第2話 覚えて…ナイ?
いやいやいや!
好きって言った今?なんでどうしてなぜ!?
「わタシの名前!中こく語発音はスキ!まえ教えたよ!」
混乱してる俺を見て、覚えてないと悟ったのか、
「遠崎さんと思琪さんって知り合いなの?」
たった数十秒でクラス全体がカオスになった中、割入ったのはオタク友達の本多だった。
「いや、見覚えあるような無いような……」
本多はいかにも陽キャみたいなテンションがあるが、そのテンションは気を許した相手にだけだ。
というのも、彼女と俺は付き合いがまあまあ長いオタク友達であり、毎晩マインで漫画やアニメを語り合ってるのだ。
「そうダよね……ワスレてる……ヨネ」
いや、そんなにへこまないでくれ、めっちゃ申し訳なくなる。
「デシたら、アトで!あとで来て!!」
「お、おう」
そう答えたはいいものの、ここからが気まずいのだ。
休み時間は10分。今はその内2分しかすぎてない……
ここからどうするか悩んだが———
「ねぇねぇ思琪さんって日本語どれくらい喋れる?!」
「遠崎と知り合いなのか?!」
「まさか本当に好きだったり?!」
やはり転校生、ましてや可愛い外国人となれば人気はあるもので我よ我よと人波が思琪に押し寄せていく。
「ほんとに知らない?あの子」
そして俺の元に残ったのは本多さんだけという……
いや!一人いてくれるだけで俺はぼっちじゃ無いんだ!!
「うーん……なんか既視感がなくはないけど、覚えてない……」
「でもあっちは君のこと知ってるみたいだし、君だけ覚えてあげてなかったらただの最低クズ野郎だね」
「っぐは、既に悪役だと決めつけるような言い方はやめてくれ」
「っふふ。どうかしらね?君に良い役なんて想像もつかないのだけど、ね?変態さん」
本多はいつもこうだ。
好きなアニメがちょっとえっちだったり、妄想じみてるだけで変態だの言ってきていつも揶揄ってくる。
「それともドM君がよかったのかな?」
「だから俺はドMじゃなくて、二次元の女の子に軽蔑される視線が好きなだけで、三次元には一切関係ない!むしろ虐げられるのは大嫌いだよ」
「はいはい」
やはり揶揄ってくるところは苦手だが、美人なだけで頭が上がりにくい。
キーンコーンカーンコーン
「思琪さんまたあとで話そうねー」
一方思琪の方はというとチャイムが鳴ってやっと人が減りつつあった。
放課後のホームルームまではなんとも言えない寒気があった。なんというか、ずっと睨まれてるような……うん、きっと気のせいだ。
「えーでは、明日も遅刻がないように、日直」
先生の最後の挨拶によって1日の学校生活はやっと終わりそうだ。
帰ろうとするが——
「ねえ!」
「うおっ、思琪さんどうしたの?」
「ワたし、はなしがあるってイッタ」
あ、あぁそういえばそんなこともあったな。
思琪に会ったことがないか考えすぎてその本人との約束を忘れていた。
「彼女たちとは帰らなくて良いのか?さっき誘われてなかった?」
「いいえ、あなたにようじがあるだから」
心当たりはないことはないが、覚えてないと言って良いほど綺麗に忘れてるから何を言われるか不安だ。
「えーとそれで、用事っていうのは?」
「ワたしと君、前にあってて、それで今ここにいる……わかる?」
「うーん、会ったことがあるのは理解だけど、それ以外はさっぱり……ごめん」
日本語で表すのが難しかったのかなにやら困ってるようで、手でなんとかジェスチャーしようとしてるが、俺には円を描いてるようにしか見えない。
「もおおどうイエばいいの!?アアアちょっときょう、私ン家に来て!」
「いやいや、おかしいおかしい」
思わず突っ込んでしまったが間違ってはいない。
男女でどちらかの家に行くことすら親しくなければ許されないのに、俺らまだ出会って1日目だぞ?
しかもこんな美人の家に行って誰かに知られたら絶対めんどくさくなるし、そもそもこいつ男を家にあげることに危機感ないのか?
「とにかく!行くの!!」
しかし彼女は俺の言葉が耳に入ったか怪しいまま袖を引っ張ってくる。
「わかったわかった。行くからせめて自分で歩かせて」
今は5月後半、まだクラスの中での固定グループが出来てる途中だから、まあきっと彼女もすぐグループに馴染めて俺とは縁遠い存在になるだろう。
どうせ関わりがなくなるのだからこの時はあまり気にせずについて行った……のが全ての始まりだった。
どうもタヤヒシです。
新作は最初らへんほぼ毎日投稿頑張ります!
ヒロインの言葉読みにくかったら申し訳ありません!
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