中世暗黒時代。いや、古代かもしれない。
呆れを通り越してはいるが、いわんやこちらも大人なり。決して見捨てたりはしない。昭和の熱血教員の如く立ち直らせてみせる。
「私は君を見捨てたりはしない」
「あ、ありがと。なんかよく分からないけど」
カナタはぎこちなく首を傾げている。まさか彼女も自覚がない。一体令和はどうなるのだ。自覚という概念は消え失せたのか。
俺の知らぬ間に常識が塗り替えられていく。
「で、今日はお客さんですか。それとも激励。もしくは傘についてでしょうか」
マスク越し、カナタは悪戯な笑みを浮かべているのだろう。
「そうありたいが、そうだな先に傘と差し入れだ」
「差し入れ? ありがとう」
ビニール袋から二本缶を取り出す。一つはコーヒー。もう一つは緑茶だ。
「お好きな方を。ちなみにどちらもホットだった。ホットだった物達だ」
「そうなんだ。じゃあコーヒーいただくね」
カナタはそう言ってコーヒーの缶を手に取った。
どうぞと促され俺は椅子に腰かける。
彼女はまた悪戯な笑みを浮かべ、見えないが口を開いた。
「お客さん昨日雨に降られたんですね」
「そうなる。驚きの実証力。君の占いは実に正確。と言いたいが局地的通り雨かもしれない。天気予報はスーパーなコンピューターを利用した、かつては軍事技術だったもの。あらかじめ知っていたとて不思議ではない」
「あれま、疑われてる。せっかく占ってあげたのに。無料で」
「支払いはすませたぞ。知っていたなら傘貸してくれてもよかったんじゃないか」
不服を述べると、彼女は微笑んだ。それから苦笑いへと転じる。
「この缶コーヒーみたいにコンビニで買えばいいじゃないですか」
「無駄な出費は受け入れられない。学生に浪費は敵である」
「なら、初対面の人に傘を貸す為お家を教えるのは無防備だと思うなあ」
「それはそうだ。危険と取られるのは私の不徳。よってこの不服は取り下げる」
これらは本日の主題ではない。よって引っ込めたが、カナタもまあ納得はしたらしい。一つ頷いている。
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