第9話

「あんた達、天職は何? 天啓レベルは?」

「天職? 天啓レベル? 何それ?」

「あれ、ボク説明してなかったっけ?」

「してないっての」


 カーラは最初から色々と説明不足な上に段取りも悪いです。

 仕事できないって怒られている事に深く納得する程でした。


「天職とは神々――私達ウェルテクス王国ではフレイア様がお与え下さる、その方に最も適した職業の事です!」

「お、おう?」


 奥ゆかしいかと思われたマリエだが、神――フレイア様の話になると急にグイグイくるな。


「我らが神、フレイア様が与えた生き残る為の奇跡と救い! それぞれに最もあった職業こそが天職なんです! そして天啓レベルとは、困難を乗り越え修練を積む事で様々な能力が上がる……。この奇跡をフレイア様の御力じゃなく、なんといいましょう!?」


 熱弁しているところ悪いけど、そのシステムを管理しているのってさ、多分ヴァルハラの皆さんなんだよな。……しかもこの世界の管轄は確か、このポンコツ戦乙女のカーラとか言ってたし。

 いや、世界とかシステムを創ったところまではフレイア様なのかもしれないけど。


「――マリエが言うことに1つ足すなら、私達も鑑定機で天職を鑑定してもらうのよッ。そして後は、生き残る為に己の天職に合った修練を積むの!」


 成る程、この世界では自分に合った職業を勝手に見つけてくれる訳か。

 それは羨ましい事だ。

 何せ、俺のいた世界では自分の適職が解らないで悩む人ばかりだったからな。

 職業選択の自由と言うと聞こえが良いが、転職を繰り返しても天職――適職と出会えず死ぬ人の方が圧倒的に多かった。


「……ちなみに、君たちには職業選択の自由とかないの?」

「フレイア様が指し示して下さった道を踏み外すなんてあり得ません!……中には信仰心が薄く、『別のやりたいことをする』などという不届き者も居ますが――そう言った方は、だいたい無残な最後を遂げています」

「……それ、本当?」


 一応、フレイア様に一番近い位置に居たであろうカーラに聞いてみる。


「事実だよ。フレイア様のみならず、人の子には必ず天職が与えられるね。……まぁ、3歳までの行いとかから自動選別されるシステムなんだけど」


 後半小声だったのは、多分マリエさんを気遣ってかな。

 成る程ね、3つ子の魂百までって事か。


「……ちなみに、俺の天職は? 俺、なんも言われてないんだけど……」

「仕方ないなぁ……。ボクの瞳で鑑定してあげるよ」


 カーラの碧眼が一層煌めき、俺達を見つめる。

 なんだこいつ、人間鑑定機みたいな能力もあるんか。戦乙女って便利だな。

「ふむふむ。主席のマリエは『プリースト』、次席のニーナは『盾職』だね。――暁は、『企業戦士』……。――『企業戦士』」

「なんで俺だけ労働者が天職なんだよ! 他にもあんだろ、『ソードマスター』とかさ!」

「仕方ないじゃないか! 暁はフレイア様が管轄する地域から来てないんだから! 逆にいうと、これからどこかしらの企業で何者にでもなれる職業ってことだよ!」


 こいつ、無理矢理前向きな方向へ話をもっていきやがった!

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