第4話 よ、弱ッ!ウチの兵士のみなさん、弱すぎ!

魔族ディアボロは12種族の中でもフィジカルが強い方ではありません」

 

 ルナから各種族の大まかな特徴についてレクチャーを受けているわたし。

 わたし達魔族ディアボロは、今聞いた通り、肉対面は強くないみたいね。

 草人グラスランナー森人エルフの次にフィジカル弱いそうな…

 フィジカルが弱い理由は鍛えても筋肉がついたりするような身体の構成をしていないそうよ。

 ごく稀に、筋肉が発達する特異体質(魔族的には)が産まれるそうよ。

 その分、魔法面ではトップ!容姿は魔族、森人エルフ海人マーメイドがトップを競っているそうな。

 魔族には寿命もあってないようなもので、人間的には20歳くらいの外見からほとんど変わらずに過ごすんだって。その分、出生率は低め。


「ですから、弱いフィジカルを強化魔法で補うのが一般的です」

「なるほどねー。その強化魔法ってわたしも出来るの?」

「はい。記憶をなくされる前は使われていましたから、身に付いておられるはずですよ?」

「そっか!じゃあ、色々と魔法の使い方、改めて教えてよ!」

「畏まりました。では、修練場に参りましょう」


 こうして、修練場に行くわたしとルナ。

 道場通いを思い出すなぁ…

 隣のおばさん(お姉さんくらいの年だけど)からみっちりカンフーとお料理とか叩き込まれたのよね。

「では、姫さま。先ずは、あの木人に打ち込んでみましょう」

 ルナが指差すところには訓練用の木人が。

 よーし!久しぶりに打ち込みますか!


 わたしは木人の前で構え、呼吸を整え、肘を引きながらやや屈み込む様な姿勢を取る。

 そして、力を溜めて思い切り踏み込みながら木人に肘からぶつかる。



 バキッ!バキッ!ズドーン!



 あ、あれ?

 木人、ぶっ壊れてぶっ飛んだ…

 ひびでも入ってたのかなぁ……


「ひ、姫さま。何をなされたのですか?」

「え、何ってただの頂肘、だけど…」

「チョウチュウ?肉体強化フィジカルエンハンスは、当然お使いに…」

「なられてません。それをこれからあなたに習うのよ?」

「いえ。肉体強化フィジカルエンハンスなしに、魔族ディアボロの筋力で木人を破壊するとか、ありえません!」

「じゃ、じゃあ、それ教えてよ。それからもう一回やってみるから!」

 わたしはルナから肉体強化フィジカルエンハンスのやり方を習い、何度か練習。感覚を掴んだところで、隣の木人に向け、同じ様に頂肘を繰り出す。



 メキメキ!

 バキッ!バキッ!

 ミシッ!ミシッ!!

 


 あ、まず(汗)


 バッキーーーーン!

 グシャ!



 バラバラバラ…



 肉体強化フィジカルエンハンスされた頂肘の威力はとんでもなく、木人を根元からぶっ飛ばし、壁まで吹き飛ばす…


 木人、粉々…


 壁、崩れる…


 

 う、うん。



 ヤバ…



 これ、弱い木で出来てる木人なのよね?

 そうよね?

 そうに違いないわよね!


 焦るわたし。


「…何をなされたのですか?」


「いや、その~。。。踏み込みの力の伝達のさせかた、としか…あははは」



 頭を掻いて誤魔化すわたし。


「夢の中で学んだことですか?全く、末恐ろしい方になられました。これで魔法をしっかり覚えられたらと思うと…」


 うっ!何か悪いことしたかなぁ…

 頂肘なんて八極拳の基本なんだけどなぁ…


「心が踊ります」


 へ?


 意外なルナの言葉。


「先に言っとくけど、この歩方や踏み込みやら呼吸は一朝一夕では身に付かないからね!」


「はい。その格闘術はおそらく魔族ディアボロでは姫さましか出来ないでしょう。もしかしたら、無意識で肉体強化フィジカルエンハンスをしていたのかも知れませんね」


 そっか、自己防衛の本能みたいな、ヒトが無意識にしている力の制御とかなのかな?


「おそらく、あの技の威力の反動に魔族ディアボロの肉体は耐えられません。後程、身体のあちこちが痛むやもしれませんが、その場合は運が悪かったとお諦めを」


 ルナって、たまにしれっととんでもないこと言うわね。


「おお、これは姫さま。修練場に如何されましたか?」


 我が家の兵隊さん?騎士になるのかな?の隊長さんがわたしに声をかけてくる。


「こんにちわ。隊長。ルナに色々教わってるの」

「なるほど。ルナは当家で一番強いですからね」

「え?そうなの?」


 わたしはルナをチラッと見る、


「私などまだまだ。一番強いかどうかは存じませんが、100年前に姫さまをかのような状態にさせてしまってからは、1日たりとも鍛練を怠ってはおりません」


 なるほどねー。


 ここで、少し違和感が…

 


 ん?

 100年、ずっーとルクスリアさんのお世話をした上での鍛練…


 このヒト。休んでるのかな…



「それはそうと。隊長さん。やたらボロボロねぇ」


「いやー、お恥ずかしい。領内に現れた小鬼ゴブリンを退治に行ったのですが、遅れをとりまして…」


 へぇ~



 へ




 え?




 ヱ?



 えええええええええッっっ!!!!



「ご、ご、ご、ゴブリンに遅れを取るって、どーゆーことよ!」


「いや、意外に手強くですなぁ」


 

 いやいや、さすがに小鬼ゴブリン相手に遅れを取ったらダメでしょうが…

 こ、こうなったら…


「隊長。当家の兵士のみんなを呼んで。心配なので、わたしが少しみんなの強さを確かめます」


「は、はぁ」



 わたしの提案に、仕方なく従い、怪我をしていない兵士さんを召集する隊長。



 こほん


「えーと。今、みんなが小鬼ゴブリンに遅れをとったと聞きました。そこで、みんなの強さを確かめたくなりました」


 ざわつく


「早速はじめるわ!じゃんじゃん掛かってきなさい!」



 数分後…


 目を疑う光景になっちゃった…



「ルナ」

「はい。姫さま」


 すぅーっと一呼吸のわたし。



「コイツら弱すぎいいいいいいいいいいいいいい!」



 兵士のみなさんは、例外なく、わたしに一撃でのされました。

 因みに、八極拳はつかってないからね!



「確かに、ここまでとは…お恥ずかしい」



 ルナがペコリと頭を下げてくる。


「やはり、ここは私が訓練教官にもどり、1から鍛え直すしかありませんね」


 へ?

 ルナって訓練教官だったんだ。


「ルナ。そそそ、それは止めた方がよい。そなたは今姫さま専属ではないか!」


 やたら焦る隊長さん。


「いえ。この体たらく見過ごせません。今日から1日最低20時間は鍛練をさせないと…」

「ひ、姫さまからもルナに何か言ってやって下さい!」


 わたしは2人の間に入り

 隊長を、ビシッと指差す。


「とりあえず、あなた達弱すぎ!訓練は強化ね。20時間とは言わないので、メニューはわたしがかんがえてあげるわ」


「ルナ。小鬼ゴブリンって放っておいて大丈夫?」

「いえ。問題になります」

「わかった。じゃあ、行きましょうか」

「何に、ですか?」

「もちろん、わたしとあなたで小鬼ゴブリン退治」

「いえ。それなら私1人が行けば済むこと」

「ダメ!危ない!それに、小鬼ゴブリンがどんなものか分からないと、それより弱い連中を鍛えられないでしょ!」


 まあ、何かと理由を着けて小鬼退治に行こうとするわたし。

 ぶっちゃけ、そろそろお城の外に出たいのよね!


 はぁ~、とルナはため息。

「昔からこういうのは聞き入れませんでしたね。それに、姫さまなら小鬼ゴブリンなどに遅れを取ることはないでしょう」


 そらなら!


「2日お待ちを、私の方で下調べや姫さまのお召し物や冒険のご用意をして参ります」

「とか言ってこっそりやっつけてくるとかしないでよね!」

「それは致しません。小鬼ゴブリンなど私1人で十分ですが、用心に越したことはありませんから」


 ギロリと隊長を睨むルナ。


 うん。


 普通に、怖い。隊長がビビるのも分かる!



 こうして、転生して初の冒険に臨む事になったんだけど、その前に我が家の問題がまた発覚…





 おひひひひひひひ!



 どうなっとるん、ぢゃあぁぁぁぁ!

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