第36話 深海の異変

 無人探査機「かいこう」はサルベージ会社の海洋丸から海中に投下され、深海に向けて急速に降下して行った。「かいこう」を操縦するのは橘だった。

今回のミッションではしんかい6500が主役を務めていたが、不測の事態に備えて無人探査機もスタンバイしていた。

 しんかい6500のパイロット岡田は相模湾の調査に戻るために母船とともに現場海域をすでに離れていた。橘は岡田から「かいこう」のメンテナンスを頼まれてサルベージ船に残っていたのだった。

 サブマリーナの立川一等海尉もさすがに無人探査機の操作には自信が無かったので、女性パイロットの橘に頭を下げざるを得なかった。

「いったい何を探しているんですか」「何があるのか俺たちにも分からない」

「潜水艦以外の物が沈んでいるんですね」無人探査機から送られくる深海の画像を見ていた宮島一等陸佐が声を上げた。

「あれはいったい何だ」照明灯に照らされた深海底に赤い巨大な森が現れた。立川はその異様な光景に声も出なかった。

「チューブワームが巨大化している」橘も見たことがない巨大さだった。橘はチューブワームの群生を避けようと上昇の操作をしようとした。その時、無人探査機は衝撃で激しく揺れた。

「着底したのか」「違います。何かが無人探査機に体当たりしてきた」立川は乱れた画面の端を横切る黒い影を見ていた。

「なにかいる」「ばかでかいぞ」「信じられない」

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