23話

雪が落ち着いたので、次のアトラクションに向かう。


「わぁ…!大きいですねぇ…!」


「うん…!大きいねぇ…!」


アトラクション前まで着くと、二人で驚いていた。




最後のアトラクションは観覧車。



さっそく二人で乗り込むと雪と隣通しで座り、今日の感想を言い合った。


「王子様…今日は本当にありがとうございました…!それと、いっぱい迷惑かけちゃってごめんなさい…」


「ううん!気にしないでいいよ!それに私も楽しかったから!」


「王子様はやっぱり優しいですね…」


「そんなこと…」


私が照れていると雪がなんだか緊張しながら私に質問する。


「あ、あの…王子様…」


「うん?どうしたの?」


「本を返しに来てくれた日、王子様が気に入ってくれたシーンのこと覚えていますか…?」


「うん!覚えてるよ!王子様が優しく、時には勇ましくエスコートしているシーンだね!」


「そうです…!それじゃあ、そのシーンがあった物語の内容は覚えていますか…?」


「もちろん!えーとね…」


物語を思い出し、話す。



ある日少女が王子をデートに誘います。


場所は森の奥にある山の頂上まで。


王子は少女のデートのお誘いを受けると、さっそく一緒に向かいます。


大変な道のりでしたが、少女は王子とのデートが嬉しくて笑っていました。


だけど、少女が森の前まで来ると、入るのが怖くて震えてしまいます。


そんな、少女を王子が優しく手を引いて先導してくれます。


少女は、王子の優しさに安心して歩き出します。


だけど、途中で驚くことがあり、少女が泣き出してしまいました。


泣いてしまった少女を王子は優しく抱きしめ、少女を励まし、少女の手を引き、勇ましく歩き出すのです。


少女はそんな王子に勇気づけられると、無事森を抜けられたのです。




そこまで話すと雪が言う。


「はい…。お化け屋敷での王子様はまるで…お話の中の王子様みたいでした…」


「あはは…そう言って貰えるのは嬉しいけど、実際の私はあんなかっこよくなくて、怖がっていたよ…。お化け屋敷を進めたのも雪がいてくれたおかげだし」


「いいえ…。王子様は本当に優しく、頼もしかったですよ…。本当に私はそう思いましたから…!」


あの時は雪を助けたくて無我夢中だったけど…。


雪がそう思ってくれたなら嬉しいな…。


そう思っていると、観覧車がちょうど真上の辺りに来た時だった。


雪が言う。


「王子様。あのお話の続きは覚えていますか?」


「あの続きはたしか…」




少女は山の頂上へ着くと王子に感謝のキスをしました





突然、雪が私の頬にキスをする。


私が驚いていると雪が言う。


「えへへ…お礼です…。今はお話みたいなキスは出来ないですけど…。いつか私だけの王子様になってもらって。今度は本物のキスをさせてもらいますね…」


そう言い照れる雪はすごくかわいくて、ドキドキしてくる。


だけど、私は心の中で思う。


今はやっぱり応えられないの…本当にごめんね…。


なんだかそんな私が嫌になってくる…。


そう考え暗くなる私に、雪が突然声を上げる。


「あ!王子様!見てください!すごいキレイですよ!」


雪が指指す方を見てみると、沈みかけの夕陽が、海に映ってキラキラと輝いていた。


雪がすごく嬉しそうにしている姿を見て、今は自分勝手だけど一緒に楽しもうと考えた。


「ほんとだ!すごいキレイだね!」


その後も、二人で見えなくなるまで夕陽を眺めた。


そして、観覧車が下まで着き降りる。


すると、係の人がスタンプを押すと、突然大きな声で、アトラクション全クリアおめでとうございます!と言った。


私達が驚いていると、係の人が腕に巻いていたリボンを外し、別のリボンを付け直す。


それから、二人で並ぶよう指示され記念撮影をすると、少し待っていてくださいと言われる。


二人でなんだろね?と疑問に思っていると二つの箱を手渡される。


中を開けてみると、かわいい額縁に飾られた写真が入っていた。


写真には私と雪が並び、繋いだ手にはハート型のリボンが写っている。


「わぁ!すごいねぇ!」


「はい…!すごく素敵です…!」


二人で感想を言いあっていると係の人が、私達の手に結ばれたリボンを外すと手が離れた。


そして、この後は自由に楽しんでくださいね!と言う。


これで繋がれていた手は自由になったけど、私達は自然と繋ぎ直し、閉園時間まで目一杯楽しむのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る