第6話 枯葉 秋
偽の世界から、現実世界に戻り翠はベッドで横になっていた。
"人が死んでいる"
私は、その事実に言葉を失ってしまった。
Codeが様々な技術革新や、格差の撤廃が行われ、人々に大きな恩恵をもたらしたことには疑いようがないのだが、人を犠牲にしてまで発明をする技術など許されるのだろうか。
その研究に父が関わっていたこともショックであった。
いつの間にか日が沈んでおり、外の景色が暗くなっていた。
暗い部屋だと気分も暗いままな気がしたので、とりあえず電気をつけた。
「こんな時、秋ちゃんがいれば悩みをきいてくれるのに…って。あ!!」
私は人としてやってはいけないことに気づいてしまった。
友達を遊びに誘うだけ誘って、返事を返さないという悪行を!
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「枯葉 秋」は「清水 翠」の幼馴染である。
「お前は本当にどんくさいな」
「もじもじしてないではっきり喋ろよ」
「お前のせいで、バレー負けたじゃねーか」
内気でおとなしい私は、体を動かすことがあまり得意ではなかった。
はっきりとものを言えない性格で、それが原因なのかイジメられることもたくさんあった。
そんな私をいつも守ってくれたのが翠ちゃんだった。
私とは真逆な性格で、男勝りで粗暴なところが目に付く翠ちゃんだけど
明るくて何事にも前向きな翠ちゃんが私の憧れなのだ。
ピロン♪
通知音が鳴った。
内容の確認をすると「暇~!あそぼ!!」という翠ちゃんらしいメッセージ。
「まだ、家のやることが終わってないから、落ち着いたら返そうっと!」
遊ぶ楽しみがエネルギーとなって、いつも以上にテキパキと家事をこなせる気がした。
しばらくして掃除が終わり、返事を返そうとした。
「あれ、翠ちゃんのCodeが応答しない…なんで!?」
心臓が大きく脈打ち、激しい焦燥感に駆られた。
Codeが応答しない=死んでいるが世間の一般常識であるからだ。
気づくと一目散に駆け出していた。周りの景色なんて見えていない。
1秒でも早く翠ちゃんの家に着けるように。
家に誰かいるだろうか。そもそも外出中ではないだろうか。
様々な憶測が頭をよぎる中、目的地へ到着した。
ざっと1時間ほどだろうか。
私にとってはとても長い時間に感じた。
目の前にはインターホン。
1秒でも早く着きたかった場所なのに、真実を知る勇気が私は中々だせなかった。
もし、本当に最悪な予想が当たってしまった場合、私に受け止めることができるのだろうか。
ここでも、前に進むことができない自分が嫌になってくる。
そのとき部屋に明かりがついたのが見えた。
翠ちゃんの部屋だ。
「翠ちゃん!!!!!!」
私は周りを気にする余裕もなく、気づいたころには叫んでいた。
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