異世界人

「僕は勇者です」


 恥ずかしくないのかよ……


 見てるこっちが恥ずかしくなるような名乗りで見ていられない。


 兵士さんも予想外だったようで呆けた顔を一瞬して顔を振り槍を構え直す。


「何を言ってるんだ!!早くここから出ろ!貴重な遺跡だ!!抵抗するようなら……」


 そう言いながら槍を川崎に対して近付ける。


 それに対し川崎は勇者でおだてられて調子に乗っていたことに気付いたのか顔を青ざめる。


「わ、わかりました……直ぐに外に出ます……」


 槍を向けられ泣きそうになっていた女子達を連れて川崎達が兵士が来た通路の方へと向かう。


 俺とほかのクラスメイトもそれを続く。


「着いて来い」


 兵士さんはこちらの警戒をしながら俺たちを先導する。


 魔法陣のあった部屋を出て外へと出る。


 そこは塔の外壁部分のようで螺旋階段に繋がっていた。


 そこから右の方を見てみると闇に包まれてるというような表現が良いのだろうか。ちょっと奥の方から暗い色の地面が続いていた。


 逆の左の方は正反対で、明るい色で地球の自然豊かな場所に似ている。今居る場所の地面もまだ明るい


 その時点で地球とは違う世界だということを再認識する。


 なんというか、暗い方には魔族が住んでいて明るい方に人間がいるみたいな世界だ。


『おおよそその通りです。暗い側が暗黒界あんこくかい。明るい側が平地界へいちかいと人族に呼称されています』


 暗黒の対義語の光系統の名前とかか人界とかかなと思ってたが平地界って名前なんだな。


 色以外の違いとかあるの?種族の差とかが定番だけど。


『暗黒界は魔力が濃く人族が住むには適していません。魔族と強い魔物の住む場所とされています。平地界には人族、エルフ族、獣人族と弱い魔物が居るとされています』


 魔力が濃いから暗黒界の方が魔物強いとかそういうことなのかな。分かりやすいな。


「おい!お前ら何してるんだ!はやくしろ!」


 兵士さんに怒鳴られ今の状況を思い出す。気付いた時には兵士さんは階段の結構先まで行っていた。


 ただ、景色に見入っていた人は俺だけではなく、クラスのほぼ全員だったようでハッとした顔をして追いかける。


 そこからはみんな周りを気にしながらも兵士さんの方をしっかり見て着いていく。


 そして15分ほど歩いただろうか。大きな木の塀が見えてくる。


 門のような場所には兵士さんの人と同じ鎧を着た人が居た。門番と言うやつだろうか。


「おお、モルド。お帰り。後ろの奴らはなんだ?」


 門の前に立っていた人が声をかけてくる。

 連れて来た兵士さんがモルドという名前なのかな?


「ああ、ただいま。アイク。遺跡の1番上に居たんだよ。1人、俺は勇者だなんて戯言を言う奴も居て、思わず笑いそうになったよ」


「やっぱりか……。よし、そのまま長老のところ連れていってやれ」


 その言葉に兵士さんは驚いた様子だった。


「やっぱりって何だよ。しかも長老の所か?牢屋じゃなくて」


「ああ、長老のところ行けば説明してくれるかもな。お前が行った後、おばば様が起きて来たんだよ」


「おばば様が?」


「ああ、まぁとりあえず早く行ってこい」


 おばば様?長老?まぁこの場所の偉い人なのだろうか。その人に会うことになったらしい。


 モルドって人は俺たちを牢屋に入れようとしてたようで少し安心……なのか?まだどうなるかは分からないか。


 そう門番さんは兵士さんに言ったあと、門を開き俺たちを中へと入るよう促してくる。


「ようこそ。リュカ村へ。そんな大きい村じゃないがゆっくりして言ってくれ」


 兵士さんは門番さんのその言葉も不思議なのか、不可解な顔をしながら俺達のことの先導を続ける。


 その中は木造建築の家が建ち並んでいた。


 門の中へ入り、真っ直ぐと進んでいく。


 そして一本道の先に一際目立つ大きな屋敷のようなものがあった。


 その門の前に杖を突いて年老いたおばあさんとそれを支えるようにメイドさんが居た。


「おばば様!?なんでこんな所にまで出てきているんですか?」


 兵士さんが驚いた様子で言う。


 あの人がおばば様なのだろう。


 おばあさんはその兵士の顔をチラッと見たあと、その言葉を無視してこちらへと近付いてくる。


「ようこそいらっしゃいました。私の名前はファタリア・A・タカハシと申します」


「タカハシ……?!」


 日本人の苗字じゃないか……?


 いや、たまたまかもしれないし。でも今まであった2人は金髪だったがこの人は黒髪だな……


 そう考えているのに気が付いたのかおばあさんは続きを喋る。


「私の先祖様は異世界人。つまりあなた方と同郷の方かと思われます。もう何百年も昔の話ですがね。さて、皆さん色々気になる事があるでしょう。ささっ、中へどうぞ」


 メイドさんが屋敷の門を開き、俺たちを中へと入れてくれる。


 そしておばあさんは屋敷の中へと入っていき、俺達もそれに着いていく。


「おい、おばば様。俺に詳しく説明してくれよ……」


 兵士さんはメイドさんに締め切られ中に入ることは出来なかったようだった。














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異世界召喚された召喚士は勇者に嫌われているので静かに過ごしたい 楓華 @huukaki_

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