ラブアタッカー・ラブハンター
Love attacker Love hunterの回です。
(私信:ミト様、タイトルご提供ありがとうございます。)
このエッセイをお読みの皆様ならお馴染み、キャラの濃い弊社にて、実際に起きている出来事です(身バレ防止フェイク入れております)。
あ、ただの個人的な愚痴です! そんな人もいるのね~と笑って読んでいただければ幸いです。
さて、前回のエッセイで(身バレを避けるため、すぐに非公開)、パワハラ部長のオキニさんが主導していたはずのプロジェクトが頓挫していると書きました。その後、正式にパリピ課長と私で請けたわけですが。ああ大変。すごい大変。でもゴリゴリ進めて目途が立ってきてます。いやっほぅ~。
事務仕事や資料作成で物理的な手が足りないので、短期派遣社員さんに来ていただくことになり、私のサポートということで入っていただきました。
忙しい部署なので〜とか、私の指示でこういうことをしていただきますとか、詳細説明をして「エクセルもパワポも得意です!」とご承諾いただけたので、オフィスでは私の左隣の席に座っていただいております。独身でアラフォー、残業も全然オッケーです! とやる気に満ち溢れた方だったので、安心していたのですが、半月前からちょっと様子がおかしくなってきました。
仮に彼女の名前をサプリさんとしときます(理由は後述)。
私、パリピ課長の部下になって五年ですから、まぁ彼のことは色々存じ上げております。パリピというからにはオープンマインドな人なので、元カノやら恋愛遍歴やら家族構成やらはある程度知っているし、ホームパーティに招かれたり、仲間内でのBBQも年数回プライベートでやります。
かといってベタベタしない、ほど良い距離感です。
さらに仕事での無駄が嫌いなので、次に課長が大体どういう資料が欲しいのかとか、会議室の予約とか、は割と先回りする感じでやっています。仕事中はチャンネル三つ並行処理しているので、自分の作業をしつつ(契約書の精読など)、パリピ課長の動向を右耳で窺いつつ、未来に起こりうる作業予測と工数の見積をする感じでしょうか。
で、よく「えーじゅんあのさぁ、次の会議って部屋」「取ってます」「資料って」「保存してリンク送りました」て熟年夫婦か?(きもい)的な会話になるわけです。
どうやらサプリさんは、それがお気に召さない。ぷりぷりなさる。
オフィスでは、私の左隣がサプリさん、真ん中に私、右隣というか課長席(お誕生日席みたいな)にいるパリピ課長、で座っています。
なのでサプリさんが課長と話すためには、私の背中を超えていかねばならない。これもお気に召さないようで、いちいち「んもぅ」と小声で言って席を立ちます。それを聞いた隣の部署の人に「なにあの人。牛?」って言われてコーヒー吹きそうになりました。腹筋が大変なことに。あぶなかったぁ!
さて、サプリさん呼びになった理由を述べます。(本当は「牛」呼びになりかけて、それは人としてどうかと思って止めました。)
初出勤から一か月ぐらいは、普通だったんです。
エクセル得意! ふんすふんす! って言ってた割に四則演算とIF関数だけで乗り切ってるなぁ~とか、のちほどパワークエリでデータベースに繋げるから列変えないで、って言ったのに平気で並べ替えるとか、オートフィルタしたままのファイルを見て「データが見当たりません! えーじゅさんが消したんじゃないんですか!」って詰め寄られたりして。ちょっと匂うところはありましたけどまぁ許容範囲です。
お仕事を頼むときも気を遣って、背景や経緯も含めて丁寧に説明しました。スキルを考慮して納期にもバッファを持たせて。
服装はちょっと謎で、派手な色柄のフリルブラウスがお好きなようです。帰りにフラメンコ教室に通ってるんだな、知らんけど、ってスルーしてます。
それでも、ある日からいきなり私へのあたりが強くなったんです。なにゆえ? わたくし、なんにも変わらなくてよ。隣でもーもー言ってても、お腹減ってるのかな~って思ってましてよ。
「課長~、最近サプリさん、私へのあたりキツくないすか?」
ランチで愚痴ってみたところ、途端にキョドるパリピ課長、四十歳。
「ごめんえーじゅん……それ、俺のせいかも……」
「は!?」
「いや~、その、ね、楽しく仕事して欲しいからさ、『目が綺麗ですね』って褒めたんだよ」
はい、デター。女性を無駄に褒めるアメリカンスタイル(血は純粋な日本人)。
「……はあ。式はいつですか?」
「待って! ちがう! 褒めただけ!」
実はサプリさん、歓迎会で酔った時に、アラフォーなので婚活がんばってます! と明言されてましてね。アプリとかパーティとか積極的に色々やっているそうなのです。おかげで無駄に知識が増えました。
独身貴族なマネージャーに目が綺麗なんて言われた日にゃぁ、闘争心に火がつくに決まってますよね。
興奮した猛牛さんの目の前で、無防備に赤いフラッグ持ってニコニコ立ってるようなもんですよね。
「マタドールおつかれっす」
「ちがうってば! 俺そんなつもりないって」
「はいはい、迂闊迂闊」
「聞いてよえーじゅん!」
「なんすか。まさかものっそいアッピールが」
「そーなんだよぉおぉ」
「エンゲージ買いに行っちゃう感じ?」
「いやほんと恐ろしいんだけど」
課長いわく、仕事の話をしているときに、ものすごく上目遣いでパチパチされるのが気になって、まじまじと目を見ちゃったんだそう。
確かにぱっちり二重で、マツエクとか気を使ってて、眉毛もこだわりのアートメイクらしく、目元は目を引く感じです。(私からすると、綺麗というよりサイコさん? な感じですけど。このニュアンス、伝わります?)
それで、バッチリ目が合っちゃったもんだから……だそうです。
ダイエット頑張ってます、お肌もお手入れしてます、おすすめのサプリがあるので持ってきますね! と言われて社交辞令ですごいね、ありがとーって言ったら――
「後日さ、持ってきたんだよ。開封済のサプリ」
「え……なにそれこっわ! めっちゃこわいっす!」
「そうなんだよ~。残り二回分なんで、試しに飲んでみてください! ってさ~」
「むりむりむり」
「だよね、俺おかしくないよね? 薦めるなら新品未開封のやつ持ってくるよね?」
「いやいや、そもそも論ですってば。距離感おかしい」
「やーべぇ、俺、詰んでる?」
ちなみに業務連絡のラ〇ンも、ものっそい長い上にアイコンとかキラキラいっぱいで読みづらいらしい。
『風邪ひきました、今日休みます。申し訳ないです』で十分じゃね? 上司に絵文字使わなくね?
「で、ご両親への挨拶いついくんすか」
「……まじでやめて」
「冗談で済んだら良いですね〜だから私に謎なマウントするんすね。どうぞ差し上げます! 席替えいつします?」
「いやしないって。早急に業務割り振り考えるね……ゴメン」
「なら私の指揮下じゃなくて、課長に直接レポートするように変えてください。めんどいんで」
「そーするわ。てか、婚活女子やべくね? 怖すぎんだけど」
「スペック
「ふぁー!? 今ので気力使いきったんだけど!?」
「午後一で稟議のレビューおなしゃす(ガン無視)」
「はあ~わかったよ~」
パリピ課長と私はただの上司と部下で、それ以上でも以下でもないです。
むしろ恋愛ぽんこつ上司の愚痴聞きすぎて
私は縦も横も心も大きくてフカフカの男性が好きなんだ! 強面ならなお良しだぞ! 包まれたい!
まあこのプロジェクトの間だけの短期派遣さんだし。
仕事ができて良い人なら長くいてもらおうと思っていたけど、これじゃあね……って割り切って毎日頑張ってます。
他にも「あの人いろんな人に話しかけててすごいね」って営業さんに引き気味で言われましたよ。
なんと、給湯室とかカフェテリアで、めぼしい男子にお目目パチパチで声かけまくってるらしい。すげえ。
でもさぁ。ラブアタックもハンティングも、いい加減にして欲しい。ここオフィスですから。仕事してよ! と言いたい私でした。
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