第11話「ゴブリンの肉がゴミ過ぎる」


 その夜は適当に見つけた一泊銅貨3枚の宿屋に泊まり、夜を明かした。


 翌日、ガイアスさんのお店のところでそろえた武器防具で身を包み、冒険者ギルドに向かった。


「おいおい、あいつが噂の魔法が使えない新人だろ?」

「あぁ、あのソロのエリーを白狼の群れから救ったってやつ」

「白狼って俺達みたいな鉄翼の冒険者でもやっとくらいの魔物だろ? まじかよ」

「やめろ、聞こえる」

「まぁ、あいつも西から来たらしいし、どうせシュナイダー家に色々ゆわれたんだろ。気持ちは分かるぜ」


 と、ギルドの扉を開けて早々そんな風に言われようだった。

 魔法が使えない俺に対しての差別――とは言わないまでも、やはりこの世界で魔法が使えないと言うのは異質な事らしかった。


 エーリカさんやギルドの受付嬢の人が優しすぎてあんまり気にしていなかったけど、そう考えるとやっぱりこっちの地域でそれなりには偏見が残っているらしい。


 だいたい、それに誰が一体俺が魔法が使えないことを言いふらしたのだろうか。


 俺が魔法ができないことを伝えているのは2人だけ。

 エーリカさんが言いふらすようにも見えないし、それなら受付のお姉さん? ただ、それも少し考え難い。


 ただ、正直バレてしまったものは仕方がないし、誰が言いふらしたにせよ俺が目指すところは変わらない。


 この科学スキルを駆使して、とにかく異世界を楽しく生きていくッということが出来ればそれでいいんだ。


 そう自分に言い聞かせて俺はそのままクエスト依頼が張られてある掲示板へ移動した。


 正直な話、何でもよかったが最初なので比較的に難易度が低そうなのを選んだ方がいい気がして、俺は「ゴブリン大量発生による駆除活動」にした。


 ゴブリンと言えば、どんな世界でも雑魚モンスターの一角を担うもので、案の定この世界でも同じらしく俺のクラス「白翼」でも受注できるらしかった。


 受付にいき、依頼を受けることにして、俺はそのまま依頼書に書かれた村の方まで馬車を使って移動した。


 





 ——そして、依頼書に書いていた村に行って始まりの森と言われるアルテタの東側に位置する森から飛び出てきたゴブリンを見つけてからかれこれ三時間後。


 会得した科学スキルの火炎放射を使いまくっていたせいで、ゴブリンの死骸が自分の背よりも高い山になっていた。


 いや、別にゴブリンに対峙していたのは俺だけではなかったがそれにしてもな量になってしまった。


 そんな死骸を前にギョッとしていた俺に対し、同じく一緒に戦っていた村の魔戦士の人が話しかけてきた。


「き、君!! 凄いねこの量! 一体どんな魔法を使ったらこうなるのか……それに君の使っていた火の魔法! この周辺であんな大掛かりな魔法を使える人は見たことないよ!」


「え、あぁ……そのまぁ、ずっと訓練してて……あはは」


 興味津々というか、これまた面白そうな目で見つめてくる兵士さんには悪いけど、正直説明するのも面倒でそういうことにしておいた。


「いやぁ、こっちとしてはありがたくてねぇ。いっつもこんな広い村なのに2,3人で防御してるからいつのまにかMPも体力もなくなって……それに最近は妙に大量発生してたからね。助かったよ」


「まあクエストなので全力でしますよ。怪我してる人とかはいませんか?」


「ひとまずは! 君のおかげでみんな無傷だよ!」


「なら良かったです」


 感謝されるのはやっぱり嬉しいものだ。


 前の世界の俺も、この世界の俺も、あまり人とうまく関われていないせいで感謝なんてほとんどされたことがないし、ちょっと新鮮だった。

 


 それじゃあどうしようかな。


 アルテタから村までは30分くらいだったし、そろそろ日も暮れてくる時間だ。それにゴブリン倒せたってエーリカさんにも伝えたいし……。


「君、一応この金具類は持って帰りなさい」


 そんなふうに考えると兵士の1人がそういった。


 装飾類?

 指さされた方に目を向けると死んだゴブリンたち。


 その首や腕を見てみるとネックレスや指輪やブレスレットなど金属でできた軽い装飾品が付いていた。


「あの、これは……?」


「この装飾品はギルドでかなり高く売れる。白翼クラスのクエストなら一番高額だぞ?」


「そうなんですか? でも、こんなにいっぱいもらって……」


「アイテムボックスはあるか?」


「ありますけどあんまり多くなくて……」


「そうか、それなら袋をやるからそれで持ち帰りなさい」


「ありがとうございますっ」


 そんなわけで装飾品を貰った袋に詰め込んだ。


「あと、うちの嫁が使ってくれた唐揚げだ。元気になる、食べなさい」


「あ、そんなことまで……」


「いいんだよ、ほら!」


 しつこく言われて俺はそれを受け取った。


 正直何も気にせずに口に運ぶと鶏肉のささみ肉のようにパサパサしていて美味しいとは言えなかったが笑顔で返事をしておいた。


「ちなみになんの肉だったんですか?」


「ん、あぁ。この辺の森で取れるゴブリンの肉だよ」


「え?」


 その後、急いで村を飛び出して戻してきたのは言うまでもないだろう。

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