イ為りの愛
第27話 愛しの人のアドバイス
「……消えちゃった……」
私の口は自然とそうつぶやいていた。
ここは、実くんの家(大豪邸)で、そこにて開かれた祓いの著名人たちが出席するパーティーに私は参加しているのだ。
そして必然的に、この家の人である実くんと、祓いの著名人である愛田霞七子もいるはずだ。実際いた。
だが、突然消えてしまったのだ。
理由は、さっきの会話からして、一つだろう。
「六大妖だね」
思考をめぐらせる私の前に、黒い髪の毛ををボブにした、女の子が現れた。
顔は小さくてまんまる。そして、対照的に目は大きいけれど、やっぱりそれもまんまるで、中にある蜜色の瞳は輝いている。そしてやたらと色が白い。そして、全体的に小さくてかわいい。
……そして、私の愛しの人だ。
私の声帯はまたもや自然に音を出す。
今度は自分でも酔いしれてしまうほどの甘い音を。
「弁才天さまぁ。好きです。愛しい。愛してます!」
「やぁ、愛ちゃん。ここ、ビーフステーキ美味いね」
「それより、聞いていたんですかぁ〜〜?あのはなし」
「うん。全部ね。」
弁才天様はニコニコしながら答える。かわいい。好き。愛しい。愛してる。
「でぇー、どうしたらいいと思いますぅ?私の弟子いなくなっちゃったけどぉ」
「愛ちゃん。こういう時は、招語だよ」
「そうですねぇ!弁才天様、天才!」
招語とは、祓語の応用で、文字通り霊を自分の元へ、招くものだ。
けれど、相手は強力な妖。こちら側に招くというのは十割以上の確率で無理だといえる。
というか、こちらの術が跳ね除けられてなにも起こらない可能性も十分にある。
だから私が狙っているのは、私があちら側に召喚されることだ。
これは、こちらとあちらの力が、ほぼほぼ同等だった時に起こる、引き寄せる力とこばむ力が作用して、起こるレアな現象なのだが、六大妖と三耽溺花は同等の力量といわれているから、これが一番可能性が高い。
「わびぬれば、今はた同じ、難波なる、身を尽くしても、逢わんとぞ思う」
「来る」とき同様の見えないなにかに押される感覚がしたのは束の間、今度は私が引かれるような感覚に見舞われ、気づいたら━━
「こんにちは!生田目愛、ちゃんかな?」
「貢献ですよね?実くんはどこですか?」
壁も床も真っ白な何もない空間に迷い込んでいた。
まぁ、私の家も何もないけど。
私はとりあえず、目の前にいた私の学校の女子たちがキャーキャーいいそうな顔をしている男に問う。
「質問を質問で返すなよ。……ん」
その男は、明らかに無愛想になりながら、形のいい顎を左側へと向けた。
そこには━━目当ての実くんを始め、誠陵忠、愛田霞七子が倒れ込んでいた。
誠陵忠、愛田霞七子は正直どうでもいい。けれど、実くんが倒れ込んでいることは信じられないけれど、少し心がザワザワする。
この気持ちになんと名前をつけていいかは自分でもわからない。
でも、貴方はかわいそうな人、そのことだけは嫌なほどちゃんとわかっている。
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