サイバーグリーン~佐々木 麗子~


*今回はサイバーグリーン、佐々木 麗子の一人称視点で物語は進行します。



 サイバックパークでの事件。



 ジェノサイザーやサンドラとの戦い。  



 私は少しばかり無力さを痛感している。


 ヒーローになった物の、肝心な大勝負では達也に助けられている。


 暇さえあれば答えを見つける為に、墓前で父親に語りかける。


 私の父は新年戦争で死んだ。


 私達家族を置いて。


 家計を助ける為に高校生になったらアルバイトしようと思っていたが家族が反対した。


 ヒーロー活動はもっと反対だった。


 父の様になって欲しくないのだろうし、ジェノサイザーの一件で囚われの身となる無様を晒してしまった。


 母や妹、弟が心配するのは当然だろう。



 せめて家族を安心させられるぐらいに強くなりたい。



「もうへばってるのか貴様!?」


「すいません・・・・・・」


「謝る暇があるなら体を動かせ!!」


「はーい・・・・・・」  


「情けない声を出すな! そんなだから何時までも前線に送り出せないんだ!」


(本当に相変わらずね・・・・・・)


 サイバックパークのトレーニング用の運動場。

 そこでジャージを着たサイバーブラック、中條 霞が竹刀片手に楠木 達也をシゴいていた。

 とてもジェノサイザーを倒した立役者には見えない有様だ。


 中條 霞は私達にかなり厳しいが特に楠木 達也に対してはとても厳しい。

 正直サンドラ戦の後だと、八つ当たりにも見えてしまう。


「ちょっと中條さん、あまりにも無茶すぎるわ」


「白墨、敵の情けを期待するのは半人前の証だ。それに何時までこんな子供に頼るつもりだ?」


「それは――」


「なら話は終わりだ――おい、休むな! っておい!?」


 あ、達也が倒れた。

 薫達が悲鳴を挙げている。 



 珍しい事に、中條 霞は工藤司令に怒られていると言う光景を目にする事になった。

 達也が運び込まれた医務室前で霞と司令が対面する形でだ。

 ちなみに達也は過労で倒れたとの事らしい。


「お前さんの言いたい事は十分に理解している。だがな――」


「ですが、子供だからと言って甘やかしてはへたに戦果を挙げている分、よけいに――」


「確かに楠木 達也は戦果が頭一つ飛び抜けている。初戦闘で敵怪人を撃破し、幹部クラスを独力で追い返し、三回目の戦闘では一般人の手を借りながら怪人を撃破、ジェノサイザーとの戦いでは多大な貢献をし、先日のサンドラでの戦いではほぼ独力で撃破した」


 すらすらと達也の戦果をピックアップして述べる。

 表情は変わってないが褒め称えているようにも見える。


「だから尚更――」


「調子に乗って気を引き締める為にスパルタ指導を行っていると言う事だろう?」


「ならばどうして――」


「新年戦争前やあの同時襲撃の前ならば君が正しかっただろうが今は彼も貴重な戦力だ」


「そう言った態度を取れば付け上がる結果に――」 


 言いたい事は分かる。

 どちらも正しい。

 だからこうして意見がぶつかり合うのだ。

 

「では聞くが達也はどう見えるかね?」


「な――」


「そりゃ多少の不平不満は抱えているだろうが、君のシゴキに逃げ出さず耐えているじゃないか。それでも足りんかね?」


「そ、それは・・・・・・」


「君が空鳴君と、ある派閥と接触しているのも知っている――理想に燃えるのは結構だが、理想を無理に押しつけるのは悪の侵略者と変わらんぞ」


「何の話ですか――」


「シラを切るのなら別に構わん――」

 

 そう言い残して司令は去った。

 何だか聞いてはいけない話を聞いてしまった様に感じてしまう。

 

「何をジロジロと見ている?」


「いえ、別に――」


「ふん・・・・・・」


 そして中條さんも去って行く。

 何処か彼女の背中は寂しげに見えた。 

 


「ふーん、そんな事があったのか・・・・・・」


「ええ、だから今日は休みよ」


 私は学園の屋上で結城 浩とベンチで隣りに座って話をしていた。浩も私も弁当だ。

 ゴーサイバーの担当区で最近怪人の無秩序な破壊活動も少なくなっている。その為学園でゆっくり出来る時間も多くなって来た。

 デンジダーの目撃報告を聞く限り、黄山さんも頑張っているようだ。


 屋上に集まるのは大体昼休みでシートを敷いて弁当を食べるのが日課だ。

 雨の日は教室らしいが。

 達也によると四人体勢で出動していた頃、私達の帰りを待つ時の習慣がそのまま身についてしまったらしい。


「で? 達也は学校来て良かったのかよ?」


「さあ?」


 シートの上で薫と芳香に挟まれ、何やらラブコメ漫画みたいな事をしている。

 正直家でゆっくり休んでいた方が良かったのでは無いかと思えた。


「しかし達也なぁ・・・・・・正直ゴーサイバー辞めると思ってたんだが続けるとは思わなかったな」


「昔からの夢だって薫から聞いた事があるけど・・・・・・」


「実は辞める事も考えたらしくて、工藤司令とも相談した事もあったらしい。薫や芳香をこれ以上戦いに巻き込むんじゃないかってな」


「確かに・・・・・・」


 達也が戦うのならあの二人は戦うだろう。

 その辺りの人間関係は把握している。


「だけど、あの胸の大きい外国人の姉さんに言われて残ったんだそうだ」


「ナオミさんが?」


「ああ、詳しい理由は教えてくれなかったけどな――少なくとも色仕掛けでって言う雰囲気じゃ無かった。あ、これ二人には内緒な?」


「分かった」


 司令の話といい、何か防衛隊の中で起きようとしているのか?

 不安が過ぎった。




 私は薫と芳香と一緒にお出かけした。

 この三人で行動するのは久しぶりな気がする。

 今近所のショッピングモールに来ていた。賑やかで人で混雑している。

 

「偶にはこの三人もいいわね」


「うん――その――芳香ちゃん・・・・・・」


「達也の話は今回ぐらい置いときましょ――」


「ありがと」


 と言った感じのやり取りをしている。 

 服とか見て回っているが男は女の子のファッションには無頓着な所があるのだ。

 それに達也は少々オタク気質な所がある。バーンといっそコスプレした方がいい気がするが・・・・・・


「麗子はやっぱ男物の格好いい系の服が似合うわよね?」


「え~でも、ワンピースとかも似合うと思うよ?」


「私はあまり――」


 防衛隊からの払いは良いが父が亡くなってからと言う物、節制がクセになっている。


 年頃の女の子みたいにあんまり無駄な消費は避けて、出来るなら妹弟に不自由させたくないと思うが・・・・・・中條さんと達也を見ていると、どうもそれで良いのだろうかと思ってしまう。

 と言うのも我が家は母親も働いていて、本当は私が下三人の面倒を見ないと行けないのだが私も防衛隊で働く事になってしまった。母親は働かなくてもいいぐらいの稼ぎはあるが、世の中には体面と言う物があるのだ。流石にどうこう言えなかった。


 今は中学生の妹が面倒見てくれているが本当は彼女も遊びたいだろうに・・・・・・つまり何を言いたいかと言うと・・・・・・私ここで遊んでいて良いのだろうかと言う事だ。


 だが、本当に楽させることが本当に良い事なのだろうかと思う事もある。

 学業や部活動を疎かにさせてしまうのはともかく、今の私の様に稼いだ金を使ってこうして遊んで――まあ適度な遊びは良いだろう。


 しかし汗水流したお金を自由に渡して遊び回らせる暮らしはどうかな? と思ってしまう・・・・・・しかしやり過ぎると中條さんと達也みたいになる。

 

 妹達が不自由していた反動で遊び人になる可能性もゼロではないが・・・・・・ともかく何事もバランスが大事なのだろう。


 そうだ。土産に何か買おう。そうしよう。

 

「何か真剣に考え込んでたけど大丈夫?」


「麗子ちゃん、もしかしてこう言う場所嫌い?」


「いや――その――妹達の事を考えてた。ちょっとプレゼント買おうかなって」


「プレゼントか~難しいわね」


「そうだね――確か中学生と小学生の子達がいるんだよね?」


「うん。だけどあんまり高い物はちょっと――」


「あ、なら一つ良い手があるわ」 


 と、芳香は何か思いついたようだ。そう言えば薫は姉が、芳香は弟がいると聞いたが・・・・・・


「怪人だ!」


「逃げろ!」


「直ぐに防衛隊に連絡しろ!」


 そう思った矢先の事だ。

 外が騒ぎになった。

 私達は顔を見合わせると外に出る。


「行くわよ!」


「うん!」


「分かった」


 そして三人は掛けだした。




 現れたのは三体の怪人とナイフを持った見た事もない戦闘員達だ。


「何こいつら? リユニオンの戦闘員じゃない?」


「新しい組織なの?」


「待って、資料で見た事がある――昔、天照学園で出現していたデザイアメダルの戦闘員と怪人よ」


 私は分かり易く指を差し示す。

 その先には戦闘員の左手首、ウォッチらしき変身アイテムにメダルが差し込まれていた。


「デザイアメダル?」


「新年戦争以前、天照学園で出回っていたメダルよ」


「天照学園ってあの世界最先端って言われている教育機関の?」


「そう。後から聞いた話だけどサイバーレッドにはそこの技術が組み込まれているの」


「じゃあアレはヒーローってわけ?」


 芳香は疑問を持つが・・・・・・


「いや違う。説明省くけど、アレは一種の麻薬みたいな物よ。使用すると攻撃的な性格になり、最終的に無差別な破壊活動を行うの。しかも誰でも使える代物だから性質が悪いの」


「正に犯罪組織に打って付けのアイテムってわけね」


 私の説明に芳香がそう評する。


「とにかく戦わないと!!」


「そうね」


 薫の言う通りだ。私達三人は変身する事した。

 薫はサイバーピンク。

 芳香はサイバーブルー。

 私はサイバーグリーンになる。

 それぞれ剣に槍、そして私はトンファーを持つ。

 

 戦闘員達や怪人は破壊活動を止めて、一斉に此方に向かって来た。

 先ずは戦闘員からだ。

 ナイフで攻撃してくるが大振りの力任せで冷静に対処すれば正直恐くない。

 カウンターにトンファーの一撃を入れる。

 

『こいつら倒しちゃってもいいの?』


『資料によれば問題ない! デザイアメダルはある一定ののダメージを受けるとメダルと人体が分離される!』

 

 そう言ってトンファーで防ぎ、殴り、時には蹴りを行って倒す。

 薫は見掛けによらず力と素早い剣筋で敵を薙ぎ倒し、芳香も槍――外見は十字の槍でスピードを活かして戦国時代の武将の様に薙ぎ払って行く。


『あ、本当に解除された・・・・・・』


『見た所私達と同い年ぐらですよね――人相が悪いけど』


 芳香の言う通りだ。

 失礼だが金か何かで騙されましたって言う言葉が頭を過ぎる。

 

(ともかく怪人を相手しないと)


 戦闘経験値だけで言うなら私達は達也よりも断然上だ。

 あっと言う間に戦闘員を倒し切り、三体の怪人と向かい合う。

 三体の怪人は外見から察するにオレンジ色のカニ、灰色のサイ、ブラウンのシカ型である。

 それぞれ腕のウォッチにはメダルが装填されている。


 三体が奇声を上げて飛び掛かって来る。


 私はカニ型を相手する事になった。

 サイバートンファーで殴りつける。

 火花が散るが構わず両腕の大きなハサミをハンマーの様に叩き付けてくる。

 

 芳香にはシカ型。

 槍を持っていて槍同士の獲物を持った同士の戦いとなる。


 そして薫はサイ。

 此方は相手のパワーと頑丈そうなボディに剣術で上手く対抗している。  

   

『エクス(X)スラッシュ!!』


 サイバートンファーの出力を最大限にしてカニ怪人の胴体を両腕で下から袈裟にX字に切り裂く。

 エクスクラッシュは一種の繋げ技だ。

 

『ブイ(V)スラッシュ!!』


 そして勢いよく、トンファーをV字に返して振り下ろす。

 二発の大技を食らってカニの怪人は吹き飛ぶ。

 だがまだ解除されないらしい。


『ライトニングザンバー!!』


 電気を纏ったトンフォーを高速回転させ、先程の大技二発で大きく損傷したカニ怪人の胴体を更に切り裂く様に抉る。

 そして最後は楠木 達也のサイバーキックを応用した技。


『ライトニングスマッシュ!!』


 電子クラフトの理論を応用して急加速させたトンファーの一撃を大きく削られた胴体に叩き込む。

 これでKOとなった。

 変身は解除され、ゴロゴロと転がり込みメダルが排出された。

 

『中々やるけど、こっちも終わらせるわ!!』


 芳香は相手の跳躍力を活かした一撃離脱戦法に苦戦している様子だった。

 だが彼女には手はある。 


『フリージングフィールド!!』


 地面に十字槍を突き立てると氷の針が彼女の周囲から飛び出した。

 跳躍して襲い掛かる途中だったシカ怪人は諸に食らって吹き飛ぶ。

 そこを好機と見た芳香がサイバーランサーを向けた。


『ブリザードミスト!!』


 氷の霧が勢いよく噴出される。

 起き上がったたシカ怪人の足を凍らせた。

 身動きが取れなくなる。


 サイバーランサーの刃が発光した。


『ブリザードウェーブ!!』


 極太の、氷の霧が混じった鎌鼬の一線が叩き付けられた。

 派手に火花散らしながら吹き飛んで変身が解除される。


『私だって強くなってるのよ!!』


 そう言ってどんなもんだいと、決めポーズを決める。

 

 最後に薫だが――


『私は強くなる! 達也君を守れるぐらい!』


 そう言ってサイバーセイバーでサイ怪人を突き飛ばす。

 薫も何だかんだで場数を踏んでいる。

 弱くないのだ。


『サイバーセイバー、私に力を!!』


『グルオオオオオオオオオオオ!!』


 剣が発光する。

 サイ怪人が突進してくる。

 

『サイバーセイバー! 乱舞の太刀!』


 電子クラフトを応用し、高速移動して相手の脇を一閃。

 更に猛スピードで二閃、三閃と斬撃を決めていく。


『サイバーセイバー最大出力!!』


 最後に真正面からサイバーセイバーの最大出力で一閃。

 爆発が起きる。

 そしてウォッチからサイのメダルと一緒に人が吐き出された。


 これで一先ず戦いは終わりだ。




 しかしそれを見ている影があった。


『ただの女子供とは思ったが中々やるな――』 


『それなりの場数を踏んでいるんだ。当たり前だ』


『それもそうだな』


 三つの影が遠くからジッとゴーサイバーを眺めていた。

 三人とも昆虫戦士らしいヒロイックな格好をしている。

 

『どうだ? 遊んでいくか?』


 銀色のカブトムシ型の戦士が訪ねる。


『止めておけ。作戦の調和を崩したくない』


 黄金色のハチ型の戦士が制止する。


『イズミの言う通りだ。今回はあくまでデーター収集だ』


 ハチ型の戦士に賛同する様に赤いバッタ型も続く。

 声からして女性のようだ。


『ふん。命拾いしたな』


 銀色のカブトムシ型の戦士が去って行く。

 二人も後に続いた。





 結局デザイアメダルの出所は分からず終いだった。

 そもそもデザイアメダルが猛威を震っていた時期、当時の日本政府が天照学園から強奪した研究成果を悪用して誕生させた負の遺産だ。

 多くの犯罪組織に出回り、新年戦争を経た今となってはどれぐらい世界中に出回っているか不明な状態になっている。


 その辺りの調査は防衛隊の諜報部任せになるだろう。


 だがそんな事より私、佐々木 麗子は困った事になった。


(まさかこう言う手段をとるなんて・・・・・・)


 まさか彼女達二人の家族の兄弟達のプレゼントの提案が変身姿で接すると言う物だった。

 いわゆるヒーローショーの終わりとかでやる握手会や撮影会とかの類いだ。

 成る程、金も掛からないし私の仕事の理解を深めてくれる良い機会だ。


 何故か達也も呼ばれていた。


(まあ偶にはこんな事も良いかもしれない)


 何処かヒーローとしての自分を晒け出すのが恐かった。

 だが家族達は受け入れてくれた。

 それが何よりも嬉しかった。


 END

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