天王寺家の終焉

Side 天王寺 ゴウトク


「息子が――イチゼンが――死んだ?」


 そんな馬鹿な。

 

 認めたくはなかった。


 だが――


「おのれ――おのれ、おのれおのれおのれ!! もうこの国などいらぬ!! あの小僧どもも、その賛同者も全員殺してくれるわ!!」


 ワシはある決断をした。



 Side 木里 翔太郎


『天王寺 ゴウトクが大型のパワーローダーに乗って出撃してきた!?』

 

「昭和のロボットアニメかよってね。だけど分かりやすくていいわ」


 息子に続いて親父まで出撃してくるとは。

 まあサエの言う通りやる事が分かりやすくなって丁度いい。


『おのれおのれ!! 許さん!! 許さんぞ!! ワシのイチゼンを殺しおって!!』


 そう言って禍々しいフォルムの青いパワーローダーで周辺を破壊の限りを尽くすゴウトク。

 敵と味方の区別すら付いているのか怪しい感じだ。


『なにがイチゼンを殺しただ!? お前はそう言って一体どれだけの人間を殺してきた!!』


 だが俺は頭に来てそう返しながら攻撃した。


「そうよ!! 自業自得もいいところだわ!!」


 サエもそう言いながら攻撃する。


『黙れ黙れ黙れ!! ワシは天王寺家の人間!! ワシは神であり、この世の支配者だぞ!? それをよくも!! 生きて返さん!! 活かしてなる物か!!』


『息子と同じ事言ってるな』


 荒木さんの言葉に俺は『ああ、全くだ』と思った。

 子が子なら親も親だな。


『この機体は貴様らの様な奴を始末するためにワシが直々に準備したものだ!! これで全員皆殺しにしてくれるわ!!』


『どっかで聞いたセリフだな――』


 俺は思わず呟いた。

 サエも同じなのか「ええ、私も」と返す。


 だが実際火力は相当なもんで――本当にパワーローダーかよと言いたくなるぐらいの大火力で町を焼き払っていく。


『消えろ!! 消えてしまえ!! 息子がいないこんな世界など不要だ!! 消えてしまえ!!』


『いいや貴方の方だ、天王寺 ゴウトク』


 と、ここで谷村さんが現れた。

 パワーローダー、シュバルツセイバーを身に纏ってだ。


『僕は後悔している。避暑地で政治的な理由で貴様を活かしたことを――だからここで、貴様を討ち倒す事でこの一連の騒動を償わせてもらう!!』


『カッコよく決めてるところ悪いけど、今迄なにしてたの?』


 と、俺は思わず問い掛ける。


『核兵器の調査、無力化と総理大臣、関係閣僚の救出だ――つまり後はこの男を倒せば全てが終わりと言う事だよ』


 谷村さんはサラっとそう言う。

 知らない所で大活躍していたようだ。


「OK、分かりやすくていいわ」


 サエはそう言って攻撃を開始した。

 俺も、皆も攻撃を開始する。


『何故だ!? 何故こうなった!? 天王寺家は影から必要悪として日本を支えてきたのだ!! その末路がこれとは!! あんまりではないか!? 天はワシを見放したと言うのか!?』


『その続きは地獄で息子とじっくりやるんだな』


 と荒木さんがそう言いながら左背部の折り畳み式のビームキャノンを放つ。

 

『哀れなものですね。アレだけ日本国内で恐れられていた天王寺家の末路がこれとは』


 加々美さんもそう言って、攻撃を加える。

 

 加々美さんは暗部所属の人間であり、こうなる以前の天王寺家とか俺達よりも詳しいはずだ。

 その心中はどうなのだろうと思った。


『貴様らだけは!! 貴様らだけは!!』

 

 バリアも突破され、次々と攻撃が着弾していく天王寺 ゴウトクの機体。

 最後は――


『なっ!?』


 谷村さんが背後から決めた。

 動力炉への一撃。

 もう助からないだろう。


『馬鹿な!? ワシは!? ワシがここで!? 息子の仇一つ取れずに死ぬと言うのか!? ワシは天王寺 ゴウトク!! 天王寺家の――』


 それが天王寺 ゴウトクの最後の言葉だった。

 機体は大爆発を起こし、周辺に残骸をまき散らす。

 

「終わったわね――」


 サエが呟く。


『ああ、正真正銘の終わりだ』

 

 戦いは終わった。

 

 嬉しさよりも虚しさを感じる。

 とにかく馬鹿で、そして哀れな末路だった。

 

『さて、やる事は残ってるぞ諸君。とにもかくも災害救助活動だ!!』


 谷村 亮太郎が音頭を取ってそう皆に告げる。

 そのこと事態、特に不満はなかったので従う。

 

 そして――  


 

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