第4話  (君と)やりたいコト

「おーい!どうしたー?」

「あっ、ああ悪い。ちょっと思い返してただけだ。昔のことを」


「ふふーん、そうかそうか、わタシとの思い出はそんなに大切なのか」


こいつ、昔のイメージとだいぶ変わって、生意気になったな。


「そういえば、君さっきから日本語普通に喋れてない?」

そう、今違和感を感じたのだが明らかにおかしかった。

学校の自己紹介ではカタコトだったし、さっきまでも……


「いやあ、緊張すると、喋れなくなるんだよねワたし」

もじもじして言いにくそうな態度をとる。

まあそれならわからなくもない。


「言っておくけど、ワたしだってネイティブみたいにハナセないよ、マタマダ知らない言葉があるから勉強してル!」


「わかったわかった、ゆっくりでいいから」

早口になるとやっぱり発音や語句が間違ってしまうようだ。


そこも外国人という要素と合致してなんとも可愛らしく思える。


「じゃあもう用事は済んだな。俺はこれでおいとまさせてもらおう」


「おういとま?」

「あー悪い、難しく言ってしまって、帰るって意味だ」


まだ配慮が足りなかったみたいだ。これでも異国の言語を喋ってるから、そう思うと尊敬してくる。


「むー、古い知己に対してそれだけ?」

「いや知己ではないだろ。知り合って長いけど……長いだけでお互いのことを知ってるわけでも———」

「はいはい、イイですそういうの、伝わればいいんです言葉は」


「適当に俺の言葉をあしらうところも少し生意気になったな」

「失礼でスな」


そこでふと思い出したように言った。

「そウいえば、日本に来たらしたいことがあった!たくさん!」

「たとえば?」



「うーん、漫画を部屋中に埋めたり、日本の友達つクったり、たこ焼きぱーてぃしてみたり!」

そこまで聞いてちょっと嫌な予感がした。


「ああ、確かに憧れるよなそういうのって、んじゃ頑張ってねー」

「止まれ」

「んぐえ、えりを引っ張るな」

「言い忘れたことがアル。君と漫画を買い揃えて、君が一番目の友人になって、君とたこ焼きぱーてぃするつもりだから。手伝ってね(笑顔)」


笑顔が怖いよぉ

「……ちなみに拒否権は?」

「そんなもの最初から無い!(笑顔)」


まぁ聞いたところ難しいものはないし、案外すぐ終われるだろう。


「トいうわけデ、今すぐできる1個目の願いをシヨウ!」

「今からできるやつがあるのか?」

「うん、それはね!君が私に日本語を教えること!」

それはいいけど……

「もう十分上手だと思うけど……必要あるか?」

「ある!もうネイティブみたいにウマくなりたいの!」

「そっか、ならやるか」

定期的に教えないといけないけど、まあそこまで長くは続かないだろう。


「あそこに買ったけど読んでない日本語の参考書たくさんアルよ」


そう指を刺した先には、小さな本棚があって、何冊か日本語勉強用の本があった。外国人のための本みたいだが、随分と埃が被ってるな。


『家で勉強を教えるとか……もう恋人と変わらないでしょ?!』



「ん?ごめんなんって?この教科書読んでて聞こえんかった。っていうか中国語喋ってた?」

「なんでも、たこ焼きぱーてぃ二人だけだったら少し寂しいなって」


「あーそれは確かにあるな、今度友達できたら他の人も誘えば?」

「……うーん……考える」





作者のタヤヒシです。

出ました定番の、難聴系主人公ですよ。

あんま鈍感すぎる主人公は気に食わないが、今はまだ作者として己を許す。(何言ってるんだ)

あ、まさかサブ題名で変なこと考えた人いないよね?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る