第05話 狩り



 ここに来て数日。


 エイタさんにイロイロ教えて貰って、ここでの生活にも慣れてきた。



「お肉が食べたい!」


「狩り行く?」


「ん?」


 狩りの意味がわからず喜んだけど、現実は厳しかった。


 エイタさんが自作した弓を見せてくれた。


(マジかぁー)


 他の方法はないかと聞くと、


「あいつら強いから、落とし穴掘るくらいしかないかな」


 イノシシとかシカとか、確かに勝てる気がしない……。


 そんなこんなで。


 お肉がないならお魚だ!


 と、釣りに行くことが決まった。


 エイタさんが釣り竿を二本持ってきて、


「じゃ、行こうか」


「近いの?」


「15分くらい」


「それくらいなら余裕~」



 騙された!


 エイタさんの足での15分は、私の30分だった!


 山のふもとを流れる川に、ようやく辿り着いた。


 小鳥の鳴き声も聞こえる、『ザ・大自然』な感じだ。


「釣り、したことある?」


「あるわけナイじゃん」


「だよねー。虫とか平気?」


「ダメに決まってる!」


「わかった。準備するから釣り竿持ってて」


 何をやっているのか、さっぱりわからないけど、釣りの準備をしてくれた。


 いざ、勝負! 私の晩ごはん。


 ………………。


 …………。


「ねぇ。何も起こらないんだけど?」


「釣りは待つしかないんだ。ガマン、我慢」



 小一時間も経ったころ、なんの変化もなく釣りは終了になった。


「エサがダメだったかな? 釣るのは諦めるか」


「ここまで待ってお預け?」


「魚は別の方法で確保しよう」



 釣り道具を片付けて、エイタさんが何をするのか見ていると……。


 河原で大きめの石を持ち上げて、川に投げ入れた。


 水面から出てる岩に当たって、大きな音がしたと思ったら、数匹の魚が浮かんできた。


(はい?)


 慌てて川に入ったエイタさんが、魚が流される前に確保していた。


「何したの?」


「こうすると、魚が気絶するんだ」


「先に言ってよー、釣りより楽じゃん」


「でもコレ、やりすぎると魚が居なくなっちゃうから、よくない方法なんだ」


「そなの?」


「うん。サクラさんが魚を楽しみにしてたから、今日は特別」


 これなら私でも捕れそうだけど、捕りすぎはダメだよね。たぶん。



 こうして野菜以外の食料を手に入れたんだけど、すぐに食べられるなんてことはなく……。


 魚をさばいて、焼く前の準備が大変だった。


 野菜を育てるのだって楽じゃない。


 むしろ、毎日の水やりとかすごく手間がかかるけど、野菜はグロくない。


 生臭さも魚の欠点で、気分が悪くなった。



 数々の苦難を乗り越え、焼き魚を口にする時がきた!


「ウマ~~」


 川魚の塩焼きは、頬がほころぶ美味しさだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る