外伝

帰って来たゴーサイバー

 ~これまでのあらすじ~ 


 地球中の全ヒーローが強大な悪を倒すために参加したと言われる新年戦争。


 その結果はヒーロー達が勝利したものの、参加した全ヒーローの九割が死亡ないし行方不明となる凄惨な結果に終わってしまう。


 多大な犠牲により、地球に平和が訪れたのも束の間――新たな侵略者リユニオンが現れる。


 リユニオンと対するはセイバーVと呼ばれる新戦隊だった。


 戦いは熾烈を極め、セイバーVは何度も命を落としかけたと言われる。


 その間、防衛隊は何もしていなかったわけではない。 


 通常兵器の生産や兵員の補充を急ピッチで進める傍ら、新たな新戦隊を複数同時に誕生させようとした。


 しかしその情報はリユニオンに漏れていた――


 最先端の科学を見せる目的で造られたサイバックパークでも密かにゴーサイバーを製造していた。


 そこへ偶然学校件学区でサイバックパークに見学した楠木 達也達は突如襲来したリユニオンにより、成り行きで新戦隊ゴーサイバーとなってしまう。 

 

 セイバーV同様に彼達は彼達なりの苦難や試練の連続だった。


 しかし、リユニオンの幹部シュタールが新年戦争以前に暗躍していた鉄十字軍の基地跡地からヒーローキラーとして恐れられていたジェノサイザーを拾い、リユニオンの技術で改修、強化したところから事態は一変する。


 ジェノサイザーの猛攻による各防衛隊基地は壊滅。


 そしてサイバーレッド、楠木 達也などの一部を除いたゴーサイバー達も破れ、囚われの身となる


 救出作戦は防衛隊とリユニオンとの一大決戦となり、その果てにゴーサイバーの救出に成功し、シュタールを撃破し、そして悪魔の様な強さを誇ったジェノサイザーを倒した事で戦いは終結。


 それでもリユニオンは壊滅したわけではないが、ゴーサイバーの周辺は少しばかり静かになった。

 この物語はゴーサイバーどころか防衛隊の記録すら抹消された、ある戦いの……と言うか惨劇の物語である。



 =サイバックパーク・コマンダールーム=


 嘗ては最先端科学を見せるアミューズメント施設だったが現在ではすっかりゴーサイバーの基地として認知された場所である。時折、どうしてそんな場所に秘密基地を作った? などと苦情や抗議が来たりするがもう頭を下げるしかなかった。


「何!? 宇宙船だと!?」


「はい!! 大型艦と小型船がワープアウトしました!!」 


 ゴーサイバーの司令官、丸刈りで三白眼の強面のヤ●ザ見たいな男、工藤順作(くどう じゅんさく)は突然の知らせに驚いた。


「迎撃態勢は!?」


「恐らく間に合わないでしょう。既に大気圏降下態勢に入ってますし、政治的な判断もありますでしょうから――」


 若い整った顔立ちの青年、寺門 幸男(てらかど ゆきお)が言う。

 戦術アドバイザーとして派遣されたが二回目のサイバックパークやジェノサイザーとの戦いではプロトサイバーで前線にでた事もある男だ。 


「ふむ――最悪の事態に備えて後手に回るしかないか……」


「司令! 小型の宇宙船は我々の町に進路を向けています!! 大型の宇宙船もそう遠くない位置に降下します!」


「なに!?」


 これが新しい戦いの幕開けであった。



 Side 楠木 達也

 

 体育の時間、楠木 達也がいる運動場に宇宙船が降下して来た。

 

 どっかのラブコメとかみたいに突然墜落して来た感じではなく、警告ありでユックリと降りて来てくれたので大惨事には至らなかった。

 

 宇宙船事態珍しくはない。

 

 月に王国だってあるし、異世界の存在も認知されている世の中である。

 宇宙船一つで騒ぎにはならない。

 

 現れたのはちょっと抑えめのピンクカラーの宇宙船だ。


 そこから宇宙刑事風のコスチュームをしたピンクのコンバットスーツを着た女性が現れた。


「ふう~何とか地球に降りる事が出来ましたね~」


「あの貴方は――」

  

 代表して達也が尋ねる。


「私は銀河連邦に所属する宇宙刑事ティアです」


 ヘルメットは緑のバイザーで顔半分を覆うタイプで口元は露出している。ヘルメットには猫耳のアンテナが付いている。

 髪の毛はショートカットの赤毛。

 スーツもピンク(部分的には白が配色されている)。

 ゴーサイバーのスーツと同じく、体のラインが強調されるスーツで胸も大きい。大体サイバーホワイトの白墨 マリアぐらいの大きさだ。


「つまり宇宙人ってこと? 初めてみた……」


 あまり馴染みがないので達也は物珍しい感じでジロジロとティアを見つつ話を進める。


「この星に危機が迫っています……」


「そういやさっき司令から巨大な宇宙船が来てるって連絡があったばっかだけど……」

 

 するとサイバーピンク、ブルー、グリーンの三人が来た。

 サイバージェットも同じタイミングで来る。


「達也君!!」


「薫――」


 黒髪のボブカットに髪の毛やや左側にハートのブローチがついたヘアピンを付けた可愛らしい少女が慌てた様子で現れた。


 サイバーピンク、桃井 薫(ももい かおる)。

 最近暇さえあればサイバーブルーことエヴァのア●カ似の茶髪でセミロングツーテールの少女、神宮寺 芳香とアタックして来るが今はそんなのどうでも良かった。

 

「どうした?」


「分からないけど、大型の宇宙船が町に降下して大変な事になってるの! ってその人は?」


 当然な疑問を宇宙刑事を眺めつつ投げかける。


「説明は後にするぞ。兎に角現場に急行するぞ」


 こうして新たな戦いに身を投じる事になった。





 そして町に辿り着いた一行が見たものは――


「ヒャッハー!!」

 

「水だ―!!」


「食料だー!!」


「お金なんてケツを吹く紙にもなりやしねえ!!」


「男は殺せ!! 女は犯せ!!」


 それを見た瞬間、達也は目と口を見開いて一瞬現実を疑った。

 ゴーサイバーは戦隊物である筈である。

 

 にも関わらず何時の間にか、世紀末臭が漂う光景が広がっていた。

 

 モヒカンやパイナップルヘアー、ホッケーマスクを被った凶悪な面をした屈強そうな体をした男達、バイク、手に持った鈍器の数々。

 リユニオンのナイフなどで武装した戦闘員も恐かったが此奴らは別のベクトルで……いや、普通のリユニオンの戦闘員より恐い。

 今もグラサンを掛けた男が火炎放射器で防衛隊員を焼却していく。


「……あの、これ? ゴーサイバーですよね? 何か北●の拳その物になってるんですけど」


 達也は早速涙目になって震え声になりながら横にいる銀河連邦のピンクの宇宙刑事に訪ねた。

 おかしい。確か作者は続編やるなら仮面ライダー●ギトのプロジェクトG4みたいな作品にするとか言っていた筈だ。

 それがどうだ。まるでオーストラリ……ではなく、世紀末救世主伝説になっているではないか。  


「現実逃避したい気持ちは分かります」


 宇宙刑事ティアは死んだような目で現実を見ていた。


「で、宇宙刑事さん。奴達は何者なんですか?」


 達也も痛い程に宇宙刑事の気持ちは伝わっていたがあえて尋ねる


「奴達は死兆星座の第三惑星、世紀末星からやって来た宇宙暴走族達です」


「ちょっと待て! ネーミングがおかしい!! てかヤバイ!? 集●社に訴えられたら負けるレベルだから!? つか宇宙犯罪組織とかじゃなくて宇宙暴走族って何!?」

 

 ツッコミどころが多過ぎて既に達也は半泣きになっていた。


 それにしても酷いネーミングだ。

 まるでモヒカ――では無く、悪党になる事を強いられている様な絶望的な世界だ。

 もしそんな世界に産まれたら、生きるよりも死んで人生やり直す事を選ぶであろう事を目の前で暴れ回る、出る作品を違えた悪党達を眺めつつ思った。 

 

「あの……何かある意味リユニオンよりも恐いんだけど……」


「薫。その気持ちは痛い程分かるよ……」


 震え声になって涙声になっている薫に達也は同意する。

 他の面々も「アレと戦うの?」と同じ様な気持ちになっているに違いない。 

 達也だって嫌だった。こんな北●の拳に出て来る悪党を相手にするなど。

 

「ともかく宇宙船を叩くわよ――」


 と長い黒髪の大人の女性、白墨 マリアが指を指した。

 そこには何処かで見た事がある大型の十字型の宇宙船――まるで聖帝十(ry――みたいな宇宙船だった。

 

「さてと、じゃあ久しぶりにやるか……」

 

 達也は変身する。

 他の四人も続いた。

 ヘルメット、スーツと次々と装着されてゆき、ゴーサイバーになる。

 今回は敵が敵だ。正直テンションが上がらない。

 

『そう言えばマリアさん。あの二人は?』


『既に現場にいると思うけど――』


『はあ……どうせ行っても遅いぞとか言われるんだろうな……だけど行かない訳にも行かないし行くか……』


 達也が言ってるのは新メンバーの二人の事だ。

 サイバーブラック、サイバーウイングスの女性隊員。

 しかし関係が上手く行かず、ギクシャクしてしまっているのが悩みの種である。


『ともかく行くぞ! ティアさんも協力お願いします』


「分かりました。頑張ります!」


 こうしてゴーサイバーの面々と宇宙刑事ティアは地獄――世紀末ワールドへと突撃開始した。



戦闘開始から数分後。


 ゴーサイバーは次から次へと湧き出るモヒカン達を前に後悔し始めていた。

 テンションがやたら高く、ヒャッハーとか言いながら襲い掛かってくるのだ。

 しかも時折3mの巨体の生態系が狂っているモヒカンとかも現れたり、妙な拳法や武器を使うモヒカンまでいるのである。

 薫や芳香はもう涙目になってエレクトロガンを乱射している。まるでゾンビにでも取り囲まれて錯乱しているようだ。


 だがモヒカン達は見かけに反して弱い。

 ただ命知らず血気盛んでバイクを乗り回して暴れて住民を襲撃しているだけだ。


『どうでもいいけど殺っちゃって大丈夫なのこれ!?』

 

「銀河連邦の法的にもデリートして大丈夫です! てか更正する未来が見いだせませんから!」


『そりゃそうだな!!』


 エレクトロガンと最終決戦の時から引き続き使用し続けているサイバーライフルを乱射しながら達也は応える。

 宇宙刑事ティアも小型拳銃に似たビームガンで次々とモヒカンを容赦なく殺害している。

 どうでもいいがモヒカン達は絶命する瞬間「ひでぶ!!」とか「たわば!!」とか「おわぁー!!」とか律儀に世紀末的な断末魔を挙げるため、精神的に来る物がある。

 本当にどうでもいいが。


『キリが無いわよこれ~』


 芳香の言う通り、幾らモヒカンの屍を築いても際限なくモヒカンは湧いてくる。

 何かもう本当に北●の拳の世界に迷い込んだ感覚になって来た。


『なあ、宇宙刑事の応援とかいないのか!?』


「たまたま近くに居たのが私だけでしたから……応援はまだかと……」


『ああそう……』


 そうこうしているウチにもう一つの爆発と銃撃音の震源地に辿り着いた。

 ついでに飛行音も。

 ハァと達也はため息をついた。


『遅いぞ貴様達!!』


 黒いゴーサイバーのスーツを着た女性がいた。

サイバーライフルⅡとサイバーブレード(日本刀型のエネルギーブレード)を持ってモヒカン達相手に大立ち回りしていたようだ。


『そうそう、遅刻よ……』


 大型のフライトユニットを身に付けた銀色のゴーサイバー、サイバーウイングスは空中を浮遊しつつ、サイバーガトリングを掃射してモヒカンを掃討していた。時折フライトユニットに内蔵したミサイルで一気に吹き飛ばしている。先程から聞こえていた爆発音はこれだったのだ。


 サイバーブラック、中條 霞(なかじょう かすみ)やサイバーウイングス、空鳴 葵(そらなり あおい)。

 実力は確かだが二人とも正規の訓練を受けていない、ましてや学生と二足の草鞋を履いている達也達四人を認めていないのだ。さらには研究者畑出身のマリアも認めていない節がある。


 何でも戦隊スーツは正規の訓練を受けた軍人が着る物であり、学生などの私物にするのは間違いだと言うのが彼女二人の意見である。

 彼女達の意見は確かに正しいと思う反面、何だかひがみに聞こえて達也は正直気にくわなかった。

 

『分かりました中條隊長。これより貴方の指揮下に入ります』


 それを口に出しても厄介な事になるのでそう言っておく。


『ふん……エリアを確保しつつ敵を掃討する。それよりもその人は何者だ?』


「銀河連邦所属の宇宙刑事ティアです」


 と、宇宙刑事ティアは簡潔に自己紹介する。

 予め知識として知っているのか二人は「そうか」とだけ答えた。  

 

「グハハハハハ!! 貴様達の進撃もそこまでだ!!」


 突如、ゲスっぽい笑いと口調が響く。

 モヒカン達も攻撃の手を止める。

 宇宙船の方角から四匹の、これまでのモヒカンとは違うオーラを身に纏ったモヒカンが現れた。


「我達モヒサンドラに刃向かうとは愚かな奴よ!! たっぷりと恐怖を味わわせてから殺してやる!!」


『あいつは?』


「敵の親玉サンドラです!!」

 

 遂に敵の親玉が姿が現した。

 四mの巨体。

 角がついた黄金の兜。

 白髪のモヒカン、口周りを覆う髭、鋭い眼光。

 雄々しい筋肉をこれでもかと見せつけ、衣服はマントに赤いプロレスパンツとブーツ、腕輪のみ。

 手には身の丈と同じぐらいのサイズの巨大な斧を持っている。

 明らかに他の、出落ち的なモヒカンとは違う。まるでどっかの監獄で獄長とかやってそうな風貌だ。


「グフフフ――たっぷりと痛ぶってから殺してくれるわ!!」


『先手必勝だ!!』


 ブラックの霞が持つサイバーライフルが唸る。続いてサイバーウイングスの葵も銃火器を発射した。4mのデカイ巨体に次々と弾が当たるが何事も無いかの様にドシドシと歩み寄ってくる。


「効かんなぁ~」


『なんでアイツだけ頑丈なんだ!?』


『てかどう言う文明を歩んだらあんな侵略者が誕生するの!?』 


 霞と葵の二人が悲鳴を挙げながらも攻撃を続ける中、他の面々は微妙な空気が流れていた。

 言いたい事は分かる。凄く分かる。ツッコミ所も的確だ。こんな北○の拳みたいな連中が宇宙船に乗ってわざわざ地球にやって来たのだ。

 もう色々と意味が分からない。

 

「くらえい!」


『クッ!!』


 巨大な斧が振り下ろされる。霞は飛び引く。斧がアスファルトの地面に直撃し、大きなクレーターが出来上がる。


『パワーがあるわね』

 

『でもジェノサイザー程の恐ろしさは感じない。やれる』


 マリアの分析に闘志を露わにする麗子。サイバートンファーを構える。


「グフフフフ!! これだけではないぞ!! イカヅチよ!」


 天に斧を掲げた。

 すると斧からイカヅチが発せられた。

 

『避けろ!!』


 霞の一言で慌てて回避行動に移る。雷が周囲に出鱈目へ放電される。

 加速度的に周囲の建造物などに被害が増していく。

 

「次はこれだ!!」


『炎まで出せるのか!?』


 達也はギョッとする。

 斧を振るうと同時に火炎玉が飛び出して来た。

 それも一つや二つだけでは無く、大量にだ。


「ふふふ、この俺は世紀末星人の中でも戦闘に特化した一族――貴様達の様な軟弱な戦士など、本気になればスグにカタがつく」


『え? まだ本気じゃ無かったの?』


 もう色々と勘弁してくれよと達也は心の中で思った。


「大サービスだ。見せてやろう。この俺のフルパワーを――」


 そう言うと体が赤いオーラーが滲み出る。大気が震え、地面が揺れる。

 そしてオーラーはまるでジェット噴射の様に放出している。まるで赤いスーパーサイ○人だ。

     

 空中にフワリと浮き上がり、巨体にには似合わぬ猛スピードで飛び込んでくる。


『避けろ!!』


『ッ!?』


 狙われたのはサイバーウイングスだった。巨体のタックルをモロに受ける。クルクルと回転して何処かに吹き飛んでいく。


『強力なエネルギー反応!? まずいわ!!』


『イカヅチよ!!』


 マリアが忠告したが先程よりも強力な雷撃が放たれた。

 達也達の周囲が閃光に包まれる。

 

『きゃぁあああああああああああああ!?』


『ああああああああああああああああ!?』


『芳香、薫!? 何をやってるんだ!?』


 しかし達也は無事だった。

 芳香と薫が守ってくれたが、スーツは子爆発を起こし、雷撃によるダメージで悲鳴を挙げている。どれだけの痛みを襲っているのか分からない。しかし達也は見てられなかった。


『だ、大丈夫――私は大丈夫だから――』


『そうよ――薫の言うとおり、この程度何でも――ないっ!』


 二人は苦悶の声を挙げるのを押し殺しながら必死に電撃に耐える。

 

『もういい! 限界だろ!!』 


 ヘルメットのディスプレイに二人のスーツのダメージデータが送られてくる。強力な電撃らしく、スーツは既にレッドゾーンに突入している。


『私好きだから――達也の事――』


『私も――好きな気持ちに――ウソを付きたくないから――』


『やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』


 叫ぶがそれでも二人は庇うのを止めない。


「ふん――まだ、息があるか――ならこれでトドメとしよう!!」


 巨大な斧により力を込める。更に勢いを増す電撃――

 

『体がどうなってもいい――突っ込む!』


『だけどこの状況だと危険で――』


『誰かが死ぬよりかはマシだ!! 行くぞ!!』


 モニター越しに寺門に止められるがウイングアーマーを装着。

 そしてサイバーセイバーⅡを装着し、二人を押しのける様に前に出る。


『うぉおおおおおおおおおおおおおお!!』 

  

 一気にスーツが壊れていく。電流が体に流れ込んで来る。ウイングアーマーが一気にレッドアラートを鳴らす。マトモに直進飛行出来るのかも怪しい。だが構わない。このまま飛び込む。


『これは一体――スーツが自己修復している!?』

 

『なんだと!?』


 戦術アドバイザーと司令が何やら驚いているが構わない。

 そのまま飛び込んだ。


「何!?」


『うおらっ!!』


 サイバーセイバーを横凪に叩き付けた。相手はより上空にクルクルと吹き飛ぶ。追撃を続行。

 

「ええい! 舐めるなよ小僧!!」


 対してダメージは負ってないようだ。スグに上空で体勢を立て直して雷撃を放ってくる。


『はああああああああああああ!!』


 達也は避けてそのまま斬りかかった。


『皆、大丈夫?』


 ボロボロになりながらもマリアが立ち上がり、呼び掛けた。

 上空ではザンドラと達也が戦っていた。

 

『私達は平気――』


『私も――』


『私も大丈夫です』


 それぞれ、麗子、芳香、薫が返事をする。


「はわわわわ――私はシールド張って無事でしたけど――地球の技術はどうなってるんですか!?」


 ティアは無事だったらしい。上空の激しい戦いに見入っている。強力な力と力のぶつかり合いだ。


『初めて見たな――アイツの戦い――』


『霞さん――』


『マリア、アイツは何時もあんな感じなのか?』


『ええ。初めての戦いの時も、ジェノサイザーの時も、普段は頼りないけど土壇場ではあんな感じになるの――』


『そうか――』


 するとサイバーウイングスが戻って来た。背中のウイングパーツはパージしている。


『皆、大丈夫?』


『葵か――』


『どう言う状況よこれ』


『あのボウヤが敵の首魁と一騎打ちしてるそうだ』


 簡潔に霞は葵に状況説明する。


『あの子が――訓練の時はあんなに頼りないのに――どうして実戦になるとああなるの?』


 葵は信じられないと言った様子だ。


『それは私達も分からないの――あの子が特別なのか、スーツが特別なのか、その両方なのか・・・・・・』


 と、マリアが苦笑気味に語る。

 上の連中はサイバーピンクに注目しているが、正直自分としてはサイバーレッドに、楠木 達也に興味があった。


 土壇場の、危機的な状況に陥った時のあの爆発力は何処から湧いて出るのか。

 ゴーサイバーは元々軍事兵器としての安定性が求められた戦隊スーツであり、またテストヘッドの一つでもある。にしては特異な部分が多い――


 それにしても今の達也はまるで――


『フェニックスのようね、彼――』


 今の達也をマリアはそう評した。


『ああ――』


 霞も、


『そうね――』


 葵も、


 三人は達也の戦いを見守った。気が付いているのかいないのか、赤い炎が彼自信を包み込み、まるで不死鳥の鎧を身に纏っているようだ。


『うわあああああああああああああ!!』


「まだ力が増していく!? それにその姿は――」


 激しい打ち込み。出鱈目な剣劇。しかし一撃一撃の速度や破壊力が反撃を許さない。


遂に巨斧がバラバラに砕け散る。


『終わりだぁ!!』


「ぬぅ!?」


 剣で一閃。血飛沫が舞いながら吹き飛ばされ、地面に叩き付けられた。

 

(体が熱い――燃え尽きそうな程に熱くてたまらないのに――)


 サイバーセイバーⅡを構える。

 

『これで終わりだぁあああああああああああ!!』


 慣性を無視した幾何学的な空中機動を行いつつ、一気に詰め寄る。

 

「はや――」


『一つ!!』


 縦一閃。四mの巨体を切り裂く。


『二つ!!』


 そして横一閃。頑丈そうな胸板を切り裂いた。

 

『これで!!』


 そして剣を突き立てる。


「ぐぬぉおおおおおおおおおおおおおお!?」


『はぁあああああああああああああ!!』


 ジェノサイザーの時も自分を助けてくれたこの不思議な力。

 この不思議な力が何なのかは分からない。だけど邪悪な物は感じない。だからと言って神秘的な物でもないし無機質的でもない。もっとこう、誰もが持っている、身近な物だと――そんな気がしていた。

 それが相手の体に流れ込んでいく。


 サンドラの体から閃光が漏れ出す。直感的に最後だと思い、離れた。


「ワシが、このワシがぁああああああああああああああああああああ!!」


 断末魔を挙げながら爆炎と共に消えた。


「う、ウソだろ――サンドラ様がやられた!!」


「に、逃げろ!!」


「うわああああああああああああ!!」


 モヒカン達の生き残りが宇宙船に逃げ込んでいく。


「終わったのか――」


 達也はその場にへたり込んだ。

 


 Side 楠木 達也


 ――ここから先は私達の仕事です。もうすぐ増援も到着しますし、楽に逮捕されるでしょう。ご協力感謝します。


 宇宙刑事ティアは滞在せずに地球から消え去った。仕事熱心な事だと思う。

 あの後俺達は全員病院のベッド送りとなった。スーツも総点検らしい。

 しかし恐ろしい敵だったと思う。


 ・・・・・・色々な意味で。


「で? 中條さん? どうして自分はトレーニングを?」


 達也は何故か基地内の施設でマラソンをさせられていた。チンタラ走ってると檄が飛んでくる。

 お下げのショートヘアで理知的に整った顔立ちに長身、クールビューティーと言う言葉が似合いそうな容姿。それがサイバーブラック、中條 霞である。


「大金星を得たからと言って調子に乗るなよ。あんな無茶が通用したのは偶然だ」


「は、はあ――」


 と言う事らしい。中條さんは厳しいが今日は何時にもまして厳しい気がする。

 言いたい事は分かるがどうも腑に落ちない物を感じた。


(その無茶苦茶に助けられたのは事実だ――あれだけバカにしておいてふがいない――)


 軍人だけで戦隊を構成するべきだという考えは正直霞もまだ捨ててはいない。

 守るべき一般人が率先して戦うなど間違っている。にその方が世の中の為だと思っているからだ。だが先日の戦いはその考えにヒビを入れて来た。


 それでも霞は(だが認めるわけにはいかんのだ――その現実を――)と考えていた。


 そして物陰では――


「うーん、私達が入ると邪魔にされるから、ここは終わったのを見計らってスポーツドリンクとタオルを渡そっと」

  

「いーや、私が渡すわ」


「――恋に本気出すとこうも変わるのね」


 薫や芳香、麗子の三人娘は影でそんなやり取りをしていた。

 私も相手見つかればこんな感じになるのかなとふと麗子は思った。


「あーあ、相変わらずね――葵さんは?」


 空鳴 葵は黒髪ショートヘアのクール系のお姉さんと言った感じだ。体も中々にナイスバディである。側には白墨 マリアがいて相変わらず白衣を着ている。

 何故か遠くから二人一緒にトレーニングの様子を眺めていた。


「――正直、最後の最後でしくじった感じで悔しいわ」


「まあ、あの強さは本当に予想外だったわよね・・・・・・また研究員畑からの道が遠退くわ――寺門さんも、前線送りにされるんじゃないかとボヤいてたし――」


 葵のボヤキにマリアはそう返す。

 

「でも、あの子に助けられたって言うのが信じられない」


「ジェノサイザーに負けて磔にされて、助け出された時もそう思ったわ――ほんと、不思議な子よね。普段はあんな頼りないのに」


「もしかして年下趣味?」

 

 葵はボソッとそう勘ぐる。

 

「え? 私? ナオミさんじゃあるまいし――てかあの子にはもう今でも手一杯みたいだし、はあ、何処かに良い人いないかしらね・・・・・・」


 そして件の達也はヒィヒィ言わされながら走らせ続けられた。

 

【END】 

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