22話

地図を見て次の場所へと向かったのだけどそこはアトラクションではなく、フードコートだった。


疑問に思い係の人に尋ねると答えてくれる。


どうやらここはボーナスステージで、クリアすると数分だけ手を離すことが出来るみたい。


要するにその間におトイレとか済ませてねってことらしい。


私達は一応この先なにがあるかわからないので挑戦することにした。


挑戦内容は簡単で、料理をお互いに食べさせ合い完食することと、一杯のジュースをハートの形に組まれたストローで飲み干すというものだった。


まずは料理をお互いに食べさせ合う。


これは、普段からよくお昼の時にやって慣れていたので問題なかった。


私が利き手の右手が繋がれていたので少し苦戦したけど。


問題はジュースの方だった。


いざ飲もうとすると顔がすごく近いことと、ストローで繋がった同じジュースを飲むのが、かなり恥ずかしい。


なんだか…雪とキスしているような感じがして、恥ずかしいよぉ…。


雪も同じように思ったみたいで、恥ずかしそうにしていた。


照れながらも、二人でなんとか飲み干しクリアする。


「王子様と…キスしたみたいでドキドキしました…。でも、本物はもっとドキドキするんですかね…」


そう言い指で自分の唇を触る、雪を見てドキドキしていた。


私は誤魔化すために、どうなんだろうねぇ…。と言うと雪が言う。


「私もいつか…してみたいです…」


「そ、そうだねぇ…」


そんな雪の唇から目が離せなくなりさらにドキドキしていたけど、係の人に話しかけられ、なんとか正気に戻れた。


クリアしたことにより数分手が離せるようになった為、おトイレを済ませるとまた手を繋いで、次の場所へと向かった。



三つ目のアトラクションはコーヒーカップ。


飲んだり食べたりした後にこれは…。


雪にあまり回さないようにしようね、と伝え乗り込む。


軽く回した程度だったけど雪はすごく楽しそうにしていた。


そんな私も楽しんでいた。


こうして、三つ目のアトラクションも難なくクリアして、スタンプを押してもらう。



四つ目へと向かう。


そして、ここが最大の難関で、一番苦戦することになる。


そのアトラクションは…。



お化け屋敷



私が一番苦手とするところだった。


雪の方を見ると私以上に怖がっていて、入る前からすでに泣きそうになっていた。


そこで、雪に相談する。


「雪…どうしよう…ここは私も無理かも…」


「私もです…。怖いの嫌です…」


「うーん…。残念だけどギブアップする…?」


ここまで来たのに諦めるのは悔しかったけど、そう提案した。


すると、雪が言う。


「私は…出来れば諦めたくないです…。王子様ともっとデートしていたいです…」


「それなら頑張ってみる?」


「はい…。でも足を引っ張ったらごめんなさい…」


「ううん、その時は私に任せて!」


「ありがとうございます…!」


私も怖いのは本当に苦手だけど、雪とまだ遊んでいたかったので覚悟を決めて、入ることにした。


二人で歩き出すと、雪が震えていたので私が少し前に出て、優しく手を引き先導する。


そんな私に雪も安心したのか少し震えが収まっていた。


中に入ると、まだ入り口にも関わらず、すでに怖い雰囲気で二人共ビクビクしていた。


「け、けっこう…雰囲気出てるね…」


「は、はい…」


二人共、足が震えなかなか先に進めずにいる。


「こ、怖くない…怖くないよ…!」


「そ、そうですね…!」


それでもなんとか進んだところで問題が起きる。


突然、バンッ!という音と共に、目の前に生首が落ちてくる。


「ひぃっ!」


私は驚き声を出してしまった。


実際は人形だけど、突然だったのでかなり驚いた。


び、びっくりしたぁ…。


危うく腰を抜かすところだったよぉ…。


雪は大丈夫だったかなぁ…。


そう考え、雪の方を見てみると…。


雪は、あまりの恐怖に声も出せず、涙を流していた。


「ゆ、雪…?」


私は心配になり話しかける。


すると、私を見て雪が声に出し、泣き出してしまった。


「お、王子様ぁ…怖いです…怖いですぅ…。嫌です…。ううぅぅぅ…」


私は怖がり泣いている雪を、少しでも安心させたくて抱きしめる。


「大丈夫だから!大丈夫だから!…ね?」


「ごめんなさいぃ…。私が諦めたくないなんて言ったから…。ごめんなさいぃ…」


「そんなことないよ!私も諦めたくなかったから!だから雪のせいじゃない!」


「でも…でもぉ…!」


「大丈夫!後は私に任せて!雪は私の腕をしっかり掴んで、目をつぶってて!後は私がなんとかするから!」


「王子様ぁ…」


雪が繋がっていない方の手で、私の腕を掴むのを確認すると、雪が転んだりしないよう注意しつつ、進んでいく。


私も怖かったけど、雪にこれ以上泣いてほしくない、これ以上自分を責めてほしくない、そう思うと不思議と先に進めた。


そうして、なんとかゴールまでたどり着く。


ゴールだよ!雪にそう伝えると、雪は安心したのかその場にしゃがみこむ。


私もリボンが切れないように同じくしゃがむと、雪を抱きしめながら頭を撫でる。


それから雪が落ち着くのを待ち、スタンプを押してもらいなんとか四つ目のアトラクションをクリアした。


雪が私に言う。


「王子様…本当にごめんなさい…。私のせいで…大変な思いをさせてしまって…」


「ううん、そんなことないよ!雪が一緒だったから頑張れたんだもん!雪のおかげだよ!ありがとね雪!」


そう言い雪を抱きしめる。


雪も私を抱き返してくれた。


「王子様…ありがとう…ございます…」


こうして、今日一番の難関をクリアでき、アトラクションは残すところ、あと一ヶ所となった。

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