第3話 大問題!!ごはんが…不味い!!

 ルナに説明を受けながら城内とお庭を散歩。


 さっすが、お城。


 一回りするだけでも結構な運動量ね。

 ルクスリアさんの身体は100年寝ていたそうだから鈍りに鈍りまくってそうだし。


 わたしが目を覚ましたという話しは「あっ」という間に城内に広がりました。


 行先、行先で「姫さま!姫さま!」って声をかけられる。

 ルクスリアさん、人気者だ。

 そりゃそうだ、キレイだもん!


 声をかけられる度に手を振り微笑みで答えるわたし。


 何だかんだでお城のメイドさんや兵隊さんやら使用人の皆さんに挨拶したり、事情を説明していたら、夜に。


「姫さま。そろそろ夕食の時間です」

「分かったわ。ルナ。案内して」


 ルナに連れられて行くとそこにはお父さんとお母さんが待っていました。


 じ~ん。感動…

 こういう団欒的なことしたかったんだよねぇ。


「ささ、ルクスリア。座りなさい」

「はい!」


 わたしはワクワクしながら席に着く。


 だって、お姫様の食事だよ!

 きっと、豪華よね!


 もやしとインスタントラーメンからはオサラバだわ!


 テーブルに並べられるのはスープ。

 フムフム。赤いからミネストローネ的なトマト系のスープね、きっと。


 スプーンですくって一口飲む。



 ………?



 あ、あれ?


 もう一口飲む。



 ………………?



 あれれ?


 トマトの風味はするけど、味が、ない…

 具もない。


 「ねえ、ママ」

 「なあに?」

 「このスープってこんな味なの?」

 「そうよ?それがどうかした?」

 「ううん。何でもない」


 何か、温めただけの味の薄いトマトジュースって感じ…


 次にサラダ。


 すでに小皿に取り分けられているみたい。



 レタスなのか、ケールなのかなんか葉野菜が見えるわね。


 ぱくり


 あれれれ?



 やっぱり、味ない。

 ドレッシング的なサムシングもかかっていない感じ。


 魔族ディアボロのご飯って、薄味なのかなぁ…


 まぁ、味なしはなれてるから大丈夫っちゃ、大丈夫なんだけど。


 これが、お姫様のご飯ねぇ…


 そして、メーンの肉!ステーキね!


 でも、ちょっぴり嫌な予感…


 やや厚めに切られてよく焼かれた、ウェルダンなステーキね。

 ナイフで切って、一口。



 かたい!味ない!スパイスも効いてない!


 なんじゃこりゃ!


 有り体に、不味い!!

 

 

 ま、まぁ、それでも現代の時よりは豪勢なご飯だから文句はいわないけど…


 きっと今日は起きたてのわたしを気遣って薄味にしてくれたのよね?


 ウンウン。



 認識が甘かったことを後日わたしは思い知る。



 。


 。。


 。。。



 転生して1週間。



 わたしは毎日毎食同じ様な味のないトマトスープとサラダとステーキを食べさせられていた。


 これならもやしとラーメンの方がマシだわ。。。



「ねえ、ルナ」

「なんでしょう?」

「あなた、今日何食べた?」

「何も」

「は?」

「ですから、何も」


 衝撃発言である。



「え?食べないの?」

「はい。必要ありませんから」


 ??どゆこと??


魔族ディアボロは食事をそこまで必要としないのです」

「そ、そうなの?」

「はい。2、3日に1度何かいただければ問題ありません」

「じゃ、じゃあ、美味しいものとか欲しくないの?」

「美味しい?美味しいとは何ですか?」


 な、なんですとー!


 美味しい、という認識がないの!魔族ディアボロって!


「ちょっと、まって!キッチン連れてって!」



 わたしはドカドカとキッチンに乗り込む。



「おお、これは姫さま。キッチンに何用です?」

「シェフ!美味しいモノつくって!」


 ???


 顔を見合わせるキッチンの人たち…


 ま、まさか…


「姫さま。美味しいとは何ですか?」



 ぐわぁぁぁぁぁ!やっぱりーーーー!


 美味しいモノ食べるっていう認識がない種族でしたぁぁぁぁぁ!!!



 。


 。。


 。。。


「シェフ。とりあえず、食材と調味料を見せて」

「は、はあ」


 しばらくして怪訝な顔をしたキッチンスタッフが食材を持ってくる。


 いつもの、かたい肉。

 トマト、じゃがいも、人参、玉ねぎなどの、野菜。    

 お米もあるようね。どうやら野菜の感じは現代と大体同じな様ね。

 


 調味料。

 塩、砂糖。トウガラシ。胡椒等々。さすがにお醤油はないわね。

 その他スパイスは充実。

 

 ワインはたくさん。


「シェフ。一番大きいお鍋持ってきて」


 わたしに言われるまま用意されたのは、炊き出しとかにも使えそうな大きなお鍋。


「よし。これから、わたしと一緒に美味しいモノを作ってみよう。それで、美味しいというものをおぼえようね」



 クッキングタイム!スタート!


「はい。あなたたちは、お芋と人参とお肉とトマトを一口大の同じくらいの大きさに切って」


「あなたたちは玉ねぎをスライスとカットの2通りの切り方して。こんな風に」


 わたしは口では説明しにくい玉ねぎのカットを実演する。


「はい。そうしたらあなたたちはお米を炊いて」



 野菜とお肉のカットが終わる。


「さて、じゃあ、外のかまどに行きましょう。ルナが火を起こしてるはずだから」


 みんなで協力してお鍋や食材を運ぶ。


「姫さま。如何でしょうか?」

「うん、良い塩梅よ」


 わたしは鍋を火に掛ける様に指示。


 軽く油を敷いて馴染ませる。


 少し煙が出てきたところで玉ねぎスライス投入。


 何作ってるか分かるよね?


「玉ねぎが飴色になるまでこんな風にじっくり炒めてね。これくらいになったらトマトとスパイスを入れて更に炒めるよ」


 スパイスの良い香りが立ち込める。


 これこれ!みんな大好きな匂いよね!


 ある程度まとまり、汁気が飛んだところで即席のルーを1度別皿に取り分けます。


「はい。そうしたらまた油を敷いて、野菜とお肉を炒めてね」


 わたしの指示通り調理するみんな。


「何をしているのかな?」

「良い匂いね、ルクスリア」


 パパとママが匂いに釣られてやってくる。


「えへへ。みんなで『美味しいもの』を作ってるの。2人も待ってて!」


 そしたら、お鍋にお水をヒタヒタになるまで入れて、沸騰するまで待ち。


 その間に葉物の野菜を適当に千切ったものと余った人参を細く切ったもの、タマスラ、ダイスカットしたトマトをサラダボウルに入れる。


 後は、別のボウルに酢と油と塩、胡椒。少しのレモン汁を入れてホイッパーで混ぜる。ドレッシングね。

 ドレッシングをかけてよく和える。


「姫さま~。沸きました」

「じゃあ、こんな風に灰汁をとって」

 わたしは灰汁の取り方を教える。

「灰汁がなくなったら、ルーを入れてゆっくり焦げ付かないように混ぜながら少し煮込む」


 小麦粉が入ってないからとろみはほとんどないけど良い匂い♪

 少し味見をして味を整える。


「よーし!出来たよ!お城のみんなは来た?来たね?さあ!みんなで食べよう!」


 わたしは盛り付けを見せて、キッチンスタッフ達に同じ様にやらせる。


 カレーとサラダのできあがりね♪


「さあ、食べてみて!」


 わたしが薦めるカレーをみんな恐る恐る口にする。


 味見して、美味しいのは確認済みだからね。



 !?!?!?


 みんなが顔を見合わせる。


 一心不乱にカレーを食べるみんな。


「どう?『美味しい?』」


 満面の笑みでみんなは応えてくれました。




 この日を境に、わたしのお家を中心に色々なお料理が広まっていくの。

 ま、みんなわたしが現代で覚えた料理だけどね。


 というか、お姫様になって早々に、カレーを作ることになるとは思わなかったわf(^^;




 でも、まだまだお家の問題がたくさんあることをこの時のわたしは予想だにしてなかったのよね…



 はぁ…(ーдー)=3

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