第04話 お風呂とお布団



 お風呂の使い方を教えてもらった後。


 お湯が沸くまで、料理で使うカマドや畑の案内をしてもらった。


 私が着ていた服は、かなりボロボロだったから、エイタさんが着替えを用意してくれた。


 驚いたことに女ものだった。



 エイタさん以外の人は本当に誰も居ないようだ。


 とはいえ、さすがに恥ずかしい……。


 太陽の下で、家と露天風呂以外は何もない場所で、真っ裸!


(もう。どうとでもなれ!)


 イロイロ諦めて、お湯で身体を流した。


(気持ちい~~)


 汚れを落として湯船に浸かると、


「ふ~~っ。いい湯」


 独り言が出てしまうくらい、気分が最高だ。


(お風呂、何日ぶりだろ?)



 お風呂から出て、両手を腰に当てて青空を見上げる。


「もう怖いものはない!」


 我ながらバカらしいって思ったけど、勢いって大事だと思う。うん。



「お風呂出ました。ありがとうございました」


「覗いてないからね!」


「……信じてます」


 ご飯を食べてお風呂に入ったら、まだ日が高いのに眠気が襲ってきた。


「ふわぁぁぁぁ」


「奥の部屋に布団を用意してある」


「気が利きすぎじゃない?」


「そうかな?」


 ふすまを開けると畳の8畳間で、真ん中にポツンとフトンがひかれていた。


「ここ、サクラさんの部屋にするから自由に使って」


「いいの?」


 自分の部屋だと言われて、なんだかハッピーな気分になった。


「じゃあ、遠慮なく使わせてもらうよ?」


「うん。おやすみ」


「はーい。おやすみなさい」


 バタリとフトンに倒れ込むと、お日様のいい匂いが漂ってきた。


 数分もしないうちに、深い眠りに落ちた。



 目が覚めると、外はまだ明るい。


(あれ? あまり寝てない?)


 んーーっと伸びをして、起き上がる。


 久しぶりに寝起きがよくて、気分もアガる。



 キッチンに行くと、エイタさんがご飯を食べていた。


「おはようございます」


「おはよう。よく寝れた?」


「うん。久しぶりにグッスリ」


「食べるよね? すぐ用意する」


「ありがとう。次は手伝うから」



 メニューは、オニギリ・トマト・焼きナスだった。


 ここには、塩以外の調味料がないらしい。


 でも、塩を振りかけただけの野菜が、こんなに美味しいって知らなかった。


 これと比べたら、今まで食べてた合成調味料を口に入れたくなくなる。


「ほんの数時間寝ただけなのに、たくさん寝た感じ」


「昨日からずっと寝て、まだ足りない?」


「えっ?」


「一晩明けてる」


(…………)


 寝すぎだけど、こんなに寝たのはいつ以来だろう?


 最後に安心して寝られた日のことを、思い出せなかった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る