4 再会③視界の共有の落とし穴

 ビートは鼻歌交じりで異母きょうだい達の到着を待っていた。

 人目は気にしなくてよい。

 彼が常々歩いているのは、そういう場所だからだ。

 ビートの立場は「風来坊な旅行家」だった。

 とりあえず本人はそう思っているし、旅先ではそう名乗っている。

 他の四人と違い、定まったそれがある訳ではない。

 いや、彼の両親にしても、周囲にしても何かしらの職に就けようとしたことはしたのだ。

 だがしかし、気がついたら何処かに飛び出していて、しかも何とか生き延びられるだけの知力体力時の運を持っていた。

 やろうと思えば何かしらの職である程度のことはできるだろう。

 だが気持ちだけがどうにもならない。

 困った彼等の異母兄はこの弟に「仕方ない、お前は冒険家として帝国中を歩き回り、時々何処がどんな様子かを事細かに書き記して鳩で送れ」と言った。

 ビートは大喜びでその役割を楽しんでいる。


「それって要するに」

「旅行家という名の諜報員よ。まあ誰もビートを見てそうは思わないわよねえ」


 齢二十にして既に帝国学究院の一員として彼の地の文化を研究しているレンテと、既に何年も皇宮女官として何かと見聞きしているアルパカタはこそっと言い合う。


「いいんじゃね? 好きなことやってそれが役に立てば」

「そうそう、好きなことで生きて行くならば多少のお仕事は必要なのよ」


 他の二人も言う。


「うん、特定したよ」


 今まで共有した視界と、それまでの連絡からビートの位置を特定していたレンテは大きく頷く。


「じゃ、行きましょ」


 今度は四人で手を取り合った。



「……さぶっ!」


 両手を挙げてもごもごと「久しぶり~」とにこやかに笑うビートの姿を見た時、四人は「しまった」と思った。


「いや確かに緯度高いし山っぽいとは思っていたけど!」


 顔の半分、手先も出ない毛皮中心の衣服でビートは本気で再会を喜んでいるのが四人誰の目にも明らかだった。


「ちょ、ビート、はやく手!」

「あれ~アルパどうしたんだあ?」

「貴方の視界に雪が無かったから皆油断したのよ! こんなとこ、私達こんな格好で居たら何分も保たないわ!」


 あ、そうか~と彼はえへへ、と大きく無骨な身体に似合わない程単純な笑顔を皆に見せた。


「そうだね、じゃ」


 長い袖から出した手は皆が驚く程暖かい。


「それじゃ、行きましょう」


 アルパカタは集合後の行き先を脳裏に浮かべた。


「直接駒の間に行くのではなくって?」

「時間指定があるの。それ以外の時間じゃ幾ら常に空になっている部屋でも、怪しまれることこの上ない。だからとりあえず帝都の私の里邸に行くわ」


 そう、彼等の異母兄は非常に普段から多忙なため、時間指定は絶対だったのだ。

 そして五人揃った彼等は帝都へと飛ぶ。

 皆、久しぶりの―― 

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