第28話 レヴィン、仲間たちと交流する

 Sクラスの同級生ローラヴィズと、小学校時代の同級生で騎士中学に通うヴァイスが新たに仲間に加わった。これで《無職ニートの団》は六名に増えたこととなる。今日は、このパーティで戦闘をする前に色々と確認がてら、とあるカフェで交流することとなったのだ。


「えー、本日は我らが《無職ニートの団》に新加入した二人を紹介したいと思いまーす!」

 開口一番、レヴィンがそう宣言すると、アシリアから控えめな拍手が飛んでくる。

 ダライアスは何を今更と言った様子でいるし、シーンも相変わらずあまり表情がなく何を考えているのか分からない。ローラヴィズはにこやかな笑みを浮かべて静かに座っている。ただヴァイスは何やら緊張した面持ちで、俄かに立ち上がると自己紹介を始めた。


「騎士中学校に通っているヴァイスだ! 騎士ナイトとして、前衛として頑張るので期待していて欲しい」


 アシリアは律儀に拍手を送っている。

 レヴィンも団長としてヴァイスに激励の言葉を掛ける。


「うむ。よくぞ加入してくれた! 期待してるぜ! ってコラッ! お前らも歓迎しろ!」


 レヴィンの言葉に、ダライアスとシーンがようやく反応を示した。


「だってなぁ……」


「今更……」


「だよなぁ……」


 代わる代わるに呟くダライアスとシーン。

 レヴィンはその理由をちゃんと理解していた。

 ローラヴィズ以外の五人は同じ小学校の同級生なのだ。当然、皆顔見知りである。


「いや、だからってな? こう言う時はしっかりすじを通すべきなんだぞ?」

「いや、構わない。俺は皆に認められるよう頑張るんだ!」


 ヴァイスが何やら熱血番組のノリで意気込んでいる。先輩の団員からの冷たい視線と戦い、科された壁を乗り越えんと熱意に燃えているのだろう。


「って、ダライアスたちも悪役じゃねーんだからさぁ……」

「私も少し悪ふざけが過ぎた……ゴメン……」

「ま、よろしくなヴァイス」


 シーンが謝り、ダライアスも態度を少し改める。ヴァイスが落ち着きを取り戻したところでローラヴィズがおもむろに立ち上がった。


「次は私の番だね。私の名はローラヴィズと言う。職業は賢者だが前衛に職業変更するつもりだ。キミたちに負けぬよう努力する。どうかよろしく。気軽にローラと呼んで欲しい」


 その気品がありながらも堂に入った態度にダライアスとヴァイスが気圧されている。アシリアは特に変わらず控えめな拍手を送っているし、シーンも何か感じるところがあったのか、微笑みながら「よろしく」と声を掛けている。


「んじゃ取り敢えず、全員、今年の鑑定結果持って来たか?」

「おお、俺のはこれさ。って言っても大して強くなれてないんだけど」


 ヴァイスは自信なさげに鑑定結果の写しの紙を皆の前に置いた。


「課外授業でも結構ハブられててな……。正直レベルは高くない」

「構わんよ。今のレベルの差なんて誤差だ。誤差。俺も春休み前までは低かったしな」


 ヴァイスは騎士剣技を幾つか習得しているようだ。これからレヴィンの知識を活用して上手く職業クラスレベルを上げていけば、聖騎士ホーリーナイトや竜騎士にだってなれるだろう。そのためには、転職士を探すことと、職業を偽装する必要があるだろうが、それは追々考えていこうとレヴィンは思っている。取り敢えず今は、強くなることが先決である。レヴィンがヴァイス育成計画を頭の中で描いていると、今度はアシリアが鑑定結果の写しを広げる。彼女はどこか照れたような感じで「エヘヘ」と笑っている。彼女の付与術士の職業クラスレベルは6だ。彼女の最終形態も考えなければならないだろう。


「アシリアのレベルは16かー。負けたー!」

「アシリアはそろそろ職業変更クラスチェンジしたいところだな」

「私も同じ……」


 ヴァイスが悔しそうな声を上げる中、シーンはそっと紙を出した。シーンも順調に成長しており、光魔導士の職業クラスレベルは6だ。アシリアとシーンの職業クラスレベルが高いのは、レヴィンがパシリ神から聞いた裏技を教えたからだ。強くなるために手段を選ぶつもりなどない。


「シーンは今後、何の職業になりたい? 希望とかあるのか?」

「どんな選択肢があるのか覚えていない……」


 シーンの言葉を聞いてレヴィンは思い出した。フィルの誕生日にアシリアと話したことを。現在、彼女が職業変更クラスチェンジできると分かっている職業は、基本職業に加えて付与術士だけのはずである。彼女が「分からない」ではなく「覚えていない」と言ったのは、職業変更クラスチェンジの条件が判明している職業だけが教科書に記載されているからだ。


「あ、ごめん。そうだな。俺としては神官系に進むのもアリかなと思ってたりする」

「神官系……?」


「うん。神官プリースト司祭ドルイド司教ビショップ聖人セイントってとこかな」

「まぁでも職業変更クラスチェンジできないし……ね?」


「そうだな。そこら辺も含めて色々考えないとな」


 次はローラヴィズが机に用紙を広げて見せた。


「魔法について今のところは問題なく使いこなせているわ」


 職業クラスは賢者、レベルは12、職業レベルは4であった。レベルは課外授業で魔物と戦っているのでそれなりに上がっているようだ。習得している魔法も問題ない。


「ローラはまず駆け出し戦士に職業変更クラスチェンジするところからだな」

「今、転職士を手配しているから少し待って欲しい」


 最後にレヴィンが鑑定結果を見せると、ヴァイスから驚きの声が上がった。もちろん見せたのは偽装ステータスである。暗黒導士でレベルが18、職業レベル7と特に凄い訳でもないのだが、ヴァイス的には差を感じるのだろう。本当のステータスはこんな感じだ。


名前:レヴィン、性別:男性、年齢:十四歳、職業:魔物使い、称号:異世界人、探求者、中学生、加護:究極無職大ニートⅠ、指揮:☆☆☆、レベル:18、無職レベル2、駆け出し戦士レベル3、魔導具士レベル2、剣士レベル1、戦士レベル2、騎士レベル3、修道僧レベル3、暗黒導士レベル7、光魔導士レベル4、時空導士レベル2、付与術士レベル1、弓使いレベル3、狩人レベル2、獣使いレベル3、魔物使いレベル1。


「流石、我らが団長だな!」

「さっきも言ったけど誤差だよ。次の夏休みに一気にレベルを上げるぞ!」


 褒められて悪い気分はしないレヴィンであったが、現役バリバリの探求者ハンターたちとのレベル差が気になっていた。他にも懸念はある。例えば、盗賊などに襲われた場合、対人戦となる。そうなった場合にアシリアたちに人が殺せるかも問題である。レヴィンがそんなことを考えていると、ダライアスがボソリと漏らした。


「皆、いいよな。俺は今どんなもんなんだろうな?」

「俺と同じくらいじゃないか?」

「アナタがよければ鑑定士を手配するわよ?」

「……いや、構わない」


 貴族に何か思うところがあるのか、ローラヴィズに対するダライアスの言動はぶっきら棒だ。そんなダライアスの様子を特に気にすることもなく、アシリアは呑気そうに口を開く。そしてテーブルに両手を投げ出して突っ伏すと、相好を崩した。


「今度の休みは皆で狩りだね~」

「楽しみ……」


 シーンも微かに笑みを浮かべている。ヴァイスは手に持っていたジュースを一気にあおると、テーブルに勢いよく叩きつけて言った。


「よーし! 俺はやってやるぜ!」


 レヴィンはそれぞれの様子を見て、嬉しそうに目を細めた。

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