第7話 枯葉 秋-2

「翠ちゃん!!!!!!!!」

外に響き渡る秋の声。私は必死に言い訳を考えていた。

普段おとなしい秋ちゃんが周りを気にせず叫んでいる時点で、相当怒っていることが予想できるからだ。


とりあえず、居留守なんてしていたら余計火に油を注ぐことになるので、急いで玄関口に向かい、ドアを開けた。

その瞬間、秋が勢いよく飛び込んできたのである。

あまりの勢いで飛び込んできたので、胸が痛い。

「いてててて…そんなに慌ててどうしたのさ。」


私の胸にうずくまっている秋は泣きながらこう言った。

「だって…だって…翠ちゃんが死んじゃったかと思って…」


私が死んだ?えっ?何の話?

話が全くもって話がよめない。

「なんで私が死んだとかそんな話になってるの?」

とりあえず話を聞いてみることにした。


秋はボソッと答えた。

「Codeが応答不可になっていて、翠ちゃんに連絡がとれなかったの…死んじゃった人みたいに…それで心配して急いで翠ちゃんの家に向かったの。」

確かに私が逆の立場であれば同じことをしていただろう。もしかしたら偽の世界が関係しているのだろうか。

「秋ちゃん。連絡が取れなかったのっていつ頃の話だった?」


なんでそんなこと聞くの?とった顔で秋は答えた。

「えっと、翠ちゃんからメッセージが来てから1時間後?ぐらいだと思う。」

翠は確信した。偽の世界にいる間は連絡がつかないようだ。

翠がどうやって説明しようか迷っていると…


「…して」


ん?


「説明して!!翠ちゃん何かしってるような顔してるもん!!隠し事はしないでちゃんと説明して!!」

秋が少し怒りながら顔を近づけてきた。


翠は困った。

説明しようにも、偽の世界の説明なんてどう説明したらよいのかわからない。

なんせ、私もこの目で見たから信じられるわけで、見たことがなければふざけた怪談話だ!と笑い捨てるだろうから。


困っていると声が聞こえた。

「あなた説明するの下手でしょうし。私が説明してあげましょうか?」

見慣れた姿の女性が目の前に現れたのだ。リーパーだ。


予想外の助け舟に喜んだ翠だったが、

「えっ?あんたこの世界でも姿を現せられるの??」

現実でも姿を現せることを知らなかった翠は疑問の声を上げた。


「Codeなんだから脳を通して視覚情報を送れば簡単なことよ。それよりも…」

クスクス笑いながらリーパーは言った。

「あなた変人扱いされているわよ。」

リーパーが指をさした先を見てみると、秋が青ざめた顔でこっちを見ていた。


「す、翠ちゃん誰と話してるの!?もしかして意地悪?私幽霊とかそういうの嫌いなのしってるよね!」

怒りながらも、今にも泣きそうな声で秋は言った。


秋ちゃんにはリーパーが見えていなかったようで、私が誰もいない空間に一人でしゃべりかけているように見えたようだ。


さすがにまずいと思った翠はリーパーに助けを求めるように視線を向けた。

「あの子のCodeを触りなさいな」

リーパーはクスクスと笑いながら今の状況を楽しんでいる様子だったが、さすがに秋が可哀そうだと思ったのか、手助けをしてくれた。


「はじめまして。Ms.枯葉。私が翠のCode、リーパーよ。」

私がCodeに触ったあと、何事もなかったかのようにサラッと挨拶を済ませたリーパーだったが、相手は動揺を隠さずにはいられなかった。


「誰?誰なの?幽霊?どこから来たの?」

突然の見知らぬ女性が現れたことや、突然の出来事に秋の頭が付いていってない様子だった。


このままだと埒が明かないと判断した翠は、割って入り、これまで起きたこと、リーパーから教えてもらったことを包み隠さず説明を行った。


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「じゃあ、翠ちゃんはFalse World?みたいなところに突然行っちゃって、お父さんのこととか他にも色々な出来事にあったってことね?」

一通り話を聞いて納得をした私は、時間が遅くなってきたのもあり、翠ちゃんの家を後にした。


私には信じられないことだらけだったけど、翠ちゃんの話し方を見ていると嘘を言っているようには感じなかった。

「でも少し気になることが…」

私の勘にはなってしまうが、翠ちゃんが何か良くないことに巻き込まれている感じもした。


Codeの開放や、ヴァース、翠ちゃんのお父さんいろいろな話があって、頭がついていかなかったけれども、これだけは言える。

「私にできることがあれば翠ちゃんを助けよう。」


いつも守られているだけの私だったから、いつも助けてくれたのは翠ちゃんだったから。

私にもできることがあれば手助けをしてあげようと誓った秋であった。


秋のCode(ペンダント)が一瞬キラッと光った。










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