第15話 武の極致 無天流
「天神ノアと伍代龍牙。折角、逃げ出せたのにわざわざ私の所に来るとは……呆れたものだ」
「なぁマッケンジー。彼女を解放しろ。俺たちが何をした? どうしてお前はそんな酷いことが出来るんだ」
「天神ノア、君はこの女の罪を知らないだけだ。上ッ面だけで物事を判断する愚者に救世の魂は似合わぬ」
「訳の分からないこと言ってないで……早くマイノを治療しろ! 我慢の限界だ」
「貴様はもう殺してしまおうかな」
神父が短剣を彼の頭上に振り上げると、すかさず龍牙は刀身をいなしノアを守るように立ち塞がった。
「立派だぜノア、お前根性あるな。言うべきことを恐れずに言える奴は好きだ。だがコイツは話の通じる相手じゃあない。化け物の始末は俺に任せて下がってな」
「餓鬼ども……調教が必要だな」
「九頭竜第八頭・団長 リンゴー・マッケンジー貴様を殺して俺の強さを証明する」
「伍代龍牙か。四神の孫がどれ程のものか……少し試してみようか」
神父が言い終わるのを待たず彼は拳を撃ち込んだ。
神父の胴に放たれた正確無比な正拳。
無天流 龍尾一徹
神子さえ
「食らえよ武の極を。これが無天流だ!」
閃光の如く放たれたその拳を避ける術をマッケンジーは持ち合わせていなかった。左胸部辺りに正拳は命中。本来ならば敵の心臓を破壊する一撃必殺である。しかし目の前の男は正面から拳を受け止めて尚も悠然としている。
「もう終わりか?」
龍牙は感じたことのない違和感を覚えていた。拳は確かに当たっていたにもかかわらず、まるで手応えがなかった。心臓どころか肋骨さえ折れていないということが直感的に分かった。
「俺の技が効いてない……!?」
「次はこちらの番だよ。糞坊主」
神父の強烈な橫蹴りが彼を襲う。躯体は飛躍して彼は外廊の壁に叩きつけられた。
「龍牙ァッ!」
砂煙の中から彼は、冷静な声色で自身の無事を告げる。
「大丈夫だぜ……ダメージはねぇ」
「だが一つ分かった」
「残念だけど今の俺じゃ奴には勝てねぇ。せめて裁器を持ってりゃ……」
「そんな……」
「でも安心しろよ。俺にはまだ秘策がある」
「秘策だと……!?」
「ほう、何を企んでいるのか知らないが私は逃げも隠れもしません。かかってきなさい未熟者」
「破ァッッ……」
深く呼吸した彼は低い体勢で構える。
「これは期待できるか?」
異次元の戦いを見守ることしか出来ないノアは、起死回生の一手を期待しながら様子を伺っていた。何か大技が繰り出されることは間違いない。必殺の一撃は拳か蹴りか……。マッケンジーと龍牙、両者の間に緊張が走る。神父と武人、全く異なる性質を持つ二人の戦いの行方はいかに……
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