1 皆おはよー、集まって。

 くるっぽー。


「……うわあ」


 その朝、皇宮女官アルパカタ・トバリは目覚めてすぐに窓の外に居た鳩の存在に一気に目が醒めた。

 窓を開け、すぐにその馴染みの鳩を手に乗せる。

 その足には小さな金属筒が付けられている。

 アルパカタは慣れた手つきでその筒の蓋を開ける。

 中には小さな丸めた紙。

 あーあ、と彼女は鳩を卓へと移すと棚へ向かい、小皿と餌と、一つの小瓶を取り出した。

 小皿には餌を入れ。

 夢中で鳩が餌をついばんでいるうちに、アルパカタは小瓶の中に入っている液体を別の容器で薄める。

 そしてその容器の中に紙を落とす。


 ――**日**時、集合、駒の間


 それだけが記されている。

 アルパカタはため息をつくと、すっと目を伏せた。

 そして心の声を飛ばす。


『皆、おはよー。生きてる?』


 数秒待つと、次々に覚えのある声が頭の中に響き渡る。


『なんだあ? こんな朝早く? ってアルパお前か?』

『え、ちょ、待って、今取り込み中なんだけど』

『取り込み中たあマティお前相変わらずだな、何が起こったアルパ』

『あの方のお呼び以外何があるってんですか……』


 相変わらずだなあ、とアルパカタは返ってきた声に対しこっそりそんな感想を考える。


『はい私よトイス、取り込み中ってあんたもう朝だって言うのマティッダ、想像通りよビートにレンテ。**日**時に駒の間に集合ですって』

『駒の間ぁ? まーあそこはそうそう人寄りつかないからなあ。いいけど、俺今北東に居るんだけど』


 トイスと呼ばれた相手がそう答える。


『うん、だからともかくあんたが帝都に根性で来られる時間を兄上はわざわざ書いてきたのよね。ったく』

『まーなー、お前がアルパと合流すれば俺等を回収できるからな』

『そう言うビート、君今何処に居るんですか? 僕は草原路にある街ですが…… 近場だったらある程度皆合流していた方が無駄な力使わずに済むでしょう?』

『うーん…… 今何処の地点に居るのか正確なとこは。一応北西と帝都の間の山脈沿いなんだけど』

『あーそう、じゃあともかくまずアルパとトイスはあたしを拾わないといけないってことね。そんでレンテ経由でビートを拾って最後に兄上さまのところに行くってことで? ……っと!』

『おい現実をこっちの会話に潜り込ませるな!』


 どうやらマティッダの「最中」がほんの少し彼等の会話に反映されてしまった様である。


『……まあだから私これから休暇もらって帝都から北東に馬飛ばすから、トイスとまず合流ね』

『おう。こっちも伯にことわりを入れてくるわ』

『はあ…… しばらく彼と会えなくなるるのね……』

『仕方無いでしょう我々のお仕事ですから』


 それじゃ一旦解散、とアルパカタはこの会話――心話を打ち切る。

 くるっぽー、と声を立てる鳩の前で自分も茶を入れ朝食を口にしつつ。

 久しぶりに会う異母きょうだい達のことを思い。

 やはり久しぶりの「事件」がどんなものなのか考えを巡らすのだった。

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