第45話 宣戦布告(11日目)

「中国は遂にレッドラインを超えた。パンドラの箱を開けてしまったんだ」ブラウン大統領の顔は紅潮していた。

「大統領、中国に宣戦布告しますか」サンダース国務長官の問いかけに大統領は即答した。「当然だ。中国は核魚雷で第7艦隊を攻撃したんだ。この事実を全世界に公表し、ただちに宣戦布告する。敵機動部隊を殲滅するんだ」ブラウン大統領の中国に対する怒りは頂点に達していた。

 第二次世界大戦時の日米の空母機動部隊の激突から、長い時を経て遂に米中の機動部隊の激闘が始まった。その頃、第7艦隊の旗艦ブルーリッジは横須賀沖に停泊していた。格納容器は甲板上に急遽設置されたBSL-4(バイオセーフティレベル4)の施設内に運び込まれていた。揚陸指揮艦ブルーリッジには米国本土からウイルス研究の第一人者が集められていた。宇宙服のような防護服をまとった研究者が格納容器を開き、円盤状の謎の物体を取り出した。

 それは、明らかな人工物で高熱にさらされたために黒く焦げていた。

「炭素繊維強化プラステックの耐熱カバーだ。これは探査機から分離された帰還カプセルに間違いないな」「中心部分に何か格納されているようだ」

「まず、円盤の周囲に付着している物質を調べよう」マニピュレータを操作していた研究者が耐熱カバーの下に国旗を発見した。赤旗に5つの黄色い五芒星が描かれていた。

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