ビッグエゴ
こんにちは。
Big egoの回です。カラオケ屋さんではございません。
あまりにも自我が強すぎてプライドが高すぎる、うちの会社のおじさんのお話です(相変わらずの愚痴オンリーご容赦ください)。
弊社のとあるチッサイオッサン、推定四十代前半。略してチッサン。非常にご自身の経歴や資格、お仕事に誇りを持っていらっしゃる。それは全然いいんですが、端々に見える「見下し」思考が鼻につきます。特に女性は、組み敷くものと思ってらっしゃいます。私(164センチ)よりはるかにチッサイのに。あ、独身でいらっしゃり、フェイ〇ブックの友達の数=人脈と思っている自意識過剰タイプです。趣味はバイクと一眼レフ。これもまた鼻につきますが、いっつも一人旅のようです(お察し)。
さて、そんなチッサン。まあ私の話は絶対に聞きません。見下してるから。
ある日のこと、チッサンが五千円の伝票を、間違えて切りました。たかだか五千円と思うでしょうが、弊社から見るとお相手は会社規模が小さな会社さんで、支払い遅延は『下請法』に見事に引っ掛かります。さらに言えば弊社の経理システム、本社と繋がっておりまして、ガッチガチのガッチガチです。例え一円でも、設定支払日を動かすとなると、本社の稟議まで通します(どことは言えない国々で不正のオンパレードだから)。
今日、締め日。
つまり、速攻動いて修正伝票を上げなければ、詰む。
で、弊社のポンコツ経理は『出された伝票を処理する係』なだけなので、何もしません。
動くのは管理部門たる、ウチ。なぜじゃ。どしてじゃ。ヨボヨボ。
当然のことながら、「急いで再起票してください!」とチッサンに連絡を入れる。が、「出張中です」とのお返事。
ええ。ええ。大声で言わせていただきますね。
出張中だから、なんやねんっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ぜーはー。
「いいですか。法令違反になるんですよ。今すぐWi-Fi繋いでシステムログインせえやボケカス」を百重のオブラートに包んで送って差し上げました。ご丁寧に、稟議の承認者もCCに入れます。かくかくしかじかで、重複発行ではないので起票され次第ご承認ください、で。なんてヤッサシー私(自画自賛)。
ところが。
「ちゃんと検収処理回覧しましたが? それで進めてください。出張中なので、忙しいんですが」
――殺意。
「パリピ課長~こりゃだめだ。私が代理起票していいですか(もちろんずっとCC入れてある&管理部門なんで権限いっぱい持ってる)」
「いいよー」
なにせ今日が締めである。逃したら法令違反か、ギッチギチの本社稟議かの二択しかない。もちろん後者だが、申請全部英語で書くんだぞボケカス!! しかも三部門回覧だぞ!! やってられっか!!
わたくし、二分で起票、承認者にシステムリンク送る、即承認、相手企業さんに連絡入れて伝票番号差し替えしてもらう。四時にデータ到着→事なきを得る。
「お疲れ、えーじゅん」
パリピ課長、そっと机にチョコを置く。食べる。太る。ふい~。
だが、事件はそこで終わらなかった。
そもそも事の発端は、チッサンが異動したにも関わらず、稟議システムの異動申請をしていなかったのが原因だ。
だからわたくし、ご丁寧に代理起票にて処理完了&異動申請のご案内をメールしたよね。大人なんで。
そしたら、なんて返って来たと思います?
「もう伝票起票しないので。僕は申請不要です」
――???
――??????
ちょっと意味が分からない。使う使わない関係なくね? 異動したら異動申請するよね? 普通だよね? あれー?
仕方ないのでメールラリーを何度かしてみるも、
「いえあの、異動されたら申請いただくプロセスになっているのですが」
「不要です」
「承知しました。では、こちらからのご案内をこれで終了させていただきますが、以降何らかの不具合が出る可能性があることを予めご了承ください」
って感じで締めました。
いいよいいよ、もう勝手にしなよ、です。
そしたら、隣の席からパリピ課長に「えーじゅん、やべえ」と小声で呼ばれましたよね。
「え。さすがに口調きつすぎましたか?」
「ううん。言ってること全部正しいし、きつくもない。けど見てこれ」
「?」
そっとパリピ課長の横からラップトップ画面をのぞき込むと――チッサンから怒涛のチャットの嵐。私の対応へのクレームの嵐!
メールの一行一行を引用して、全部突っかかっている! 全然忙しくねえ、暇じゃねえか!!
「クレイジーっすね」
「クレイジーだね……せっかくやってあげたのにね」
「えーっと、どうしましょう?」
「えーじゅんに改善指導しろって書いてるんだけど笑」
「はあ。どこ改善しましょう?」
「……こいつの対応しなくていいよもう」
「了解っす。改悪っすね笑」
「笑」
さらに、後日談。
「えーじゅさん、ちょっといいすか」
向かいの席のパイセンに話しかけられる。ちなみに、めっちゃイケメン子持ち愛妻家ジェントルである。取引先からは王子と呼ばれている。
「なんすか」
「チッサンから、伝票起票できないって僕に問い合わせきてるんだけど」
「ぶっふ」
コーヒー吹いた。
「ちょ、大丈夫!? ごめんね!?」
「パイセン悪くないっすぶふふふふ」
「やっぱ何かあったよね!?」
「ぶふふふメールてんそう、しますぶふふふふ」
もちろん、全部転送したった。
「……やっべえ」
「でしょ」
「ぶふ、ぶふふ」
パイセンの肩が、パーテーション越しにびっくりするぐらい震えている!
「読めば読むほどジワるねこれ」
「そんな、スルメじゃあるまいし」
「くくくく……えーじゅさん、申請方法のリンク、教えて」
「そのメールの下に全部書いてあるっす!」
「ぶふふふふコピペし、とくねぶふふふっげほごほっ」
結局チッサンが申請したのかどうかは、知らない★
さらにさらに、後日談。
パイセンが「チッサンまじでやべかった」と思わず素で話しかけてきた。
「どしたんです?」
「NDA(機密保持契約)ない相手に、勝手にアレアレでコレコレ」
「あーあー! やっちまったなー!」
「寸前で止めたけどね」
「さっすがパイセン(止めなくてよかったのに)。あの人、私にいっつも『俺は数千万の改善活動やってんだ』ってマウント取ってくるんですけど、そんなレポートなかったっすよね~」
何を隠そう、わたくし、管理部門在籍である。全部レポート、あがってくる部門なのである。
「正直、僕も聞いたことないんだよね、チッサンの成果」
「……まじすか」
パイセン、そっとコーヒーおごってくれた。さすが王子。
ちなみに大層な資格をお持ちのチッサン、社内研修俺が講師でやるぜ! っていう案内を出すけど、いっつも受講者ゼロである。
虚しいリマインダーメールが届くので、速攻そっとゴミ箱に入れる。
過ぎたるプライドは、身を滅ぼすんじゃないかな、というお話でした。
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