9話 少年の最後

少年の話の続きをしよう。


彼はデータを書かれていた通り消去した。彼は、6歳のとき、初等教育を受けに学校に行った。

その少年は、コミュニケーションが得意とも苦手とも言えた。彼は、言葉で物事を伝えたり、理解することは得意であったが、それ以外のコミュニケーション方法では、何も伝わらないし、理解できなかった。だから、他者と良好な関係を築くことが難しかった。そして、彼は言語理解能力は極めて優秀であったが、情報処理能力は実年齢の半分以下の能力すらもないものだった。彼は初等教育の1年目で留年した。彼は文字で書かれている内容を理解できたが、処理が追い付かず、成績の判定時のテストで時間が足りなかった。2回目の1年生をしていた時、数学の教員が彼にある本を渡(プレゼント)した。高等教育の数学の教科書だ。彼は1か月でその内容を理解した。それらから彼は別の能力を獲得した。それは別の方向から、解へアプローチするものであり、情報処理能力が低くともできるものだった。その後、彼は、10歳で大学へ進学した。12歳の誕生日で、彼は殺された。


少し彼の大学時代を話そう。彼は大学時代に『教養学部』へ入った。この学部は様々な分野を浅く広く理解し、ほかの専門分野との橋渡しや一般的向けに科学の解説などを行っている。専門分野に詳しい人間なら誰もが知っている。この分野は学問分野で最初にとって代わられた分野だ。現在も人間はAIのレポートの修正を行い最終責任を取るだけが仕事だ。実際には修正なんかせず、AIに生成させたものを大量に公開させている場合もある。


圧倒的な処理速度、膨大な学習データ、様々な情報伝達バリエーションを行うAI相手に人間がそれ以上のものを作れると言えない、そんな状況だった。動画配信サイトで、Web上の記事に、頭に入りやすい語呂合わせやオリジナル曲、とても分かりやすいマンガ、イラストなど、それらに圧倒されていた。


だが、何を狂ったのか彼(11)はキーボードで、文字を打ち出し、レポートを書いた。周りの人間は期待どころか頭がおかしくなったんじゃないかと思って心配する人間もいた。しかし、完成したレポート内容は、AIを凌駕していた。それを読んだ人々はすぐにそのレポートをインターネット上に公開した。そのレポートは、10^6もの言語で書かれておりそれぞれの翻訳はAIよりも正確だった、それどころかレポートに使われている、言い回しや格言、民話など様々な文化までその国のもので書かれていた。またたくまにレポートは読まれ、公開から1週間で大学どころか、その州全体のサーバを使用してもアクセスが増え続け、10日目でサーバーがダウンした。このことは、州どころか国内でも収まらず、翻訳されている言語の国ではもちろん、それらの言語を読むことのできる者たちの間で、この話題は持ち切りとなった。


この事について、様々な見解などは存在せず、見解は全会一致だった。

合州国で高性能な新型AIができた。と。


しかし、彼を実際に見ていた人々は事実を知っていた。このレポートは彼が彼自身の手でAIを使わず、書いたものだと。


レポートを公開して30日目に、彼は誕生日を迎えるのと同時に殺された。



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