第21話 友好の秘訣は美味しいごはんよね♪

 う、う~ん…


 後、15分…


 って、あれ?


 ぼんやりする頭。

 痛むカラダ。

 わたし、確か豚人オーク達と戦って、ボロボロになって…


 そうそう、フウガさまに抱えられ白狼の部族の集落まで来たのはいいんだけど、そこで気を失ったのよね。


 服は、何か白狼の部族の平服みたいなの着せられてる。何て言うか、弥生時代の人たちが来てるようなあんな感じの、ね。

 というか、フウガさまに助けられてからはフウガさまの陣羽織着てたから…


 

 そう、



 裸陣羽織…



 何か、すごいネーミングだわ(汗)


 洗って返さなきゃ!



「あ、ルクスリア姫様!」


 側に控えていた森人エルフのエルスがわたしの覚醒に気づく。

 そして、乗り物の白狼のお尻をぽんぽんと叩く。


「皆様~!ルクスリア姫様がお目覚めになられましたよ~!」

 狼をゆっくり駆けさせて情報を伝達させる。



 

 ドドドドドドドッ!!



 何かがものすごい勢いでわたしの部屋に迫ってくるわね。

 

 うん。


 何か、このパターン、嫌な予感がするわ。


「ルクスリア!!」

 

 げ、げぇ!ま、ママッ!


 何でこ、ここに…


「怪我はないかしら?大変だったんでしょ?怖かったでしょ?ママが抱き締めてあげるわ!」


 や、やめて!


 やめてママ!!


 ハグは、ハグはダメだからね!


 アバラが折れている、Noooooooooo!!


 ベキベキベキベキッ!! 

 そんなこと関係ない、ママの愛情たっぷりのハグは、わたしのアバラを粉砕する勢いでした。



 ママのハグ>>>越えられない壁>>>>>豚人オークのベアハッグ。



 という感じね…

 言うまでもないけど、ママのハグの痛みで気絶したからね。


「ルクスリア!やっぱり、あなた最近少しおかしいわね」


 そう言い、ママはわたしの髪を撫で、頬っぺたをつっつき、そして…


「ななな、なにするのよ!ママ!?」


 いきなりおっぱいをわしっと揉んできた。


 な、なんなのこの母親…


「やっぱり!髪の毛の艶も、お肌の状態も、胸の張りもよくないわ!」


 そ、そうなの?

 ま、まぁ、小鬼ゴブリン退治の件からバトルが続いたから、そこはケアが行き届いていなかったかな。


「あなた、セックスしてるの?」



 ぶふっ!?



 な、何を聞いてくるんだ?この母親わ(汗)?


「その様子だとしてないわね!ダメよ!しなきゃ!」


 は?


 あ、あのぅ、娘に「セックスしなきゃダメ」とか、どゆことですか?


「セックスしないとパワーがでないわよ!」


 頭がついていきませんわ。


「う、うん。相手がいたらね」


 ちょっぴりフウガさまを思い浮かべるわたし。

 つまり、今、わたしが真っ先にセックスしたいかも。と思っているってことかな?


「そ、それはそうと。ママはしてるの?」

「なぁに?そっちの、お話?おませねぇ♪」

 嬉しそうなママ。

「もう欠かさずパパと、愛し合ってるわよ?知ってるくせにぃ♪」


 は?ま、毎日っすか…


 の、惚気かよ…


 よくもまぁ、毎日同じ相手と…

 とか、言いながらフウガさまを思い浮かべるわたし。

「まぁ、パパとママがラブラブなのは分かったわ。もう。幾つになっても、オアツイのね」

「幾つにもなって?もう!何を言ってるの?ルクスリア。ママはじゅうななさいよ。間違えないでね」


 は、はい?


 じゅうななさい、ですか?


「えっとね、わたし。100年寝てたのね。それでもママはおいくつ?」

「だから、じゅうななさい。よ♪」

「あのね。そうすると、わたしより年下になるんだけど…?」

「うん♪それでも、じゅうななさいな事に代わりないわ♪」



。。



。。。



 こ、この、母親ぁぁぁぁぁぁ!!

 じゅうななさい教の方でしたぁぁぁぁぁぁ!!!

 どうりで、お声があの教祖様に似てるとおもったのよねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!



 それはそうと、どうやらママはルナと一緒に白狼の部族の集落に来たみたいね。

「姫さま、新しいお召し物です」

 ルナは新しい服を用意してくれたし。


「はぁ…」


 ルナの前でため息なわたし。


「如何されましたか?」

「いゃぁ、朝っぱらからママにセックスしなさい!とか言われて困っちゃったわ、あなたはしてるの?」

「いえ、私はしません。余程の事がない限りした相手は死にますから」


 ん?


 しれっと、とんでもな発言だわ(汗)


「私は元々、暗殺者アサシンですから、秘部にはありとあらゆる毒が仕込まれています」


 お、おおう…


 この、おっかないメイドさんは本当におっかなかったのね…

 道理で、暗器や毒物に詳しいわけだわ(汗)


「奥方さまは始祖の因子を強くお引きです。勿論、姫さまも」


 ん?始祖の因子?新しい設定ね。


「そういえば、記憶をなくされていましたね。今度レクチャーいたしましょうか?」

「うん、お願い」


 そして、わたしは改めて白狼の部族の長であるフェルと面談する。


「ルクスリア公女、この度は前族長の兄が大変な失礼を働きました。平にご容赦ください」

 土下座するフェル。

「いいわよ。済んだことだし。それよりも、わたしはあなた達白狼の部族の皆と仲良くしていきたいな」

 ぱあっと明るい表情で顔をあげるフェル。

「いえ。姫さま。許してはなりません。姫さまを危険な目に合わせたのです。処罰としては絶滅が相応かと…なんなら私が」

 ルナが割って入ってくる。

「あなたは、少し話が飛びすぎよ!そこまですることじゃないわ。わたしはフェルと友達になりたいの!」

 左様ですか。とあっさり引き下がるルナ。

「私も森の外と交流を持たないといけないと思っていました。是非ともお願いします!」


 最初は、ただ、なんとなくだった白狼の部族との友好関係はわたしのお城?街が発展していくのに大きな力になってくれるんだけど、それは少し先の事。


 実際、動物の毛皮や角なんかはいい素材だし。いい、交易品よね。

「そうねぇ、エルス」

「はい。ルクスリア姫様」

「あなたに白狼の部族との連絡の係?大使みたいなもの?をやって欲しいのだけど、どうかな?フェルとも仲良さそうだし、森の方があなたが生き生きしそう、だから」

「はい!是非とも!大任を勤めさせていただきますわ!」


 トントン拍子に話が進む。


「フェル。提案があります」

「何?」

「友好の証しに、宴会などはどうでしょうか?」

「あら、同じ事を考えてたわ」


 どうやら、本当にエルスとフェルの相性は良いようね。


「つきましては、ルクスリア姫様」


 ん?何?


 唐突に話を振られるわたし。


「是非とも白狼の部族の皆様に《あの》お料理を振る舞って頂きたいのですが…」

「ん?何のこと?」

「ですから、ピリリとスパイシーなあのお料理ですわ。えーと…」


「エルス。それは、もしかして、かしら?」


 割って入ってくるママ。


「ルクスリア!ママも久しぶりにあなたのカレーが食べたいわ♪」


 カレーですかい!


 まぁ。大鍋だから、楽っちゃ楽だけどね。


「ん~。まぁ、そういうことなら皆でお料理しましょうか!」


 カレーを知るお城の皆の顔が明るくなる。

 ちなみに、あのつっけんどんなルナもカレーと聞いて少し頬が緩んだわ!

 ははぁ~ん、さすがのルナもカレーには勝てないのね!

 見逃さないんだから!


「カレーも、いいけど、折角だから白狼の部族のお料理も食べてみたいし、作ってみたいな、わたし」


 ルクスリア姫様は料理巧者ですのよ。と付け加えるエルス。


「そういうことなら、是非に!部族の皆も喜びます!」



 こうして、わたしは白狼の部族のみんなにカレーを作ってあげたの。

 ちゃっかり、ルナが必要なスパイスをマジックポケットに常備していたのには驚きだわ。

 ワイルドな白狼の部族の郷土料理を美味しくなるようにアレンジ。


「ん?良い匂いだな。旨そうだ」

「おお!肉たいね!」

 お料理の匂いにつられて逗留していたフウガさまとギンカさんもやってきたわ。


 フウガさまも食べてくれるのね!

 よ~し!胃袋掴んじゃうぞ!


 白狼の部族の郷土料理ね。

 まずは木の実から作ったパンみたいなの。主食みたいよ。

 それに、ワイルドに焼いたお肉ね。

 鹿とか兎、猪なんかのお肉みたいよ。

 そのお肉とお野菜なんかを木の実パンに挟んで食べるのが基本みたいね。

 後は、シュクメルリみたいなパンチの効いたお料理も出てきたわ。

 山羊を飼っているみたいで、そのお乳からミルクやチーズを作る技術も持っているみたい。


 それと、わたしのカレーね。

 カレーは大好評よ。

 特に、ギンカさんなんか…


「うまか!うまか!フウガ!これ作れるようになれ!」

 な~んて、子供みたいにカレーをパクパク食べてたわ。

 そこから、お酒も入って大宴会の始まりね!

 わたし達と白狼の部族の信頼関係を作っていくのはこれからだけど、やっぱり美味しいご飯を一緒に食べれば仲良くなれるよね!

 最初のステップとしては、上々かな? 



 エルスを元気付けるために連れてきた森での騒動は、結果オーライ。

 フェルやギンカさん。

 それにフウガさまとの、出会い。



 


 それにしても、この宴会の後にとんでもない事をしでかしてしまったんだけど、それはまた別のお話し。

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