第10話

「――さて、教室中のみんな! ここにいる不破暁の授かった〈ギフテック〉は『女性パーティーメンバーの強化』という前例のないハーレムチートスキルだよ! このただ生存する事さえ厳しい世界で、自身の生存可能性を上げたいっていう女生徒はどれだけいるかな!?」


 途端に、俺を見ていた生徒達の訝しげな目が一変した。――特に女生徒の。


「はいはいはい! 私、パーティーメンバーに入ります!」、「私も、生き残りたいし強くなりたいんです!」、「強化!? 前衛じゃなくて、サポート職の救世主様って事だったのね! 私も入る!」


 女生徒の大半が手を上げて『是非パーティーメンバーに』と名乗りをあげた。

 現金だなぁとは思いつつも、国家破産――破滅寸前で、いつ自分も魔神軍に殺戮されるか解らないという国らしいし、当然の反応なのか。


「まあまあ、みんな落ち着いて。パーティーは原則4人以上だし、焦らない事だよ。――とは言え、多すぎても動き難いからね。主席のマリエと次席のニーナは確定! 他は後から実力を示してね!――何てったって、魔神を倒さなきゃいけない精鋭パーティーなんだからね!」


 いい気になったカーラが手を振りながら、意気揚々とそんな事を言う。


「……でも、2人の能力も魔神軍を相手にするにはまだまだ足りないね! これから課外授業に出て、ガンガン強くなってもらうよ!」

「――課外授業? もしかして、実戦にいかせてもらえるの!?」

「え、実戦……ですか? それは、実技試験の大幅加点になって成績も上がりますけど……。1年生の私達には荷が重いんじゃ……?」


 好戦的に目を輝かせるニーナとは対照的に、マリエは不安げな表情だ。

 なんだろう、マリエの護ってあげたくなる感じ。――率直に言って、とっても可愛いです。


「君たちの言ってることも解るよ。――そこで、今回はカーラ教官がまず2つの実戦課外授業をもぎ取ってきました! 全てはボクの信頼の成せる技だね!」


 なんか誇らしげに言ってるけど、それって降りてきた時に使った洗脳で得た信頼だよね?


「えっと、まずは――『定期的に敵から攻められている砦の守護と、食糧などの補給物資の定期運搬』だね。うん、これは防御性能と突破性能が高いニーナが適任だね!」

「任せてっ!」

「いや、敵に攻められるんだろ!? 俺、すぐに戦えないからここに通ってる事を忘れてない!?」

「安心して。暁はニーナと一緒にいるだけでいいんだよ。戦い方なんて砦に着くまでの道中とか砦で兵士に教えて貰えば良いんだよ。それに暁は、あの学園長秘書に実技でノルマを課されてるでしょ? これも実技業績のノルマに加えてあげるから!」


 天真爛漫に笑いながら、カーラはドンッと背中をおしてくる。

 よろけた俺を抱き留めたニーナの顔が僅かに紅潮している。

 俺の顔も、赤くなりそう。

 ――肋骨が勢いよく顔に当たって、痛いんです……。

 課外授業に行くまでに成長か……。まぁ、そういう、ものなのかな。

 百聞は一見にしかずとも言うし。

 成長するまで待ってくれないのは、社会も実践も一緒なのかも知れないな。

 ノルマを達成できないで最前線へ異動命令とか本当に勘弁。――仕方ない、行くか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る