第35話 無人探査機

 笠原は永山から聞いた話をすぐに上司の山科一等陸佐に伝えた。永山は坂倉から預かった観測データも笠原に預けていた。

「この観測データはウイルスの起源を解明する手がかりにかもしれないな」山科は宮島一等陸佐と立川一等海尉を呼び出した。

「立川一等海尉、もう一度しんかい6500でこの謎の物体を探してくれないか」

「しんかい6500はすでに現場海域を離れています。準備には時間がかかります」

「ウインター少佐にはこの事実を伝えますか」笠原が質問した。

「彼には伝えない。ここにいる四人だけで行動する。すでに開戦準備に入っている日米を説得できる事実をつかむんだ」

「7,000mまで潜れる無人探査機「かいこう」がまだ現場海域近くにいるはずだ」「無人探査機を扱えるのか」「こう見えてもサブマリーナですよ」立川は笑いながら言った。

「俺も手伝うよ」戦端が開かれる前に何としても謎の物体を見つけなければならないと宮島は思った。空母ロナルド・レーガンを擁する第七艦隊の大船団が西太平洋上に集結しつつあるのを四人はまだ知らなかった。

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